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第八節 真実への苦悩 1-1
意味もなく空を見上げる。
そこには、普段と変わらず月が青白く輝いていた。
「……」
言葉が出てこない。
記憶の中に眠っていたあの顔。
そう、アンの顔はあの日確かに見ていたのだ。
王女ルイーズ十四世が、遠い昔に国王に連れられて離宮を訪れたとき。
町中が国王と王女の到着を待ち望み、活気に溢れていた。
まだ幼かったダニエルは、多くの観衆を掻き分けて少しの時間だったがその目にした。
そう、あの青く輝く瞳も、煌めくような金髪も確かに見ていた。