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捨てられ猫姫の憂鬱  作者:
第三章 隣国から来た男達

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お茶会2

 急に表情の硬くなった男達に、私は驚き慌てた。


「どうしたの。女王が2000以上なら、王配も1000以上は必要かと思ったのだけど。違った?」


 パーシーが答えてくれた。


「いや、あんまり気楽に王配殿下の名を呼ぶから、びっくりしたんだ。普通は、王配殿下と呼ぶのだよ」


 私は初めて会った時以降、ネイトと呼んできたので、それは知らなかった。

 子供の私が公式の場でネイトと会う機会はない。リンスがらみで時々会うけれど、その時は親戚の叔父さん程度の感覚で接している。

 男性を避けているリンスは、パーシー達と会うことがないので、細かい事はパーシーやビリーにあまり話していない。

 だから今まで彼らとの会話で、ネイトの話題が上ることもなかったのだ。


「あ、俺も呼び方知らないな。そうなんだ」


 そう言ったのはダンだ。

 

「王配はやっぱり強いんだろうな。1000程度なの? 貴族猫の男の平均はどのくらい?」


 パーシーとビリーが親から聞いた話で良ければ、と言い置きして教えてくれた。


「まずは、貴族猫の成人男性の平均は人間200人と言われている。

 そして、前回の大会の出場条件は300以上だ。参加者は3千人だったそうだよ。それが一次戦で百人に絞られる。二次戦で勝ち残って、最終戦に進むのは十人で、その男たちは1000以上の力はあるだろうね。王配殿下はそのトップだ」


 ダンとソロモンが、最低千人か、とつぶやいている。

 

「ネイト、いえ、王配殿下は、女王と同じくらい強いと思う。初めて会った時に、そう感じたわ」


 またまた、男達がぎょっとした。


「力量を測ったの? 重圧で押しつぶされなかった?」


 私はきょとんとしたが、教師から言われたことを思い出した。

 相手との力量が違いすぎる場合、弱い側に大きな負荷を与えてしまうので、強いものは力を抑えないといけない。

 私は最強なのだから、慎重にして欲しい、と釘を刺されたのだった。そして、力を隠して欲しいとも言われた。

 その方法も教わっているので、いつも平均的な貴族猫レベルに見せかけている。


 だから相手の力量を測るのは、ダンが最後だったと思う。あの時ダンは平然としていたので、多分彼はものすごく強い。

 今日だって、ソロモンの力を測ったりはしない。彼は私より弱いから。


「子供だったので、手加減してくれたと思うわ。そう言えば、態度が不敬だって、王配殿下にたしなめられたわね」


 私が元王女なのを知っている、お父様と茶黒コンビは普通に聞いているが、ソロモンは驚いていた。私の気安げな様子が納得できないようだ。


「僕は隣国で生まれ育ったから、女王たちは手の届かない雲の上の人だと思っていたんだ。僕の周囲も同じ感じだよ。ミーア嬢は凄くフランクに、知人かの様に話すね」


 私にとったら、普通の知り合いのおじさんの一人だ。私の父親だし。リンスの父親だし。リンスとの付き合いの調整役でもある。


「ちょっとした縁で、たまに会う事があるので、知人ではあるのよね」


 お父様とバーバラも、リンスとの交流を介して会う機会があるので、伯爵家の知人とも言える。人間には貴族猫の強さは測れないが、圧は感じ取れる。

 だが、お父様達は、私と暮らしているせいで、貴族猫の圧に慣れている。そのため、ネイトに会っても、全然普通に接する事が出来るのだった。

 ネイトは普段、私と同じように強さを隠しているが、それをしなくても付き合える、珍しい相手なのだった。そのせいでか、自然と仲良くなっている。


 お父様が、その辺をぼかして説明した。


「人間社会のレジーナ侯爵家と、付き合いがあるのだよ。だから我が家は家族ぐるみでの付き合いをしている。もちろんネイト卿とも親しくさせていただいている」


 ソロモンの目つきが変わった。


「じゃあ、王女にも会ったことがありますか? どんな女性ですか」


「王女とは面識がないな。公式の場には大人しか出ないからね。人間世界へのお披露目は16歳になってからだそうだね。私も楽しみにしている」


 さすが、お父様も貴族だ。言いたくないところを隠してうまく話す。

 がっかりしたようなソロモンを押しのけて、ダンが次の質問を出してきた。


「ミーア嬢はなぜ、この家の娘になったのですか。それに、伯爵家は純粋に人間の家門なのに、なぜ貴族猫の世界に交じっているのですか」


「ミーアは養女だよ。そして我が家の長女になった」


 お父様が自慢げに言った。


「養女の話を聞いた時、私はプロポーズかしらって思って、そう聞いたのよ。お父様とおじいさんは真っ赤になって笑いを堪えていたわね。懐かしい」


 私の経歴に関しては、これから大人になって貴族猫の社会で生きていくために、用意した話がある。

 外国からこの国に引っ越す途中で、両親が亡くなり、独りぼっちになった私を、おじいさんが保護して育てたというものだ。その時には7歳で、既に貴族猫になっていた。あとは、事実そのまま。


 私はその話を三人にして、この家では貴族猫の事を知っているのは数人だけだから、そう思って行動してねと言っておいた。


「お父様は貴族猫の社会に受け入れられているの。信用されています。ね、お父様」


「ああ、そうだね。貴族猫は気持ちの良い人が多いね」


「私達も大会の見物に行きたいわ。ミーアから宰相に頼んでもらっているのよ。まだ返事は帰ってこないの?」


 バーバラが、また大会の事を蒸し返し始めた。

 

「もうちょっと待ってね。宰相とネイトが相談しているから。宰相一人じゃ決められないって、ネイトに泣きついたのよ」


 またもやソロモンがびくっとし、ダンは頷いていた。


「やっぱり大会前に王女に会う術はないのか。王女に会うには、大会で勝って王配になるしかないのかな」


 ソロモンが、どうしても王女に会いたいようなので、私はごく当たり前の事を言ってみた。


「大会の後なら、会えると思うけど」


 私の言葉に、それじゃあ駄目なんだ、と言ったきり項垂れて、ソロモンは沈み込んだ様子になった。

 変な雰囲気になった場を和ませようと、私はダンに話を振った。


「四年前に留学に行ったのは、元々決まっていたの? 隣国で何を学んできたの」

 

 なぜかダンが口ごもった。


「急に勉強したくなったんだ。この国でより、他国で打ち込んだ方がいい気がしたので留学を決めた。それまで勉強は全くしなかったし、一からになるからね。一般常識から全てだよ」

 

 なんだか自慢するように話すのが、かわいらしく思えて私は笑ってしまった。それに追加するように留学中の様子をニコラが話してくれた。


「初めは何にもわからない様子で、僕らが勉強に付き合っていたんだ。でもすごい集中力で、すぐに追いついて、いつの間にか追い抜かれてしまった。体術と剣の修行もぐんぐん強くなっていった。ダンの気合は本物だ。今回の大会に出場するための修行と勉強だよね、ダン」


「大会に出場するつもりなの? ダン」


 私が驚いて問いかけると、ダンが私目を真直ぐに見つめた。


「ああ、そのつもりだ」


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