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リベリオ大地に立つ

 ファンタジー世界でワクワクと、言いたいが・・・

 生まれて1年と3日、生まれたての頃 寝すぎて日にちさえ数えられなっかた日もあるが、本当の赤ちゃんでない俺にとって退屈極まるものだ。


 あいさつ回りの次の日、魔法をまた見ることができた。

 だっこ紐に入れられて、昨日もまわったある家に向かった。

 紐から降ろされたその横で、かなり歳をとったその家の老婆に、かあちゃんが手をかざし、またあの青白い光を出していた。

 【治癒(ヒール)】だった。

 なぜに解ったかと言うと、かあちゃんがなにやら口の中で唱えて、最後に少し大きめの声で「ヒール」

と言ったのだ。きっと詠唱し、最後に魔法名を唱えるのだろう。


 もちろん、詠唱の呪文はわからないが、見つからないように後で「ヒール」とやってみたが、・・・何も起こらない。当然か。


 言葉を覚え、早く魔法が使いたいが、どうにもならない。

 やれることが少なすぎるので、体を鍛えよう。


 家に帰ると、また木のベビーベットにほりこまれる。

 つかまり立ち から つたい歩き ここまでは問題ない。次だ。



 結果は、オロフにもらった短剣の鞘に顔から突っ込んだ。


 柵から手を離し、右足を踏み出したが、足の筋力が体重を支えきれない。あわてて右手を柵に伸ばすが、柵をつかんだまま倒れこんだ。腕の筋力も体重を支えきれない。


 やはり、当分老人のリハビリのように つたい歩き しか無理なようだ。


 味のしない離乳食をすすり、体作りのために、泣いて母乳を求める。泣くのは意外と体力を使っている気がするのは、全HPと比較して使用するHPの割合が大きいからか?

 泣くことも全力運動になってしまうこの体が疎ましい。



 大人の言葉に耳を傾けて、言葉を少しでも身につけること。つたい歩き で足の筋力を鍛え、出来ていないが腹筋、背筋、腕立て伏せも欠かさない。外に連れられているときは、自然、人、すべての現象を観察する。そんな毎日を過ごしあれから4ヶ月目のある日。


 ついに、支え無しで歩くことができた。


 天気がいいので、親父(ルイージ)に連れられ、畑の横の木陰に座らされていたときである。突然出来そうだと思えたのである。

 おもむろにバランスを取って立ち上がり、いつもと違い左足から1歩目を踏み出し、倒れそうになる前に右足が前に出て体重を支えきった。反動で頭の位置が後ろに戻されることで、体のバランスがとれて楽に左足が出せた。

 体なのか、脳なのかはわからないが、体の重心感覚、バランスを認知してくれたようである。

 次の右足も出せた。・・・そして倒れることなくそのまま大地に立ち続けた。


「おおおおおおおー」声を張り上げる。

 まさに、リベリオ 大地に立つ。である。


 人は自立二足歩行でサルから人間になったのだ。

 今日、俺は【人間】になった。


 親父が気付いてないので、

「ういーじ、ういーじ」

 本当はもっと正しく発音できるが、1歳4ヶ月らしく舌足らずにしている。

 気付いたようなので、手を振る。


「おお、リベリオ!!」

 親父が駆け寄ってくるので、

 もう一度歩いて見せようとして、3歩でこけた。


 あわてて親父が俺を抱きかかえる。

 高い高い をしてくれる。

 そんなのガキじゃねーし、よろこばねーよ。と思いつつも、全力に喜んでくれるていることへの感謝と、素直に高い高いを喜ぶ幼児のふりをしないといけないことに気付き、きゃきゃと喜んでおいた。


 そのまま、抱きかかえられたまま家に連れて帰られ、かあちゃん(ディアーナ)ばあちゃん(マグダ)にも披露した。


 「なぜ私が一番に見られなかったの」

 と、かあちゃんが怒る。

 知らんがな・・・

 

 あえて聞こえた音のまま表記すると、

 「クレーゴ ノンウィディ マキシメ」

 直訳「なぜ私 見てない 一番に」と、言葉の学習もこういうやりとりの中で頑張っています。



____________________


 収穫の秋だ。

 その前に感じたこととして、夏が涼しい。

 近頃の日本が温帯気候でなく、熱帯か!と思わせることのほうが異常だが、

 ひと夏を過ぎて(さすがに0歳児の時の感覚は抜きにして・・・)感じることは2つある。1つに ここは温帯ではなく冷帯であろう。2つ目は「ちょー 快適!」

 元の世界に戻れても、夏はここを避暑地に選びたい。


 去年は参加できなかったが、今年からは収穫祭に参加できる。

 何もない田舎では一年に一度の大イベントだ。


 狙いはズバリ肉!


 かなり固形食も食べさせてもらっているが、スープの肉はあくまで大人用。

 近くでとれる兎の肉や野鳥の肉は、町へ売れる数少ない現金化商品なので、スープにも一週間に一度入るかどうかだ。

 1歳半の子どもが肉をくれというのは贅沢の極み。

 しかし、現代日本人感覚の俺からすると、「少しは食べさせてくれてもいいんじゃね?」というふうに思うのも止むを得ないだろ。


 歩けるようになったのでかなりの自由が利くし、親父、かあちゃん、ばあちゃん大人3人とも楽しみにしている。うちも兎の肉を1匹分用意しているようだから、祭りのドサクサに紛れて少しくらい何とかできるだろう。楽しみだ。


 

 大人たちは忙しそうである。

 祭りがあるのも、この忙しさに関係する。

 何せ、収穫作業そして、搬入、計量、税金対策。


 親父が収穫した小麦をすべて家に運び込む。かなりの量だ。

 こんなことなら、敷地は無駄に広いので、小屋の一つでも建てればいいのになぜ作らないのだろう?

 まあ、そこいらの常識とか風習はまだつかみきれていないし、そういうことは質問しても怪しまれないように、3歳過ぎてから聞いてみようと思っている。




 どぅえぇ 目を疑うことがおこった。



 知らなかった!

 なんと、親父が魔法を使えたなんて!

 と、いうか呪文(スペル)詠唱無しで、いきなり、


【計量測定(メジャリング)】」

 とつぶやき、かざした手から青白い光を出し、

「718 モディウスぐらいかな」(モディウス:重さの単位)

 てかーーー。


 おぉお、お、 おとうさま 今まで ワタクシ・・・

 申し訳ありませんでしたーーー!

 失礼にも、軽んじるようなところが・・・・


 いっいえ、そっそんなことは けっけしてございません。

 前より尊敬のまなざしで父上を見ておりましたとも。



 これは祭りどころでないぞ!



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