第五十五話 起源を辿る・後編
「何か燃えてる……」
「わざわざ火事まで再現してるのまめだね。土地の記憶とか利用してるのかな」
「ここに封じられていた存在の記憶、という可能性は?」
「うーん……あるにはあるけど、その場合はもっと平和な記憶になりそうなもんだしなぁ……あれかな、死ぬ瞬間の記憶を繰り返してるならこれで合ってるかも」
「死ぬ瞬間の記憶……」
何が封じられているのか、分かりそうで分からないな。少なくともこの村の平和な時間を知っている……それこそ、この村の住人だったりするんだろうか。シリウスさんは特に感傷を抱く訳でもなく淡々と周囲を眺めながら先へ進んでいく。番を見つけて降りて、と最初に言っていたから多分本当に村に対する感情とかないんだろうな、とも思う。
「んー……あ、ここは回り込もう」
「え?」
何もないところで急に止まったかと思うと、有無を言わせず進路を変える。……特に何かがあるようには見えないんだけどな、この先に行きたくない理由があるのかな。特に反論する必要もないのでそのままついて行く。
空気感はそこまで悪くない。本当にただ記憶を投影しただけで、何の意味もないんだろうなっていうのが良く分かる。炎が爆ぜる音と空洞音のようなもの以外は僕らの足音や声しか聞こえなくて、熱気とかもないから目をつぶればさっきまでの空間と遜色ないように思えた。
「うへぇ。……なんか変に伸びてるなーとは思ったけど、わざわざ中央をあそこにしてるんだ。最悪」
「あまり良くない場所なんですか?」
「うーん……まぁ、正直寂しくなっちゃうから行きたくないなーって思ってた」
寂しくなるから。僕が言葉の意味を問いただす前にシリウスさんはスタスタと歩を進めてしまう。先程よりも歩調が速いのは多分気のせいじゃなくて、出来れば早くここから抜け出したいんだろうな、というのが知れた。
「シリウスさん!この先に……怪異がいるんですか?どうやって境界の操作権を入手するんですか!?」
「状況にもよるけど……なんかいたらそれを倒して権限を奪う。何もいなかったらどこかに操作盤みたいなのがあるから、それを弄る」
「操作盤……」
討伐ならまだしも、操作盤を探すっていうのはちょっと難しいな。本来ないものを探す、と言われてもそもそもこの村に何があったのか分からない。明らかに周囲から浮いている、とかそういうのを願うしかなさそう。
シリウスさんについて行くこと数分、周囲のざわめきが少しずつ大きくなって、開けた場所の中央に見覚えのある赤があるのが見えた。
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