春は短し、恋せよ乙女!
半年前(高坂臣と対面後)に話を戻します。
高坂臣にお詫びの品を持っていかなくちゃね♪
送ってもいいんだけど、持参したほうが好印象でしょ?
それにアタシも彼に逢いたいしね☆
あのときの彼・・・すごくいいにおいがした気がしたんだけど・・・思い出す香りはアプリコットちゃんのやっすい香水の臭いなのよ。
もう一度臭いを上書きしなくちゃ。
あ、そうそう。
アプリコットちゃんには、彼女にピッタリの香水をプレゼントしたわ。
彼女のイメージって、フルーティなシャボンの香りなのよね。
彼女、とっても喜んでくれていつでもつけてくれるんだけど・・・。
「だめよぅ、アプリコットちゃん」
「ご、ごめんなさい」
アプリコットちゃんったら、お料理中もシャボンの臭いをプンプンさせてるんだもの。
だから、アタシは注意したわ。
目に入れても痛くないくらい可愛い弟子だけど、こういうところはキッチリしておかなくちゃ。
「まだ若いんだし、体臭なんて無いのと一緒なんだから、とっておきの時につけるくらいでいいのよぅ」
「とっておき?」
「んー。好きな人といるときとか?」
「好きな人はうらら先生です!」
んまー! なんて可愛い事言ってくれちゃうのかしら、この子はっ。
「そうじゃなくて、デートとか」
「・・・・・・・・・・・相手がいません。そして欲しくもありません」
「まあ、まあ、まあ、まあ、まあああーーーーーーー!?」
アタシは叫んだ。
花の時代に何を枯れたこと言っちゃってるのかしらこの子ったら!
アタシがこの子くらいの時は、そりゃもう毎夜毎夜複数のシュガーボーイたちとランチキ(あら、これって死語かしら?)騒ぎを起こしていたわよ!?
「だめよぅ! アプリコットちゃん!」
「はいぃ!?」
「春は短し、恋せよ乙女!」
「先生、今は秋です」
「青春時代を『春』と表現しているのよ! そしてアナタは青春真っ盛り!」
「せいしゅん・・・」
なにその『それって美味しいですか?』みたいな顔!
美味しいわよ! アタシなんか毎夜毎夜暴飲暴食だったもの!
「仕方ないわ・・・」
「?」
「アタシが作るつもりだったけど、高坂臣のお詫びの品・・・アプリコットちゃんが用意なさい。しかも手作り!」
香水吹きかけたのはアプリコットちゃんだから、彼女が用意するのが理に適っているしね。
アタシはパソコンを立ち上げると、高坂臣のブログを開いた。
彼ってけっこうマメなのよね。
それに好きな食べ物は好きなファッションについての書き込みも多いから、品物のチョイスは比較的簡単なはず。
アプリコットちゃんの器用さをもってすれば、既製品に勝る手作りを用意することが可能よ!
「このブログを参考にして、彼へのお詫びの品を三日以内に用意すること! 三日後にお詫びに伺うわよっ」
「はいっ!」
失礼なことをしたと分かっているから、お詫びに行くことには素直ね。
「アタシが見た限りじゃ、高坂臣は顔と声はもちろん、中身も上々よ」
「私の無礼をすぐに許してくれましたものね。そう言うところも含めてうらら先生のつまみ食いには相応しいと存じます」
「ちがーっう!」
食べたい気もするけど、今はアナタのことよ、アプリコットちゃんっ。
「アナタ! 高坂臣とお知り合い以上になりなさい!」
「えっ!?」
「恋人になれとは言わないわっ! でもお友達にはなりなさい! そしてアタシに彼の情報を流すのよ!」
「はうっ!? うらら先生のためなら! お任せください!」
ふふ。こう言えばアプリコットちゃんは積極的に彼に近づくと思ったけど、案の定ね。
そしてアプリコットちゃんが三日間で作ったお詫びの品は・・・。
「絹と綿の混合ストール。色はカーキ。・・・そしてこの織り目は・・・・・かぎ針でも棒針でもないわね?」
「知り合いの機織り職人に教わって織ってきました!」
「いろいろツッコみたいところはあるけれど、素晴らしい出来だわ」
三日で商品として売れそうななストールを織ってくるなんて・・・。
アプリコットちゃんって本当に只者じゃないわね。
「そしてこちらがうらら先生のものです!」
彼女はもう1つのストールを取り出して広げて見せた。
銀とネイビーブルーが美しいシルクのストール。
高坂臣が一色無地なのに、アタシのはストライプなのね・・・。
こういうのは恋人に作るべきなんだけど・・・って恋人に機で織ったストールなんて普通プレゼントしないわね。
「ありがと。大切に使わせてもらうけど・・・今日は辞めとくわ」
「ええっ!? なんでですかっ?」
献上品が試作品に見えるからよ、アプリコットちゃん。
次は高坂登場~。