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第21話 青年のお供vs火炎将軍アルバロ

中編の宣言しちゃいましたし、

そろそろ話をたたみにかからないと。

 残る四天王もあと一人か。


 いま現在、アリアは落ち込んでいた。

 先の戦いで暴走気味だったからだ。

 その上、最後はヤンデレっぽい言動をしてしまった。

 彼女は「恋人契約」を打ち切られないかヒヤヒヤしている。


 ガイや伊吹の時もそうなんだけど。

 君ら勝ったんだよ。

 もっと素直に勝利を喜べないの?


 そう考えていると。


「勝てば官軍なんて考えてるのはハルくんだけだよ……」


 と遥にツッコまれた。

 俺、声には出してないのに。


「じゃあ遥、この空気なんとかしてよ」


「もう、しょうがないにゃあ」


 え、承諾(しょうだく)してくれたのはありがたいけど。


「ねえ遥、その恐ろしく不気味な語尾はなに?」


「不気味ッ!? あざと可愛さを狙ったこの語尾が不気味ッ!?」


「ごめんごめん、あざと可愛? かったから許してよ」


 俺は素直に謝ることにした。


「すでに途中で疑問符を挟んだ時点で落第なんですけど」


『大体、恐ろしいって形容詞がもうありえないよ』

 そう言いつつも面倒を見てくれるらしい。


 それから遥はそれぞれに声をかけた。


「アリアさん、立ち直らない限り三食お米以外だよ! ガイ先輩、いつまでも落ち込んでると破門らしいですよ!? 『軟弱な弟子は要らん』って!! 伊吹ちゃん、ドンマイ!!」


「遥さんワタクシだけ適当すぎでしょう!?」


 伊吹だけ遥にツッコみを入れた。

 でも、みんな元気になった。

 無理矢理というか強制的に。

 さすが遥。

 まるでみんなのお母さんだ。


 ふむ……『ふわふわビッチママ』。

 カオスすぎる属性だ。

 俺の中だけでそのワードは封印しておこう。


「ハルくん、またロクでもない事、考えてるんじゃない?」


「いや、遥っていいお母さんになりそうだなと」


「えッ!? 私とハルくんの子どもの、いいお母さん!? もうハルくんったらッ!」


 訂正。

 遥も大概である。


 ◯


 みんなが(強制的に)元気になったことで、

 俺たちは最後の関所に臨んだ。


 場所は例によってコロッセオ型。

 この国、コロッセオ多過ぎだ。


「……来たか。他の四天王、全てを破ったらしいな。おっと、先に言っておくが一対一だからな。多人数でかかってくるんじゃないぞ?」


 とうとう総攻撃に対する先手を打たれてしまった。

 まあ、最初から通るとも思ってないけど。


「アナタで最後ですよね?」


「そうだ。俺は火炎将軍のアルバロ。四天王最強だ」


 ……?


「あの、質問が」


「なんだ?」


「四天王の属性なんですけど……『火』『風』『水』ときたら、次は普通、『土』じゃないんですか?」


 大体、『火』と『火炎』って被ってるし。


「それには深い理由があるのだ……。四天王の属性を決める会議の時に一悶着ひともんちゃくあった。その結果──『土』はダサい。そういう結論になり、今の四天王が誕生した」


