ちょっと怖い話し合い(早苗視点)
あれから鈴野さんに連れられて会議室に来たけれど、さっきから彼女の薄く笑みをたたえている表情に私はビクビクと怯えていた。おまけに目も死んでいる(鈴野さんが)。
鈴野さんの顔は綺麗なため、それがさらに恐怖を引き立てているのだ。
彼女に悪気は何もないだろう。むしろいい人だ。
ただ、口調やオーラなどで謙遜されがちなだけで、鈴野さんは普通に、微笑んでいるつもりなんだろうなぁと思ってしまう。
前の私だったらその考えにも気づかずに鈴野さんから逃げてしまっていただろう。
いや、まだ若干怖いけど、そこは置いておいて欲しい。それに、噂で彼女は笑うことが苦手だと聞く。まぁ、噂なので真実かどうかは分からないが、本人を見て改めてその噂が頭に過ったのであった。
現に口角はギリギリ上がっているものの、上がった口元がひくひくしている。無理して上げなくてもいいのに。私の前だから緊張してしまっているのかもしれない。
鈴野さんは問題起こしてばっかりな感じで忘れられがちだけど、今まで学校に通ったこと無いらしいし、私と違って彼女は生粋のお嬢様だ。あぁ、忘れてはいけないことだ。
話がずれてしまった。昨日の事を少し話ましょうかね。話をするまで自殺はするなと言われた昨日、実は私、カッターを使って自殺しようとした。
でも、ふと思ったのだ。死ぬ理由は消えてしまったと。死ぬ理由が消えた=今までのようにビクビクとしなくてもいいのだ。
そう思うと、命が惜しくなってきて、改めて生きていてよかったと心の底から思った。もしも、私があのまま落ちていたら、どうなっていたのだろう。……鈴野さんに止められていなかったら。力は毛ほどもなかったけれど、それは今はいい。
彼女は「生きて」なんて綺麗なことは言わず、黙って私を助けた。
雪野木さんに若干睨まれながらも助けてもらい、理事長やら鈴野さんのお兄さん(かどうかは分からないけど)やら恵利華様の楽しい仲間達やらが事件を解決してくれた。
あのトラウマは消え去った。でも、あと数年もすれば……。こんなこと考えても楽しくないか。
「文月さん、どうしたんですか?」
考えに浸りすぎていた。鈴野さんに心配されてしまった。
「あ、すみません。少し考え事してました……」
「……そうですか。じゃあ、話し合いを始めましょう」
それから私は今まであったことを鈴野さんに話した。鈴野さんの表情は変わらなかったけど、しっかりと話を聞いてくれた。
「そんなことがあったんですね」
そこまで言うと、鈴野さんは私の目を見つめてきた。見つめられるとちょっと怖いな。なんか、人形みたいで。
「これで、話し合いはお仕舞い」
よかった。私は話し合いが終わったからもういいだろうと思い、去ろうとしたのだが、鈴野さんに腕を掴まれた。
「……1つだけ、聞いていいですか?」
「何ですか?」
「私は、文月さんを止めて正解だった……?」
そんなことを聞くのか……。答えは1つに決まっている。
「……大正解ですよ。鈴野さんのお陰で、私は明日も生きられます。……ありがとうございます」
「そうですか……、なら、よかったです」
それは、鈴野さんの優しい微笑みだった。……この人、笑えるんだとか一瞬考えちゃったけど。
やっぱり、鈴野さんはお人好しすぎる。
恵利華様じゃなくて、鈴野さんのような人を聖女と呼ぶのかもしれない。
この人と友達なら、きっと毎日が楽しいだろうな。
「鈴野さん」
「何ですか?」
「私と、友達になりませんか?」
「…………………………」
そして、鈴野さんはフリーズしてしまった。え、なんで?
「ごめんな文月。ちょっとこいつ友達少なすぎて麻痺ってるんだわ。おい、亜莎紀」
「はっ……、あ、ありがとうございます。私で良ければ」
そして私は思った。そう言えば、私も友達いないやと。
……ぼっち仲間だな……。
前回の更新から凄い間が開きました。毎回のことながら、本当に申し訳ありません……。お読み頂きありがとうございました。




