科学の子 2
村に徴税官と行商人がやってきた。
徴税官は生まれた年に家にやってきた男だった。
わかりやすいのは、その格好。緑のベルベットに切れ込みがあり、その隙間が黄色い生地でつながれた装飾を肩から肘にかけてモコモコさせた上着。下は白いバレーダンサーのようなピタピタのタイツというかズボンというか、要はあそこもっこりパンツだ。すごい色彩とセンス。
絵画でみたことあるような姿だが、俺は絶対あんな道化師のような格好は将来したくない。
かわいそうなのは親父で、。家の戸口つまり真ん中にあれほどあった小麦の山が、じぇーきん で半分以上無くなった。
もう、小屋作らなくてもいいんじゃね?
というくらいぽっかり空間があきました。
ルイージの肩が泣いている。涙は流していないが、気持ちはとてもわかるぞ・・・男はつらいよな。家族のために頑張れ!
そんな親父をほっておいて、すでにかあちゃんは村の集落中央広場にいる。ばあちゃんを急かして、広場に連れて行ってもらう。
広場には行商人が来ているのだ。
ここでも科学の子リベリオ君はしっかり実験だ。
【計量測定】をつぶやき、距離が測れるかを試した。
村の中央は小高くなっているので、北と東に延びる道が少し見下ろせるのだ。そこにぽつぽつ置かれている大き目の目印になる石があるその間の距離を調べたのだ。
答えは、《 1540m 》
距離も測れるし、石はマイル・ストーンと確認できた。1マイルが1600mないのも少し驚いた。
【計量測定】は、度量衡 長さ・かさ(量)・重さ全部OKということだ。
何食わぬ顔で、行商の方に戻る。
村の奥さんたちは、2台の馬車から広げられる商品に目を輝かせている。子どもたちも飴や、お菓子に興味深々だ。
そんな中、どうしても欲しい物が!
「SKILL LIBRUM INSTRUCTORIAM」ズバリ「スキル教本」 薄い冊子だ。
いやぁ~ 奥さん!マスト・バイ ですよ。買わなきゃダメでしょ。
かあちゃんの手をひっぱり、
「これ ほしい!」と言ってみた。
「読めるわけないでしょ」と、かあちゃん
「よめるよ・・・」
ほんとに読めるのよローマ字読みだし、最近だいぶ言葉覚えたし、ラテン語だっていうのももう見当付いてるし、字の勉強にもなるよ!
と言いたかったが、そんなこと言う1歳児はいるわけないので、言えない。
「かって、かって、かって」
駄々こね作戦で行く。
「かって、かって、かって」
今までわがまま本当に言ったことないので、かあちゃんが怯む。
もう一押しと思って、
「かって、かって、かって」
返事は無言の・・・アタマに一発だった。
素直に撤退。本当のガキのようになりきれなかった。若い子と違って、こちとら子育て経験者ですから・・・
まぁ、この世界に スキル という概念があることだけでも収穫と思うことにした。
どうも中身がおっさんなので、気を付けているのだが、1歳の子どもを偽装するのは難しい。今日もかあちゃんに1発やられた後は、泣くべきだったと反省。
聞き分け良過ぎるのもダメな気がする。
これは何となくの直感なのだが、「転生者」ということがバレるとかなり危険なのではないかと思うのだ。
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MPは6時間でようやく1回復なので、1日4しか回復しない。
MP(1/3)のときの精神的ダルさには多少慣れたが、MP切れ(0/3)は夜に寝るときしかなれない。そこで、夜寝る前にMP2消費、そのまま死んだように寝れば、朝の8じに(2/3)そこで夜までにタイミングを見計らって、MP1ずつ消費して(1/3)を昼間は切らないように2回魔法を打つ。
1日MP4を消費するのだ・・・
これで、訓練によって劇的に使用可能MPが増えると思ったが、
その後、3ヶ月実はMP保有量変化は起こらなかった。
しかし、その間何もなかったわけでもない。
魔法はイメージが大切だ。何をどのようにするかをしっかり想像し、元の世界では科学の力で なし得ることを、マナの力を借りて実現するのだ。
そこで「見える可」が必要と感じた。
ゲームのモニターや、アメリカ軍の戦闘機にある アビオニクスのように 半透明な画面が目の前にあり、魔法で気付いたことが見えると便利だ。
科学では、高度な電算処理が出来る機械が必要なはずだが、そこを魔法でちょちょいと・・・
「ラノベ」でステータスをいとも簡単に主人公が見ているが、そのように俺には設定されていないのだ。
なら、自分でつくればいい。
名づけて、【可視化画面】
MPを1消費するが、半透明のモニターが目の前に出来、【計量測定】でわかる情報を目で見ることができるようになった。
頭の中で直感的にわかる答えを、目で確かめられるようにしただけだが、情報量が増えるといい感じで機能すると思う。持続時間は2時間ほどだ。
しかし、問題は両方の魔法でMP2も消費してしまう。
1日にMPは4しか使えない今は結構大変だ。
さらにこれを習得する試行錯誤で、【計量測定】も【可視化画面】もつぶやく必要はないことにも気付いた。
人は口に言葉を出した方が意識の集中がしやすい。
実際つぶやくのと、頭で集中して思い浮かべるのと時間的にも大差ない。声の必要性が無いというだけだが、呪文との違いは検証しなければならない。
科学で人類が成し遂げた偉業を知っているというだけで、それをイメージして便利な魔法を作り上げる。現代人なら誰でもできることだが、まさにこれこそ
チート!
ゆっくり1歩ずつ「ラノベ」主人公のような階段を上っている気がする。
その年の12月、俺のMPは4になったのか?
寝る前に意識が飛ばなくなった。
次の日の実験で夜までMPを消費せず、寝る前に何回魔法が打てるかを確認すると、MP4使用で意識が飛んだ。
MP回復のいい方法がないものだろうか?
そんな年の暮れ、村に大事件が発生した。