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第22話 青年と魔王

「どうせ私なんて役立たずの上に足手まといなんだ……」


 体育座りをしている遥が言った。

 いじけかたが面倒臭い。

 アルバロさんとの戦いが相当に堪えたようだ。


 放置しておいても復活するだろうけど。

 前回、みんなを元気づけてくれたしね。


「わかったよ遥、慰(なぐさ)めてあげるから。何してほしい?」


「じゃあ、頭撫(な)でて。『よしよし』って」


「よしよし、遥は役立たずじゃないから」


「それから『ちゃんと必要だ』って抱きしめて」


 え、それアウトじゃない?

 と思っていると遥が泣きそうになっていた。

 うーん、後でアリアに謝るか。


「ほら、遥の事はちゃんと必要だから」


 抱きしめつつ言われた通りのセリフを言う。


「それから『遥、愛してるよ』ってキスして?」


「よし、いい加減にしようね?」


 どうやらもう回復したようだ。


「ごめんなさい! 嬉しくてつい!!」


 そういえばそうだ。

 この子は意外にも強(したた)かなのだ。

 自らの罰ですらチャンスに変えようとしたんだった。


 果たして女の子が全員そうなのか。

 それとも遥が強すぎなのか。


 俺、こういう方面の不意討ちくらいそうだし気をつけよう。

 別に遥が嫌いってわけじゃないんだけどね。


 ◯


 さて、とうとう魔王城だ。

『余を含め四天王を倒せ』だったね、書状は。

 と言うことは魔王様とも戦うのか。


 ちょうどいいや。

 目的も同時に果たせるし。

 先ほどのアルバロさんとは違いモンスターも解禁しよう。


 大体、モンスター無しの縛りで戦う方が多い俺って。

 テイマーとしての存在意義が問われる所存である。


 魔王城の外観は……天界の城に似てるかな。

 まさか、こんな所でも張り合っていたりして。


 入り口には門番さんがいたが、スンナリ通してくれた。

 ちゃんと四天王を倒した事が功を奏(そう)したらしい。

 これなら正攻法もよいものだね。


 そして謁見の間の扉が開かれた。


 中央の玉座に座しているのは巨漢の美丈夫だった。

 背にある翼は小さい。

 謁見の間の間取りは広々としている。

 しかし、衛兵一人すらいないとは一体。


 その時、魔王様らしき巨漢から言葉が放たれた。


「うぬらが四天王を破った猛者(もさ)か……? そうは見えぬが……」


『うぬ』なんて呼び方はじめて聞いたよ。


「お初にお目にかかります。人族の晴近と申します。左様です、ちゃんと一対一ですよ?」


「一対一は当然であろう……」


 魔王様は呆れていた。


「ところで、魔王様でいらっしゃいますよね? ご尊名をお伺いしても?」


「おお、忘れておった。余の名は【ラファエロ】。今代の魔王である」


 この巨漢というか、雰囲気。

 うーん。


「失礼ですが、オーガ種あたりの血が入っていらっしゃいませんか?」


「なに? なぜ分かった。常人はそのようなこと知らぬハズだが……」


「俺、テイマーですので」


 この後の展開もあるし、敬語も徐々に崩そうかな。


「テイマーだと……? テイマーごときが四天王を破りここへ参ったと? 冗談であろう?」


 ……………………テイマー『ごとき』?


 いやいや、笑顔笑顔。

 こんな事で感情を乱すのは未熟の証だ。



 後ろからボソボソと、


『ヤッベェ……師匠に向かってテイマーをバカにするとは……魔王ってバカなのか……』


『誰がハルくんを抑えるか決めておこっか……』


『ワタクシ絶対嫌ですわ』


『むしろ私は晴近様に加勢しますけど……』


 なんて、仲間の声が聞こえる気がするが気にしない。



「いえ、魔王様。お言葉ですが、テイマーも捨てたものじゃないですよ。現に、俺もこの中の立派な戦力ですよ」


「ふむ……確かに仲間には違いないようではあるが。ああ、アレか。我が戦力の四天王風に言えば『あやつは四天王の中でも最弱。とんだ仲間の面汚(つらよご)しよ!』というやつであるな!! 第一、テイマーなんぞはモンスターさえおらねば雑魚でしかない存在だ」


 ビキリ。


 これ修行かな?

