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第21話 林間学校7

おはようございます!!

無理せず気楽に書いてます。

 俺は今、相原の手を強く握っている。

 昔、運動会や学校行事で相原と手を繋いだ記憶はあるが、その時は俺と対して差が無い普通の手だった。


 しかし、高校生になった相原の手は恐ろしく華奢なものだった。昔は俺と同じ大きさだったのに、いつのまにか俺の方が大きくなっていた。


 思いっきり握ったら粉々に砕けてしまいそうな手を離さないように強く、且つ繊細に引っ張る。


 相原はギリギリ崖の下に落ちずに済んだ。


 ぐちゃぐちゃになった相原の表情。頬を伝う大粒の雫は雨か涙か分からない。

 こんな状況の中、普段見せるのことのない相原の表情にドキッとした。


「吉見ぃぃぃぃ」


 相原はいつも俺に罵声を浴びせる。そんな俺になんの迷いもなく抱きついてきた。まるで迷子になっていた子供が親を見つけたときのようだ。そこに普段の強気な相原の面影は無い。


 こんな状況ではあるが、相原に抱きつきたいという俺の夢は叶うこととなった。

 まあどちらかといえば俺が抱きついているというよりは相原が俺に抱きついているのだが。

 手を握るのも抱きつくのも、自然と出来るような日が来ないだろうか……。


 しばらく俺に抱きついていた相原が落ち着いたのを見計らって肩を持ち少し遠ざける。


「そろそろ宿に戻るぞ」

「うん……。でもここがどこか分からないのに戻れるの?」

「任せろ。方向感覚だけは自信がある」


 特に自信があるわけでも無いが、相原を不安にさせないため自信満々に話した。


 宿に向かって歩き出した俺たちは、焦ることなく地道に歩みを進めている。相原に合わせて出来るだけ歩くペースを落として歩く。


「大丈夫か?歩けるか?」

「ええ。大丈夫。気にしないで」


 相原は昔から人に心配をかけまいと嘘をつく傾向がある。相原の歩くペースがあまりに遅いことを不自然に感じた俺は振り返って相原の足元を確認した。

 俺の目には片方の靴が脱げている相原の足が映った。


「おい。靴が片方無いじゃないか」

「さっき崖から落ちそうになったときに脱げちゃったみたい」


 何でそれを早く言わないんだよ。と言いたい気持ちを押し殺す。素足で山道を歩いた相原の足は泥まみれだった。相原の靴が片方無い事に気が付かなかった自分を恨む。


「ほら。乗れ」

「だ、大丈夫よ!これくらい」

「いいから」


 気を遣って大丈夫と言う相原に対して、威圧的に言葉を発した。こうでもしないと相原はいつまでたってもいうことを聞いてくれないだろう。


「わかったわ……」


 申し訳なさそうに下を向く相原だが、素直に俺の背中に乗り、肩を掴んでいる。


 乗れ、と偉そうに言ったものの俺は風邪をひいている。大雨が降っているというのに体が熱い。恐らく相当な高熱が出ている。いくら体重の軽い相原とはいえ大雨の中をおんぶして歩くのは相当辛い。


 意識が朦朧としている。いつ倒れてもおかしくない。それでも相原を宿まで送り届けるまでは倒れるわけには行かない。


「なんで私の場所がわかったの?」

「……まあなんと無く歩いてたら携帯のライトが見えたからな」


 口が滑ってもお化け役の先生を追い払っていたからとは言えない。


「ありがと。助けてくれて」

「おう」

「……かっこ……よかったよ」

「なんか言ったか?」

「ううん。なんでもない」


 いよいよ前の景色がぼやけてきた。相原との会話も頭に入ってこない。

 もうダメだと思ったそのとき、宿の明かりがかすかに見えた。


「吉見!宿が見えたわ」


 宿が見えた事で今まで張り詰めていた気持ちが安心から途切れそうになる。トイレを我慢している人がトイレに近づき安心したら個室が空いてなかったときのように。

 俺の背中の上で喜ぶ相原をおんぶしたまま最後の火力を振り絞って宿の前まで歩いた。宿の前には先生達と高瀬、金井に北村もいた。


「あいちゃん!!」


 真っ先に駆け寄って来たのは高瀬。おんぶしていた相原を降ろす。


「本当に心配したんだからね。もしかしたら見つからないんじゃないかってすごく不安だったんだから」

「ごめん。びっくりしてつい……」


 相原と同じく、普段はいつも陽気で悲しい表情を見せない高瀬も涙を流している。相原といい高瀬といい、中々珍しいものを見た。目に焼き付けないと。


「よく見つけたな。俺に勉強を教えてくれたときと言い、鞄泥棒の時と言い本当に凄いよお前は」

「たまたまだよ。運がいいだけだ」


 そう言いながらも、柄にもなく北村とハイタッチをした。


「よしみん。ありがとね。よしみんが見つけてくれなかったら今頃どうなってたか……。すごい!あんたはすごいよ」


 北村と高瀬から激励を受ける。最後に高瀬に、中々やるじゃん!と肩を叩かれた。宿の前まで必死に相原を運び、体力を消耗しきった俺は肩を叩かれた弱い衝撃で膝から地面に崩れ落ちた。


「吉見……?吉見!!」


 そのまま顔面から地面に倒れた。最後に聞こえたのは不安そうに俺の名前を呼ぶ相原の声だった。



今回もありがとうございました!

いつもご覧いただき感謝感謝です。

次回は6月7日に投稿予定です!

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