アタシとアプリコットちゃん
それじゃあ、アタシとアプリコットちゃんの運命的な出会いを教えてあげようかしら。
アプリコットちゃんの本名は、桃野すももちゃんっていうの。ピンクの髪と瞳の可愛い子でね、都内のホテル内にある、『喫茶モモタロウ』の看板娘だったの。アタシはそこの美味しいコーヒーの常連なのよ。
なじみのマスターに彼女を紹介されて、フルネームを聞いた時、『あらまぁ、ご両親ったら本当にピーチがお好きなのね』って言ったっけ。
だって、苗字に『桃』がついているのに、名前にも『もも』を入れるなんて、相当の思い入れがありそうじゃない?
そしたら、アプリコットちゃん泣いちゃってね。ビックリしたわ。
聴いたら、ご両親を不慮の事故で亡くして間もなかったらしいの。
『ごめんなさいね、思い出させちゃって』
『いいんです。私の名前、『桃狩り』で両親が出会った記念なんです。それを聴いたときのことを思い出したら、なんだか・・・涙が』
『・・・・・マスター? お詫びに少しの間だけアタシにウエイトレスさせてくれない? アプリコットちゃんの可愛いおめめの赤みが引くまででいいわ』
『ウェイトレス? アプリコットちゃん??』
彼女が泣きはらした目をパチパチさせた。
すももだったら「プラム」なんだろうけど、彼女はどちらかというと「アプリコット」。なんだかふんわりした色味といい・・・まあ、ビビっと浮かんだニックネームよ!
『フフン。アタシはそんじょそこらの女共より立ち振る舞いは優雅よ? それに、すもも、だからアプリコットちゃん』
そして、アタシはマスターにアプリコットちゃんのことを聞いた。
アプリコットちゃんは、マスターの姪っこに当たるんですって。
ホテルの喫茶店は朝食もバーも兼ねているからほとんど24時間営業。
彼女はホテルの好意で一室を借りて、働いているらしいわ。
『あらあら。若い女の子がずーっとホテルにカンヅメ?』
『私も気にしているのですよ。・・・でもすももは働きたいといって聞かなくて・・・』
マスターとしてはもう少し学校に通って欲しいらしい。
アタシとしても、一日中ホテルの中にいるより、外で新しいことを覚えていったほうがいいと思うったわ。
でも、こういうことって知り合ったばかりの第三者が諭すことじゃないでしょ?
頼りないけどマスターにがんばってもらうしかないわねぇ~って考えていたら、アプリコットちゃんが軽食を持って奥から出てきたの。
『あの・・・お礼です。甘いものお好きですか?』
『ええ。あま~いスイーツも男の子もダイスキよ☆』
『え、えと』
コメント返しに困ってるみたいね。
うふふ、初心な女の子って可愛いわぁ~。
で、すももちゃんが持ってきた軽食はフルーツサンド。
食べてみてびっくり。
『んまぁ! 生クリームが濃厚で全然水っぽくないわ! アナタやるじゃない」
『そ、そうですかぁ~。自己流なんですけど』
『・・・・・・・アナタ、もしかして料理得意?』
『ええ。それしか取り柄が無いっていうか』
『まさか! アプリコットちゃんは、愛想もいいし、笑顔がとってもキュートだし、頑張り屋さんでもあるわよっ。初対面だけど、このくらいは分かるわ』
『そ、そうでしょうか///』
『んまー! 照れる顔も可愛いわね! ・・・マスター、お会計!』
『今回はサービスさせていただきますよ?』
『いいえっ! このアプリコットちゃんを頂きたいのっ』
そしてアタシは料理研究家であること。
今度初のテレビ番組に出ること。
でも、素人のアシスタントは御免だってこと。
だから、アプリコットちゃんをアシスタントとして雇いたいって言ったの。
『私がテレビに!?』
『あら、テレビに映るのはほとんどがアタシの手と料理よ。アタシ本体も、アナタもメインじゃないわ』
『・・・・・・・・』
『アタシ、アプリコットちゃんとなら良いチームが組めそうな気がするのよね』
『やりますっ!』
こうして、アタシはアプリコットちゃんという強力なアシスタントをゲットしたの。
この子、本当にお買い得だったのよ。
商業高校出身で、簿記は1級。会計ソフトもあっという間に使いこなしちゃうし。
お掃除もお裁縫も得意で、お料理も上手。
顔は平凡系だけど、アタシがメイクアップするとパアっと可愛く変身するの。
『なんだかすぐにお嫁に行っちゃって、アタシのアシスタント辞めそうよねぇ』
『そんなこと、絶対にありません!』
『またまたぁ~。お年頃なんだし、気になるオトコの一人くらいいるデショ?』
『男の人って・・・・・・・・苦手です』
学生時代にチカンやらイヤガラセやらで、オトコに相当嫌な目にあったみたい。
『アタシだってオトコなんだけど~?』
『麗さんはっ・・・・・・・えーっと(汗)』
『ハイハイ、みなまで言わなくていいわよ☆』
二人目のキャラ、桃野すもも@アプリコットちゃんが出ました。
この子の恋愛で、麗が盛り上がる予定です。
今まで書いたこと無い系のキャラで、戸惑っている方もいるようです。
げんたろうも戸惑っています。なぜこんなに動かしやすいんだ!?
※2013.10.24 本文訂正。
すもも=プラムだとご指摘を受けておりまして、つじつまあわせで麗のこじつけ的独文を追加いたしました。