第六十一話 決戦・計略
「……厄介だな」
何度か打ち合ってからそう判断する。攻撃が通っていない訳ではないし、相手の攻撃に苦戦している訳でもない。だが、どうしようもなく手応えがないのだ。
思念だったから……というのも理由の一つではあるだろう、変異こそしたがまだ不安定、というところもあるかもしれない。どちらにせよこのまま倒しきるのは分が悪いな。どうするべきか。
ちらりと視線を下方へ向ける。アランさんが正気状態ならば意見を仰ぐべきなのだが、今意見を仰いだところで困らせるだけだろう。アルマさんが参戦するなら話は別なんだが、仮に来たとしても支部の外に出てからの話なので今この場では机上の空論になる。
「……」
更に変異するのを待つか?危険性が高い。それとも一度倒しきるべきか?恐らく完全に倒しきれはしない。――――アランさんに意識を取り戻してもらうか?……それは最終手段だ。
次々と浮かぶ案を吟味しては消していく。どれも一考の余地はあるがリスクを加味すると今一つ実行に移せない。一番マシな案が変異を待つことの時点で今更なんだが。
「――……皇!」
「?はい」
どうしようかと思考を回しつつ適当に相手をいなしていたら、アレンさんが近付いて来て俺に退避の指示を出す。……アレンさんも同じ結論に達した、という認識で良さそうだな。わざわざ戦闘を切り上げさせた辺り、変異を促すことにしたんだろうか。
「一応聞くが、まだ倒しきるのは厳しいか?」
「そうですね。今ここで俺が倒しても、根本的解決にはならないと思います」
「……やはり、アランが必要ということか……」
「……変異を待つ、でも可能性はありますが」
「変異で齎される変化は戦闘時の難易度だけだよ」
つまり……アランさん自身はここにいるが、”儀式の再会”の為にはアランさんの意識がなければだめなのか。確かに言われてみれば犯人はアランさんを利用したい訳で、ただ肉体があっても意味はないだろう。……アランさんの決死の抵抗を無下にするようでなんだか心苦しいな。控えめに言っても性格が悪い。
「……この場で、あの怪異モドキとアランを同時に相手取るのはかなりの難易度だと思うが」
「そうですね。今ここでアランさんが正気を失って、あまつさえ管理人が起動してしまった場合――――俺は、眼中にないので」
俺だけならば特段問題はない、怪異と同時に戦闘となってもまだどうにかなる。だが、俺を無視して夏音や天使……シリウスさんに襲い掛かって行く可能性が高い以上、アランさんを起こすという選択肢はあってないようなものなのだ。
「ですので――――アレンさんは、決して意識を手放さないでくださいね」
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