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第22話 林間学校8

こんばんわ。今回もよろしくお願いします。

林間学校も大詰めです!

 湿度の高いまとわりつく様な暑さに目を覚ます。


 起きたばかりの霞んだ視界には見慣れない天井。


 部屋の右上に掛けられた時計を見ると時刻は早朝7時。まだ寝ぼけた頭で状況を整理する。


 俺は昨日、暗闇の森から相原を見つけ出し宿の前まで運んだ。そこで高瀬と北村からの賛辞を受けた。


記憶にあるのはそこまで。恐らく風邪で弱り切った俺は力尽きて倒れてしまっだんだろう。


 その後この部屋に運ばれたって訳か。


空調が完備されていない為、寝苦しくはあったが1日寝たおかげで体調は回復したようだ。


 一度大きく体を伸ばして、左側に寝返りを打つ。


「おおっ!?」


左を向いて思わず声を上げる。俺の左側にいたのは俺の幼馴染であり、学校で1番の美人、相原愛乃だった。


なんで相原が!?どういうことだ?


……え、待てよ?まさか俺が連れ込んだとか?そんな訳ないよな?何もしてないよな?風邪でやられた俺の思考が悪事を働いてあんなことやこんなことしてないよな!?


 そんなことしてたら裏方失格なんてもんじゃない。人間失格だ。


いや、ビビリな俺に限ってそんなことはないだろう。

 

大丈夫。きっと大丈夫。


 責任感の強い相原のことだ。俺が風邪で倒れたのは自分のせいだと責任を感じ看病をしてくれたのだろう。


 寝ずに看病をしている間に睡魔に負け寝てしまったと言ったところか。


 助けたつもりが、結局は迷惑をかけてしまった。もっと上手く立ち回らないとな。


 それにしても、こんな短期間で2度も相原の寝顔を見ることになるとは。


 相原は俺の方を向いて横向きに寝ている。ゆりかごの中で眠る赤子の様な姿はまさに天使。天使様が横に寝てたんなら俺の風邪が1日寝ただけで回復したのにも納得がいく。


 バスの中の同様、相原の頬を指で突っつく。ふわふわでサラサラな肌は触らずにはいられない。病みつきになるなこれ。


 何度か頬を突っついていると相原は目を覚ました。


「ふあぁあ。……あれ、吉見?……吉見!?もう大丈夫なの?熱はない?怪我してない?痛むところはない?」


 最初は寝ぼけていた相原。俺を見て一瞬で目を覚ましたようで、目の前まで詰め寄ってくる。


 あまりの顔の近さに胸の鼓動が早くなる。


「だ、大丈夫だから落ち着いてくれ」

「落ち着いてなんかいられないわよ!」


 突然の相原の大声。思わず少しのけ反ってしまう。


「……ごめん」


「あんたが倒れたとき本当にびっくりしたんだから。私のせいでこんな目に合わせてしまって……。本当にごめんなさい」


「本当に大丈夫だから。相原が無事でよかった」

「ありがと。とりあえず元気になったみたいでよかったわ」


 相原がいなくなった時は相当心配したが、相原にも同じ思いをさせてしまった。あまり無茶をするのはやめよう。まあ相原のためならいつでも自分を犠牲にする覚悟はあるけど。


「何かして欲しいことはある?飲み物とかいらない?」


 いつも俺を罵ってばかりの相原が今日ばかりは俺に優しい。

 この機にちょっとからかってやろう。


「んー。特にして欲しいことはないけど強いて言うならキスとかしてもらいたいな」

「……」


突然の俺の提案に赤面して黙り込む相原。どうだ。恥ずかしいだろう。いつものお返しだ。


「……分かった」



 そうだろうキスなんてしたくないだろ……は!?


 分かった?分かったってどう言う意味だ?え、本当にキスしてくれるってこと!?


 俺と一緒に布団の上に座り込んで顔をリンゴの様に真っ赤にさせている。恐らく俺の顔も真っ赤だろう。


 赤面した人間が二人。リンゴと言うよりはさくらんぼに近い。


 相原は右手の人差し指と中指二本で自分の唇を触っている。え、なに、キスする前って自分の唇の感触とか確かめるの?ってか相原って誰かとキスしたことあるのか!?


「あ、相原、今のは別に冗談というかなんというか」


 焦りと動揺が隠しきれない。必死に両手を前に出し手を振ふような動作でキスしなくても大丈夫だという意思を伝える。


 そもそも恋人でもなんでもない裏方の俺が相原とキスなんて。あり得ないだろ。


「い、いくわよ」


いくってなに!?え、本当にするの!?


相原は目をそらしたまま少しずつ俺の方に前のめりになる。相原の顔が俺の顔に近づく。


 もうどうにでもなれ!そう思ってギュッと目を閉じた。


 俺の唇に触れる若干湿った柔らかい感触。何が起こっているんだ一体。俺は恐る恐る目を開けた。


 俺の唇に触れていたのは相原の唇、ではなく相原の指だった。


「これでいいでしょ!口と口同士のキスだなんて一言も言ってないわ。か、間接キスよ!」

「……あ、ああ」


 相原はそのまま布団から立ち上がる。


「も、もう元気そうだから自分の部屋に戻るわ。あんたはもう少しゆっくりやすみなさい。それじゃあ」


 相原はそそくさと俺のいる部屋を後にした。


 俺の唇に残るのは相原の指が触れた感覚。相原の唇に触れた指が俺の唇に触れたって事だよな。


 考えるだけで興奮してしまう。俺の高校生活初キスは相原の間接キスによって奪われた。


 若干相原の指が湿っていたのは緊張して手汗をかいていたからだろう。決して相原の唾液が俺の唇についたわけではない。


 そう考える自分も気持ち悪いな。ごめん気持ち悪くて。


 緊張していたのが俺だけじゃなくて良かった。


 相原が去ったこの部屋にはしばらくの間、熱気がこもっていた。





ご覧いただきありがとうございました!!

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