 俺、忍耐の訓練でも受けてるのかな?

 怒っちゃダメ?


『俺、知らねぇ……』


『みんな、ハルくんから離れてよう?』


『言われずともそうします』


『私、魔法で援護する用意してます』


 気づけば仲間が遠ざかっていた。

 あれ、俺たち仲間だよね?



「そこまで仰るなら俺のテイマーとしての力の一部をお見せしますよ。ああ、ちゃんと手加減してあげますから、どうぞ本気でかかってきてくださいね?」


 その言葉に魔王様は激昂した。

 もはやこの時点で魔王様への敬意はなくなった。


「冗談にしてはいささか無礼が過ぎるな? まあ、ここまで参ったのだ。……半殺しくらいで勘弁してやるから、せいぜい泣いて後悔するがよい」


 そういって玉座から立ち上がった。

 そのまま部屋の中央へ歩いてくる。

 なるほど、妙に広いのは戦闘を見越しているからか。


 まだ歩いて来てるけどフライングするか。

 もう開始の合図なんかどうでもいいや。

 さっさと召喚してしまおう。


「……『招集(しょうしゅう)に応じろ。鬼の王──【エンペラーオーガ】』」


 そして、目の前に魔王様と同じ大きさほどの鬼が姿を現した。

 だがその覇気は魔王様とは比べものにならない。

 それとは別に【妖気】というものも身にまとっている。


「んぁ? おぉ、晴近じゃねぇか。久しいな。ワシを呼ぶのはいつぶりだ? で、今回はなんだ? 敵か?」


 俺の【エンペラーオーガ】は喋る事ができる。

 その強さは言うまでもない。

 知性も備えており、力業だけの存在でない事は明確だ。


「うん、久しぶり。今日はちょっと懲らしめて欲しいやつがいてね。現魔王様なんだけど。あんまりにもテイマーの事をバカにするもんだから、思わず招集をかけちゃった。同じ鬼種だし、ちょうど良いかなと」


「あぁ……? 魔王? そこの正面にいる小僧のことか? おめぇ、こんな雑魚に一々(いちいち)ワシを呼ぶなよ……」


 呆れ気味に【エンペラーオーガ】は言った。

 そして、俺の【エンペラーオーガ】にひと睨みされた魔王様は。


「しゅ、しゅ、酒呑(しゅてん)様!!??」


「あぁん? ワシのこと知ってんのかぁ? 小僧」


「そそそ、それはもう! 貴方様はオーガ──鬼種の頂点なれば! 知らぬ存在などモグリかと!!」


「おう。ところでよぉ、さっき晴近からよ、小僧がテイマーをバカにしたような発言をしたって聞いたんだが……。まことかよ?」


「そそそ、それは」


「小僧、勘違いしていそうだから言っておくがよ。晴近とこそ戦ってはねぇが、俺は以前、コイツの祖先にガチの戦いで敗れてんだぞ? そして今現在の【鬼ヶ島】の主はコイツだ。その意味が分かるか? 恐らくだが、晴近もその祖先と同んなじくれぇは強ぇぞ?」


「!!??」


 魔王様、萎縮(いしゅく)しきっているな。

 もういいだろう。

 もう一つの目的を果たそう。


「【エンペラーオーガ】。殺さなくていいから一発殴ってくれない? 本当は個人的な事情だけだったんだけど。テイマーの事バカにされたのも含めて……そうだね、五割くらいの力でいいや」


