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捨てられ猫姫の憂鬱  作者:
第二章 ミーアの困った姉妹たち

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次のお出かけ

 リンスはこれ以上ないくらいにかわいかった。


 イチゴパフェを前に、頬を赤くして目をウルウルさせ、大事そうに上から順番にイチゴ、次は生クリーム、次はバニラアイス、イチゴのアイスと言いながら口に運んでいる。

 

 侍女たちも嬉しそうだった。不思議ね、と言い合いながらチョコレートパフェを食べている。


「王宮のデザートは、これを皿に並べて出しています。アイスも、フルーツも、チョコレートも同じことなのに、こうしてフルート型のトールグラスに盛ってあると、何でこんなに浮き浮きするんでしょう」


 私は、張り切って答えた。


「お皿に並べるより、たくさん入るからよ。それに、こんなに近くで話をしながら一緒に食べることはないでしょう」


 貴族は大きい長テーブルで、ゆったりと間を取って座り、給仕してもらいながら食事をする。こんな風に、すぐ近くに座って食事をすることは少ない。

 少し頭を寄せ合い、くすくす笑いながらパフェを食べるのは、全然別の楽しさがある。そして、食べながら外を歩く人を眺める。


 ミーアが、リンスに聞いた。


「あの女の人、きれいな帽子ね。確か今の流行りの形よ。知っている?」


「いいえ、私は外に出ないから、流行りはわからないわ」


 私は力強く言った。


「よし、次はブティックに行って、流行りのお洋服を選びっこしましょう。それとも、ビリーの家に女の子の遊びをしに行きましょうか」


「女の子の遊びって何?」


「知らないの。でも誘われているから、一緒に行きましょう」


 慌てて、侍女が止めに入った。勝手にそんなことを言われては大変なことになる。後で、王女にあきらめさせるのは自分たちの役目なのだ。


「ミーア様。人間の家に行くのは駄目です。危険すぎます」


「大丈夫よ。ビリーは貴族猫よ。それで人間の伯爵家の三男で、今は王宮で働いているわ」


 だからっていいわけでもないのだが、とりあえず貴族猫だと聞いて、侍女たちはほっとしてしまった。


「じゃ、まずはブティックね。次はブティックに行きましょう。また宰相に聞いておくわ」


「うん。わかった。次はブティックね」


「え、今度はブティックですか?」


「そう。ブティックよ。何か問題がある?」


「ある……? はずなんだけど]


 そう言った後に、困ったことに理由が見あたらないわとつぶやいた。

 

「ミーア嬢にかかると、今までの当たり前が、突然馬鹿げたものに見えてきてしまって、戸惑います」


 侍女二人は、王女の生活の変化を心配して不安そうだったが、横のテーブルの騎士達は、ブティック、楽しみねと盛り上がっている。


「二人共美少女でいらっしゃるから、目の保養だわ。次回もぜひ私がお供に」


 そう楽しそうに言い、順番の決め方を相談し始めた。



 次の日、さっそく私は宰相の元を訪れた。いつも通りの気楽な訪問方法でだ。


「宰相様、今日は。今いいかしら?」


「ミーア嬢、こんにちは。昨日は何事もなく、パーラーで楽しく過ごせたようですな。よかったです」


「ありがとう。楽しかったわ。それでね、次はブティックに行くことに決まったの。パーラーの数軒横の、私が買い物に行くブティックよ」


 は? と言って宰相が、書類をめくる手を留めた。


「次回はブティックに行くので、その連絡と、確認することがあって来たの。

 王女は自由にドレスを買えるのかしら?」


 ドレス? と言いながら、横にいる秘書に王女の経費に関して見せてくれと言った。秘書が書類棚からフォルダーを探し、宰相に渡した。それを開いて読んで、ふんふんと言っていた。


「王女の衣装費用に関しては、問題はありませんから、何着でも買えますが。なぜブティックなのですか? 今まではお抱えのデザイナーが王宮まで出向いていたはずです」


「他のお店のドレスも見てみたいじゃないの。最新流行も知りたいし。それに王女様に似合うドレスを私が見繕ってあげたいの」


 そう言って、私は宰相の顔をじっと見つめた。

 宰相は、既に負けを悟ってあきらめ顔だ。反対する理由が、これにも見当たらないのだろう。伯爵家の令嬢である自分が使っているブティックだ。対応もしっかりしているので、文句が出るような店ではない。それに、私のドレスはいつも素敵だと言われる。


 宰相を見つめていて、要求が通ったと判断した私は、護衛の数を減らす話を持ち出した。昨日は目立ちすぎたため、16人を別の場所に待機させた話をし、多くて四人までという要求を突き付けた。これは、即通った。

 宰相からは6人と言っていたそうだ。いくら何でも20人では、何事かと思われるだろう。


 そしてもうひとつの要望、ビリーの家に一緒に遊びに行く案に付いて。


「私の連絡係をしてくれていたビリー・オーソンのお母様が、遊びにおいでと言ってくれているの。王女も一緒に遊びに行っては駄目かしら」


「えっ。貴族猫の家にお呼ばれですか」


「そう、女の子の遊びをしに行くの」


 王女をあまり外部の者と接触させない一番の理由は、結婚するまでに異性と恋愛関係になると困るからだ。だから、男性との接触を極力減らしたいのは理解できる。

 逆に言えば、女性との交流は別に問題がないわけだ。


 宰相はじわっと汗をかいている。

 私がじーっと見ていると、宰相はどんどん困り顔になっていった。


「わかったわ。少し考えてください。急いで決めないといけないことではないもの。

 娘がいないビリーのお母様が、女の子だけで女の子の遊びをしたいんですって。私もお母さんがいないから、そういうの知らないし、王女もそうでしょ。だから一緒に遊びたいなと思ったのよ」


 そう聞いて宰相はどこかが痛むようなしかめ面になった。

 ううっと辛そうな声を漏らすのを聞いて、私はおいとますることにした。

 

 じゃあね、と言って私は部屋を出た。

 出際に宰相をちらっと横目で見ると、何かを考えていた。そう、もっと考えてみてね、と私は心の中で語りかけた。



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