 全く深い理由ではなかった。

 全次元の土属性に位置する四天王に土下座して謝るべきである。


「まあいいか。最初の火将軍デニオさんも、別に火魔法を使うわけではなかったし」


「ぬ? 俺は魔族でも異端だから火を使うぞ? もっとも、ハーフではないから派手な放出系魔法ではないが」


 なんだって。

 アルバロさんの武装は業物わざものらしき剣一本のみ。

 最強というからには近接も弱くはないだろう。

 これはさすがに俺が出るか。


「そうですか。では、こちらサイドは俺が──」


「待ったハルくん。ここまで私、活躍してないし。ここは任せて」


「いや、遥が弱いわけじゃなくて相性的に」


 俺が言い終わる前に遥は中央に進んでいた。

 この速度、聖剣の固有技能使ったね。

 これ……また聖剣のバッドステータスの結果かな。

 神様、なんで神威武装にバッドステータスなんて付与したんですか。


 しかし、もう遅いようだ。

 アルバロさんと遥は向かい合っている。

 遥、あとでお仕置きね。


「遥ッ。いちおう、いざという時に助ける準備を──」


「ハルくん、私にも聖剣持ちのプライドがあるし、絶対手出し無用だからね!」


 保険をかけようとしたが先に制されてしまった。

【エンペラーファントム】の時みたく、何か用意しとこうと思ったのだが。

 いざとなったら助けに入るのはモチロンのこと。

 ただ、そうなった場合、間に合うかどうか。


「お前が相手か。か弱そうだが大丈夫か? よし、開始の合図は要らん。先に攻撃してくるといい」


 いつかの雫さんと似たようなセリフだね。


「いいの? それなら遠慮なくいくね。これでも聖剣持ち。舐めちゃダメだよ──!!」


 その言葉とともに遥はアルバロさんに襲いかかった。

 ……先ほどと同じ、このスピード。

 固有技能の【オーバークロック】を使ってるな。

 普段より速いけど、コレ後で反動が来るのに。


「ぬっ!? 速いな!?」


 しかし、アルバロさんはちゃんと遥を追えている。

 決して見失っていない。

 その遥は……同じく他の固有技能を使う気か。

 一気にカタをつける気だな。


 まず【ウィークインペイル】で相手の弱い場所を看破する。

 これは汎用性が高い。

 熟達すれば、魔法すら斬れる。


 そして【ペネトレイター】か。

 先の技能との相性もいい、これも有能だ。

 ある程度の防御を無視した高速の刺突。

 ……あまりに硬すぎる相手には使えないが。

 ああ、それと【見切り】が得意な相手にも通じない。


 ともかく、遥のポテンシャルは一級品なのだが。

 今回は相手が悪い。


 これで終わりだと言わんばかりに超速の突きを繰り出したが。


「……デニオやソニアあたりなら、これでやられていたかもしれんな」


 足下から火を噴き出し、後退して避けつつ言った。

 火を噴出して加速できるのか。


「!?」


 完全にを外された。

 必殺の一撃をかわされて一瞬だけ硬直する遥。

 その隙をアルバロさんが見逃すはずがない。

 再び前方へと炎で加速し、腕から炎を出した。

 その炎は鞭のようにしなり、遥の腕に絡みつく。


「あああああ!?」


「アルバロさん!! 遥の負けだ!! この通り、許してほしい!!」


 俺はアルバロさんに頭を下げた。

 彼が本気なら遥はそのまま焼き殺される。


「いいだろう。俺とて無益な殺生がしたいわけではない」


 ありがたい。

 アルバロさんは遥をすぐに解放してくれた。

 腕の火傷は痛々しかったが、アリアの魔法で何とかなるか。


「アリア、遥にすぐ治癒魔法をかけてあげて。アルバロさん、厚かましいお願いで申し訳ないんですけど、再戦のお願いをしてもいいですか?」


「もちろんかまわん。全滅するまで相手をしてもいい。誰からでも来るといい」


「ありがとうございます。では俺が」


 そう言って、先ほどの開始位置と同じ場所へと向かった。


「…………お前、相当(そうとう)強いな? 先ほどの娘とは比べものにならん」


「それはどうも。そうだ、さっきのお礼をしますよ。遥に先手を譲ってくれたことと、彼女を殺さなかった感謝の証に」


「礼だと?」


「ええ。俺、テイマーなんですけど今回はモンスターは使いません。この剣一本で戦います。今回に限っては武人の誇りに付き合いましょう。舐めてるわけじゃないですよ。ちゃんと勝機があるのと、アナタの武人としての誇りに敬意を払ってのことです。ああ、そういうことで先手は譲りませんからね」


