メル友から始めまショ☆
「先日はアタシの助手の桃野が大変失礼をいたしました」
「ほんっとうに!申し訳ありませんでした!」
「・・・・・・・・いえ」
三日前、先日のイベントで知り合った料理研究家の壱道麗から事務所に電話があり、謝罪訪問のアポがあったと聞いた。
『もう終わったことだし、断ってよ』と事務所に言ったのだが・・・『今をときめく壱道麗と知り合うのは事務所的にもプラスだから!』という理由で今日この場所・・・事務所の応接室で二度目の対面となった。
壱道麗はオネエである。
そう聞いていた。
が、この間はロクに喋っていなかったので、『モデルみたいなレイヤーさん』くらいしか思わなかった。
だが、今日。
見上げるような長身美形の形の良い口からオネエ言葉を聞くと・・・・・・なんというか、圧巻だ。
声優という職業柄、顔を見ればなんとなく声の質が俺には分かる。
壱道麗は低めの声だと思った。が、レイヤーのときは思ったより声色が高かった。
が、今はオネエ言葉のせいかさらに声色を上げている。
声色を使い分けられるなんて、声優でもやっていけそうだなぁ。
ファッションセンスもいい。
俺も結構ファッションにはこだわるけど、素直に「センスがいいな」と思う。
が、ちょっとオネエ寄り。オネエだから別にいいのか?
細身のベージュのパンツなんて、スタイルに自信がないと履けないが、190センチオーバーの身長に見合う長い足には悔しいくらい似合う。
その上から、柄のシャツにベスト。耳には7つのピアス。星と太陽と月がモチーフになってる。
「わざわざ来ていただいて恐縮です」
「いいえぇ。こっちの不手際ですもの、改めての謝罪は当然ですわっ。ねっ!アプリコットちゃん!」
「はいっ!」
これだけの美形だと緊張しそうなもんだけど、この口調にどちらかといえば脱力してくる。
「あのっ。こちらお詫びの品です!」
美しくラッピングされた紙袋を桃色の髪の少女が差し出した。
ピンクの髪って・・・年齢分かりにくいな。この子、いくつくらいなんだ?
「いえそんな・・・」
「受け取ってください!」
「・・・・・・・はい」
そうだよな。
買って来たもんを受け取らなかったら無駄になるもんな。
俺は紙袋を受け取ると『どうぞ、開けてみてくださいなぁ~』という壱道先生の台詞により包みを広げた。
カーキのストール。
「うわ・・・。発色がキレイですね」
広げてみる。
シルクが入っているのがキラキラと照明に反射するソレは、薄くて重宝しそうだ。
どこのメーカーかな? とタグを探すが・・・ない。
「うふふ。それ、アプリコットちゃんの処女作なんですよぉ」
「しょじょさく?」
って初めての作品ってことか?
え? ストールって作れるの?
縁を縫ったとか? ってこれ縫い目無いし!
「・・・・・・・・・・織ったの?」
「はい。不出来で恐縮です」
不出来って・・・。これ、ショップで買ったら1.2万はしそうなんだけど・・・。
(彼は知らないが麗のストールは5万円は下らない出来栄え)
「うちのアプリコットちゃん、料理は勿論だけど、器用なんですの~。
アタシのピアスとリングは全部アプリコットちゃんが彫金してくれたものなんですよぅ~」
「うらら先生は創作意欲を刺激してくれるミューズのような存在ですっ!」
ミューズって・・・女神だぞ?
それはともかく。
「すごいね、アプリコットちゃん」
「あの・・・本名は桃野すももです」
早口言葉の練習みたいな名前だな。
「じゃあ、すももちゃん?」
「ひぃっ! アプリコットでいいです」
なんで悲鳴?
(すももは異性に名前を呼ばれることに慣れていない)
「俺、彫金に興味あるんだよね。今度教えてくれない?」
アプリコットちゃんはチラリと壱道先生を見た。
「・・・・・・・・・・ハイ。ワタシデヨケレバ」
「ありがとう。じゃあ、アドレス交換しようか?」
「ウヒィ」
「アタシも~v」
そして俺は、なぜか泣きそうなアプリコットちゃんと、満面の笑みを浮かべた壱道先生の二人と赤外線受信をした。
まだスタート前の準備運動中。




