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そういうこと


大学入学前、家族内で賭け麻雀をした。賭けといってもお金は賭けないのが我が家のルールだ。

そこで盛大に負けた俺はしょうもない上に最悪な罰ゲームをさせられることになった。


「本当にこの格好で行かなきゃダメ?」


鏡には姉によって完璧に化粧された俺の姿が映る。


「当たり前でしょー?」


姉を含め、家族総出で俺の姿を見て大爆笑している。

もうやだ、この家族。


「私がちゃんと教室まで送ってあげるわ」


化粧とか落とせないように。と笑顔で言う姉。

そう、罰ゲームとして大学に女装して行くことになった。


「む、娘が2人も出来て、母さんうれ、嬉しいわぁ」


笑うか喋るかどっちかにしてくれ。

もうこうなったらやり切るしかない。中途半端は周りの笑いを誘うだけだ。


「行って来る!」


そう言って玄関を出ようとして転けた。

ヒールってなんでこんなに歩きにくいの?




「私も授業だからここからは1人で講義受けてね」


姉に教室まで連れて来られ、目立たないように後ろの席に座った。

隣には誰も座れないように荷物を置き、耳にイヤホンをして話し掛けられることを阻止する。


意外と席が埋まっているらしく、荷物を除けてくれないかなぁという視線を何度か感じていたが全て無視した。

もうそろそろ授業も始まるかとイヤホンを外したところで、女の子がキョロキョロと席を探していることに気が付いた。

なんかこう、小動物を感じさせる挙動につい笑いが込み上げる。

気が付いたら「座れば?」と声を掛けて荷物を除けていた。


その日は一日中その女の子と一緒に行動して、「女の子の友達が出来て嬉しい!」と言う彼女の為に必死にボロが出ないように気を付けた。

なんだか彼女の側は居心地がいい。

近付いてきた男子生徒に距離を置いている為、男には慣れていないのだろう。

聞くと今まで女子校育ちだったらしい。

共学で彼氏を作るの!と笑う彼女は可愛い。


帰宅後姉に化粧の仕方を教えてもらい、毎日女装姿で大学に通った。

家族は「春樹が新しい性癖に目覚めた!」とか言って爆笑していたので問題ない。

本当やだわこの家族。

大学ではそれとなく彼女が新しい友達を作るのを阻み、常に側にいるようにした。


2ヶ月にもなると、他の女子はグループが出来上がっていて彼女が今さら入るのは難しいと判断した。

頃合いを見計らって自分が男であることを暴露する。

一つ誤算があるとすれば、それが周りにも聞こえたらしく好奇心で人が集まって来るようになった事か。

それでも彼女、雫を離してなんかやらなかった。


それから卒業までの4年間、彼氏が出来ないように雫を囲い込んだ。

流石に就職後までは監視出来なかったが、雫は男運が悪いらしい。

変な男に引っかかっては泣きついてくる。

結局そのダメ男達のお陰で今雫と付き合えているわけだから感謝しよう。



今は使わなくなった化粧道具や服はダンボールにまとめられている。

こんな話をしたら彼女は怒るのだろうか?

突拍子もない行動をする雫の思考回路はいつも読めない。

バカだなぁと笑ってくれるといいな。

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