 俺は【不動剣クリカラ】を見せつつ言う。

 本来は卑怯な手を使っても構わないんだけどね。

 今回は特例ってことで。


「ふむ……。それがお前の神威武装か? 確かに強そうな剣だ」


「違います。しかし、俺にとってはそれに等しい相棒です。神威武装じゃないからってコイツを舐めてますと……火炎将軍でも火傷しますよ?」


「ははっ! そいつはいい! しかもハッタリではなく本心だな! だが先ほどと同様、俺は武技以外にも炎を使わせてもらうからな?」


「もちろんです。そして、それは俺も同様です」


「……? お前も何か使えるのか?」


「それは見てのお楽しみで。審判は……こちら側の人間でもいいですか? 不正はしないとお約束します」


「いいだろう。お前なら不正などしないだろう、任せる」


「では──ガイ!! こっちに来て審判。これ見るのも稽古の一環だよ」


 俺に呼ばれたガイは慌てて駆け寄ってきた。


「おお! もちろんだぜ師匠! 勉強させてもらうぜ!! よくよく考えたら師匠と他の野郎との戦いを見るのは初めてかもしれねえ……!!」


 今回、遥がやられたのは自業自得である。

 別に報復はしない。

 しないが……大事な幼馴染みを傷つけられたしね。

 他の人には任せない。


「ガイ、言っておくけど今回は剛剣なんて使わないからね。アルバロさんに失礼だし。それと、戦ってる最中に技名なんて言わないから。質問は後で。答えるとも限らないけどね」


「あ、ああ。師匠って案外スパルタだよな」


 え、俺メチャクチャ優しいよ。

 ガイにはいっぺんすめらぎ式の修行でもやらせようかな?


「すまん師匠。なんかいま寒気がした。スパルタは訂正させてくれ」


「うん」


「もういいか?」


 おっと、アルバロさんを待たせすぎた。

 重ねて申し訳ない。


「すいません、準備はできてますのでいつでも」


「俺もだ」


 そして、二人で審判役のガイの方を見遣みやる。


「それじゃあ──勝負開始だッ!!」


 ガイの開始の合図とともに、俺たちは斬り結ぶ。


 アルバロさんの逆袈裟斬りを俺は剣の側面でいなす。

 彼は、返す刀でそのまま斬り上げようとしてきた。

 だが遅い。遅すぎる。

 その機先を制し俺は軽く、突きを繰り出す。

 が、遥の時と同様、炎による加速で避けられる。


 まるで『お返しだ』と言わんばかりに、

 アルバロさんは炎の加速に乗せて突きを放ってきた。

 俺もそれに合わせて自身の剣先で相手の剣先を突き防ぐ。


 それをキッカケに、双方とも一度距離を取る。


 ……やっぱけっこう強いな、この人。


「お前……俺の突きに対して剣先を当ててくるだと? なんだその絶技は。本当に人間か?」


「師匠……マジでヤベエな……まだ数合もやりあっちゃいねぇのに……」


「褒めてくれるのはありがたいんだけど、こんなのはただの曲芸。大げさだよ。第一、技ですらないし。それよりアルバロさん、小手調べはもういいんじゃない? 本気、出してよ」


「はっ!? 小手調べッ!?」


 え、なんでガイがビックリしてるの。

 しっかりしてよ序列第二位。


 この人らが攻めてきたら

 十二座席ゾディアック負けるんじゃない?


