第五十七話 雪解けを願う
力のないぼくが出来ること、この場にいるぼくが出来ること。何も分からない、それでも救いたい、という熱意だけで救えるのならば世話はない。分かっていても口を開く。
「アルマさんは重戦闘区域にいます。シリウスさんはそれを知った。なら、次は再会のために外に出ましょう」
「……それは、ちょっと展開が早すぎない?最初に言ったけど俺はここで悪いものを封じてるし、鎖……は、切れちゃってるけど一応俺も封じられてるようなもんだから出られないんだよ。大体君こんなことしてる余裕ないでしょ」
「ないです。けど、今ここでぼくが引いたらシリウスさんはまたひとりぼっちになる。シリウスさんはそれで良いのかもしれないけど、ぼくは寂しい」
わがままでいい、屁理屈でも良い、とにかく言葉を重ねて本人から対処法……難易度はおいておいて、方法を聞き出せ。優しい嘘に騙されるな、現実が厳しくても”最善”のために食らいつけ。
ぼくの意思が固いことに気付いたんだろう、シリウスさんは少しの間言葉を探すように視線を彷徨わせていたが、ゆっくりと動きが止まり、ぼくの手をやわやわと握り返す。
「俺も聞きたいよ。……どうすれば、こいつらは消える?」
シリウスさんも分からないんだ。きっとアルマさんの存在がなければぼくの言葉なんて軽く流されていた、突き付けられた現実と微かな希望がシリウスさん言葉を紡がせている。
「倒したりは……出来ないんですか?」
「だって思念みたいなもんだし。成長させれば実体化はするだろうけど、うっかり強くなりすぎたら誰も倒せなくて詰むし」
「……」
今は倒せない、倒せるようにするには成長させる必要があって、実体化出来るレベルまで強くなると、シリウスさんの手に負えなくなる可能性がある……ってことかな。
成程、問題点は分かった。どうすればいいのかも。一つ問題があるとすれば、本当にタイミングが善くない……っていうことだろうか。
「仮に、なんですけど。今このままシリウスさんが外に出たら、ここにいる存在は成長を再開しますよね?」
「するね」
「その成長って、一日二日で為されるものですか?」
「ううん……周囲の環境による、としか……悪意とか敵意が蔓延してたら一時間もかからず変異するだろうし、逆にそういうのが一切なかったらほぼ一生成長しないかも」
悪意や敵意……か。ヘブンは人がいなかったとはいえ、月野さんと宇月さんの発言からそういったものがあることは分かっている。……流石に楽観視は出来ないな、シリウスさんを連れ出した瞬間変異、という可能性は考慮しないといけない。
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