「あぁ……? 五割か。死なねぇか、ソイツ。まあ本気でやると肉塊になるだろうがよ」


「大丈夫だよ。……たぶん」


「今から発言の撤回は……」


 恐る恐る、魔王様が尋ねてくる。


「ダメ。元々、殴りにくる予定だったし諦めてね」


「んじゃ、行くぞぉ。オラァァァ!!」


 気合い一閃。

 といいつつ半分くらいの力だが。


【エンペラーオーガ】に殴られた魔王様は

 壁際まで派手に吹っ飛んでいった。


「こんなことで呼んでゴメン。今度なにか贈るから、配下にもよろしく伝えておいてよ」


「おう、茨木(いばらき)たちにも言っとくわぁ。じゃあな」


 シンプルなやり取りの後、俺は【エンペラーオーガ】を送還した。


 それと同時に仲間たちも戻ってきた。

 おかえり。


「師匠の祖先ってアレに勝ってんのかよ……ていうか、その祖先と互角なのかよ……」


「ハルくん、テイマーとしては加減してあれだもんね……」


「ワタクシ、覇気に当てられて震えが……」


「晴近様、魔王を殴ったのって私のためですか?」


 アリアのみマイペースだった。

 正解。


 そうこうしていると魔王が起き上がってきた。

 ボロボロではあるが無事のようだ。

 さすがオーガ種。


「……まさか、あのお方を呼ぶテイマーがおるとは。余が愚かであったわ……。そもそも、うぬの祖先とは何者なのだ……」


「吉備津彦(きびつひこ)ってご存知ですか?」


「そやつ、伝説の存在ではないのか!?」


「いえ、その方が俺の祖先です」


「参った。完膚(かんぷ)なきまで余の敗北だ。テイマーをバカにした発言も謝罪しよう」


「それは【エンペラーオーガ】に殴られた分でチャラという事で。それより、魔王様には三つほど用事が」


「な、なんだ?」


「一つ目。三年前の人族の神威武装授与式の襲撃事件。アレに関わってる存在の所在。天界側は根絶やしにしてくれてるみたいですが、魔界側はどうかなと。ああ、もし魔王様が主導でもしていましたら……」


「しておらん、しておらんぞ!! そやつらは粛清済みだ!! ……なぜかは分からんが、ここで答えを間違えたら殺される気がする」


「そうでしたか。為政者(いせいしゃ)としての失策の分もさっきのに入ってますので」


「そ、そうか」


「では次。人間界と天界は和平を結びました。魔界もそれに応じるつもり、ありませんか?」


「うーぬ……それは」


「もしかして、【ハルマゲドン】ですか?」


「!! なぜそれを……」


「界王様からお聞きしましたので。それが解決すれば和平を結べます?」


「結べるな。余がこういう政策をとっておるのも、そのためである。我が魔族に伝わる聖典に出てくる【終末の獣】。その出現がもう間もなくなのだ。そのためには武力を磨くしかなかった……」


「あの、それこそ三種族の力を合わせればよいのでは」


「天魔大戦のこともあろう。とうてい、力を合わせるなど考えられなかったのだ……」


「では今回、試練のような真似事を行ったのは?」


「書状に応じて優秀な戦士が現れた場合、余が引き抜こうと思っておった。よもや、余が負けるとは思っておらんかったが」


「ですが書状には魔王様まで敗れるなら和平に応じるとありましたが。まさか反故(ほご)になさるおつもりですか?」


「いいや、そこは従う。さすがに余もそこまでは腐っておらん」


「では一度、人族の瑞穂国までおいでいただけませんか? 【ハルマゲドン】の事も込みで会談をなさればよろしいかと。ちゃんと話に応じるよう、俺から天界と人間界の両陛下に申し上げておきますよ」


「うぬは一体なんなんだ……。いや、今さらだな。了解した、会談に応じよう」


 こうして人騒がせな魔界騒ぎは幕を降ろした。


「……これ、ハルくん一人で良かったんじゃない?」


 いや遥。

 だから俺、一気に魔王城へ行こうって言ったでしょ。



 ◯


 今回のリザルト


 テイムモンスター一覧


 ・エンペラースライム


 ・エンペラーゴブリン


 ・エンペラーオーガ(開示)


 ・エンペラーファントム


 ・エンペラーヘルハウンド


 ・エンペラーフェニックス


 ・エンペラーキマイラ


 ・エンペラーガーゴイル


 ・エンペラーローカスト


 ・エンペラー冬虫夏草(とうちゅうかそう)


(省略)


 ・遥


 ・アリア


 ・伊吹


 ・凱(がい)



【エンペラーオーガ】

 現在、大江山にはいません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 吉備津彦に酒呑を絡ませるのはなんか違和感 個人的に鬼神温羅の伝説が好きだからかも知れんが。
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