表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ猫姫の憂鬱  作者:
第二章 ミーアの困った姉妹たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/57

女の子の遊びにはまった

「いらっしゃいませ。王女殿下、ミーア嬢。この度は、お二人をお迎え出来て、まことに光栄で御座います」


 腰を屈めて挨拶するオーソン伯爵家のレティ夫人に、私は面食らった。こういう堅苦しい挨拶を受けるのは初めてだった。

 私自身が子供なのもあり、挨拶はいつももっと軽い感じだった。今回は王女に対する挨拶なので、かなり格式ばっている。

 今回、王女も一緒にとお願いしたのは間違いだっただろうか。


 リンスはごく自然に挨拶を返している。さすが王女様だわ。慣れている。


 今回も侍女二人と、護衛八人を伴ってきている。お出かけに護衛は二人のパターンで定着したが、今日は屋敷の内外に分かれて警護するので、人数を増やしている。屋敷の外の見張り四名、室内に同行するのが四名だ。


 ミーアとリンスは、屋敷内の一室に案内された。サンルーム付きで、庭が見渡せる素敵な部屋だった。護衛は廊下のドア前に二名と庭に二名に分かれた。


 広いサンルームは暖かく、明るくてキラキラとしている。

 夫人は二人に庭の方を眺められる椅子を勧めた。

 三人でゆっくりとお茶を飲み、一息ついた所で私は尋ねてみた。


「女の子の遊びって、どんな事をするのですか」


 ティーカップをソーサーに置いて、夫人が口元をきれいなハンカチで押さえた。


「例えば、人形遊びはどうでしょうか」


 私は人形を持っていないので、首を傾げた。

 その様子を見て、リンスが思わずというように言った。


「まさか人形を持っていないの?」


 私は驚きながら頷いた。持っていないけど、それがどうかした?

 夫人が侍女を呼び、人形を持ってくるよう言い付けた。

 侍女が部屋を出て行き、すぐに数人で人形を一体ずつ抱えて戻って来た。


「こういうお人形が今流行っているのを、ミーア嬢はご存知?」


 お人形はものすごく綺麗で可愛かった。それぞれお顔の雰囲気が違う。

 そして洋服は、ちょうど先日、ブティックで見たばかりの物とよく似た、流行のドレスと帽子を身に着けていた。

 靴も靴下も同じく。そして下着も人間のものを、そのまま小さくしたものだった。おまけに小さなバッグまで持っている。他の人形はというと、毛皮のマフに手を入れ、おそろいのふわふわの帽子を被っている。


 目を丸くして見つめていたら、リンスが近寄ってきた。


「お人形を持っていない子がいるなんて思わなかったわ。どうしてミーアは持っていないの?」


 伯爵夫人も同じ疑問を持っている様子だ。

 なぜと言われても、考えた事もないとしか言いようがない。何故か怒られそうな雰囲気だが、一応言ってみた。


「おじいさんの家にも、伯爵家にも人形はなかったわよ」


「おかしいわ」


 えー、そうかなあ。


「バーバラも持っていないし、人形の話が出たことも無いわ。ビリーもパーシーも、そんな話はしないわよ」


 ビリーったら、と夫人が小さく言ったのを聞き、しまったと思ったが、出た言葉は戻せない。


「この人形、生きているみたい。すごくきれいな子ね」


 一体の人形を抱いてしげしげと見つめていたら、そっちに話が移っていった。


「この子はジュモー、こっちがゴーチェで、こっちがブリュよ。ミーア嬢はどれがお好き?」


 私が悩んでいると、リンスがブリュを抱き寄せて、私はこの子と言った。

 小さい鼻がツンとした、猫のような雰囲気の美少女は、リンスに雰囲気が似ている。


 私は、一番幼い印象のゴーチェを選んだ。気が強そうな下膨れ顔が可愛い。抱っこしたら手放すのが嫌になってしまった。


 伯爵夫人が、着せ替えっこしましょうと言って、大きなトランクを開けると、その中にはドレスがずらりと掛かっていて、下の方には靴が並んでいる。もう一つのトランクにはカツラと帽子とバッグが勢揃いしていた。


 私の選んだゴーチェは、焦げ茶のショートヘアだったが、柔らかい金色のウイッグを被せたら別人に変身した。顔も違って見えるようになった。違う子だ。全然違う。


 夢中でドレスを選び、パニエを付けてスカートが膨らむタイプのドレスを着せた。

 ふわあ、なんて可愛いの。


 リンスのブリュは細身のスーツに着がえていた。かっこいい。こっちもすごく素敵。夫人はジュモーに魔法使いの衣装を着せていた。演劇の役者が着るようなドレスだった。


「これが女の子の遊びなのね。こんなの初めて。帰ったら、お父様にお人形を買って欲しいってお願いします」


 ブリュに手袋を嵌めながら、リンスがブツブツと文句を言った。


「この遊びを知らないなんて、ミーアったら、信じられない」


 夫人は、気に入った人形の名前をカードに書いてくれた。ゴーチェだ。手作りのため、ゴーチェでも顔は一つ一つ違うので、絶対に自分で顔を見て選ぶこと。一緒に着替えをもう一組選んだ方がいい、とアドバイスが続いた。


「買ったら持っていらっしゃいな。記念に似合うドレスをプレゼントするわよ」


 リンスも1枚プレゼントすると言ってくれた。

 そして、自分のドレスとお揃いで、人形のドレスも作ってもらうと楽しいのよ、と更に楽しそうな事を教えてくれた。


「ミーア嬢の周囲は男の人ばかりだし、男性はそういうことに気が付かないものね」


「仕方がないわ。私が色々教えてあげる」


 世間知らずのリンスを、ずっと私がエスコートしていたが、この件に関しては自分が教えられるからか、すごくふんぞり返っている。

 そんなリンスも可愛らしい。夫人ともすっかり打ち解けて、手袋はレースのロングがいいとか、サテンにリボンがいいとか議論を交わしている。


 あっという間に時間が経ち、王宮の侍女たちに何回も促されてから、ようやくおいとました。

 絶対また来るから、と次回の約束をし、それまでに私のお人形を探すことに決まった。お人形を選びに工房へ行く時に、リンスも一緒に行くと言うので、またまた宰相に直談判することになってしまった。

 次回は、自分の人形を持ち寄って遊ぶのだ。ワクワクする。



 次の日、また嘆願に現れた私を前にして、宰相は黙り込んだ。


「ミーア嬢の嘆願を受け付ける係を置くことにしましょう。私では判断が難しい事が多いです。女王に相談します」


 そう聞いて、ミーアはビリーを推薦したが、宰相が却下した。

 お気楽なビリーでは全て通してしまいそうな気がすると言う。私はそこを狙ったのにな。

 それで人選を女王にお願いすることにした。


 数日後に、私が宰相を訪ねて行くと、宰相はにこにこして迎え入れてくれた。


 そして、人形の工房を訪ねる許可と共に、ミーア係は王配のネイトが引き受けることに決まったと、教えてくれた。これまた、めったにないことで、前代未聞だと宰相は言う。


「私、実はものすごく驚きましたが、ものすごくホッとしたのです。王配ならその場で全て決定できますからね。即決ですよ。そして私自身は考え込んだり、価値観をひっくり返されたりしないで済みます」


 こうして私は、リンスに絡む色々なことを、ネイトに相談することになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