「バレていたか。すまん、侮ったつもりはなかったんだがな。では──全力でいかせてもらう!!」


 言うやいなや、アルバロさんの全身が炎に包まれた。

 よし、本気だね。


 炎対策がなければ熱くてかなわないね。

 俺は【不動剣クリカラ】を垂直に構える。


「じゃ、俺も全力。『(こた)えろ不動剣。顕現(けんげん)しろ──【ガルーダフレイム!】』」


 俺の【不動剣クリカラ】から、炎の鳥が顕現する。


「ぬッ!?」


 あ、アルバロさんビックリしてる。

 さっきの遥ほどじゃないが、じゅうぶんな隙だ。

 今のうちにあの炎の対処をするか。


「さあ、炎を喰らい尽くせ【ガルーダ】」


 こいつの好物は本来ドラゴンだ。

 が、俺の【ガルーダフレイム】は火喰(ひく)い鳥の特性も持っている。

 これは、あくまでも剣の性能だ。

 決してモンスターではない。


 そして【ガルーダ】は避けるヒマも与えずアルバロさんへと肉薄し。

 その身にまとう炎を全て吸い込んだ。


 いきなり炎を消失した今、急に元の感覚への適応はできないだろう。

 これで詰みだ。


 俺は【縮地】で距離を詰め、さらに【脱力だつりょく】と【無拍子】も同時使用するすめらぎの秘剣の一つ、【無影剣むえいけん】でアルバロさんの剣を真っ二つにした。


【脱力】なんて一見すると間抜けな響きに聞こえる。

 しかし、実は完全に【脱力】できる人間は少ない。

 使いこなせば、瞬発的にとんでもない力を生み出す。


 さらに、この技は【気】の概念も必要だ。


【無影剣】。

 表向きには『影すら消えるほどの剣』と説明される。

 だが、これを受け継ぐ者のみ、その説明は変わる。

 それは『影すらつほどの剣』だ。


 そういえば世間一般の【縮地】は超スピードの移動法みたいだが。

 皇流では違う。

 相手の距離感を惑わしたりする側面が強い。

 重心移動を使う面は他と通ずるものがあるが。


 なにはともあれ。


「ガイ、なにしてんの。ジャッジしてよ」


「ハッ!? し、師匠の勝ちだ!! アルバロよ、文句ないよな?」


「……俺の負け以外のナニモノでもないだろう。なんだアレは……」


「ええと、どれのことですか?」


「剣技は秘伝だろうから聞かぬが……あの、炎の鳥だ」


「ああ、そっちですか。この剣の機能ですよ。【ガルーダフレイム】って言うんです」


「あの、晴近様?」


 その時、遥を治癒し終わったらしいアリアが話しかけてきた。

 いつの間に近くに来たんだろう。


「なに?」


「あのぅ……私から【不動剣クリカラ】を渡しておいてなんですが、なんですかアレ……」


「え? 【ガルーダフレイム】だけど……天界の至宝なのにアリアも知らなかったの?」


「といいますか天界の誰も知りませんよあんなの!!!!」


 なぜかアリアにツッコまれたのだった。



 ◯


 今回のリザルト


 テイムモンスター一覧


 ・エンペラースライム


 ・エンペラーゴブリン


 ・エンペラーファントム


 ・エンペラーヘルハウンド


 ・エンペラーフェニックス


 ・エンペラーキマイラ


 ・エンペラーガーゴイル


 ・エンペラーローカスト


 ・エンペラー冬虫夏草とうちゅうかそう


(省略)


 ・遥


 ・アリア


 ・伊吹


 ・がい




【不動剣クリカラ】

 実は元々、亜神が持っていた神器。

 バッドステータスは無し。

 しかも自己修復機能付き。


 一度斬った敵を調伏テイムする、

 ある意味テイマー用のアイテム。


 かつての持ち主はその昔、悪人たちを無理矢理

 善の道へと強制的に改心させた。


【ガルーダフレイム】という

 炎鳥を召喚する隠し機能がある。

剣の性能を引き出しきってるのは

もちろん剣士としての

才能だけど、本人、それは頑なに(略)

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― 新着の感想 ―
[一言] うぅむ。 クリカラの関係者さえ知らない力を引き出すとは……某剣勇伝説のラスボスと同じかそれ以上じゃない(;゜Д゜)
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