表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面β  作者: 霧咲 ユウ
6/8

会いたい願い。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


「カズ〜、トラちゃ〜ん、おはよう〜‼︎」


「おう。」


「雫ちゃ〜ん、おはよう〜☆」




…通学路で3人揃った。


…また、いつもの日常。




「カズ〜、ちゃんと寝た?」


「ああ。」


「今日は倒れるなよ〜!」


「倒れねーよ。」








…いや…


…今日は何かが違った。








…その何かとは…


…昼休みに学校の中で見かけた些細な事から…。








「…和馬…隠れろ‼︎」


「…?」


トラの声で咄嗟に隠れた。




…あれは…………社。




「…何も隠れなくても…。」


「いや、見つかったら面倒だし。」


…まあ…そうだな。




…ん?




…そっと様子を見てみると、何だか具合が悪そうだった。




…廊下を壁伝いにゆっくり歩く。




…階段に差し掛かった時、彼女は足を踏み外し…




「危ないっ‼︎」


…飛び出した俺は彼女を受け止めた。


…間に合った。




「和馬ァっ‼︎」


「えっ……⁈」


…トラの叫び声が聞こえた時、俺の身体は宙に浮いていた。
















…こういう時って、一瞬なのに長く感じる…
















「…和馬‼︎…大丈夫か⁈」


トラが階段を駆け下り、覗き込む。


「…………っってぇっ……‼︎」


…背中を強打したが、幸いにも大した怪我は無い。




…社は…


「……ん…っ……」


…無事だ…良かった。




…いや、俺の腕の中で気が付いたこの展開は…………


「…んっ…………え゛っ…………⁈」




……やな予感……




「…へっ……変態‼︎」


「あうっ‼︎…」


…思いっきり殴られ…彼女は逃走。








…俺はすぐには起き上がれず、トラに連れられて今日も保健室に。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「あ゛……っ……もっと優しく貼ってくれ…………」


…トラの雑な貼り方に思わず声が出る。


「…わりぃ…しかし、和馬の恩を仇で返すとは…けしからん奴だ‼︎」


あ、軽く謝って話題逸らした。


「…一瞬、気絶してたみたいだし……混乱してたんでしょ。」


…俺、相当嫌われてるみたいだし。


「…にしても殴るなんてなぁ……あ、ちょと便所。」


「……えっ?…ちょっと待っ……」




…せめて全部貼ってから行ってくれよ!




「……いっっ…………ダメだ…。」


…自分で貼ろうと起き上がって身体を捻ったら、痛いし貼れないので止めた。


…トラが戻って来るまで大人しく待つか。




…あ、足音。


…戻って来たか?


「トラ、左側も頼む。」


「…………」




…返事が無かったが、そこに湿布が優しく貼られた。


「サンキュ……って社‼︎……さん?」


…振り返ると彼女はそこにいた。




…かなり驚いた。


…そりゃ意外だろ!




「さっきは…ごめんなさい。」


…誤解が解けたのか、彼女はわざわざ謝りに来たみたいだった。


「…そっちはもう大丈夫なの?」


「…はい…。」


…下を向いて気まずそう。


…あ、この格好の所為か?




「そこの服取って。」


「…あ、はい。」


「ありがと。」


…ゆっくり起き上がって、受け取った服を羽織った。




「……私は……階段で意識を失ったんですね……。」


…その問いに俺は頷いた。


「…その怪我…………本当にごめんなさい。」


…深々と頭を下げる。


「もういいって…」




…小さな声が震えてる…。




…昨日までとは、まるで別人の様に元気が無い。




……何か…弱ってる様な…




「……社……?」


「……………………」




…下を向いたまま、彼女は床に倒れた。




「おい…しっかりしろ‼︎」




上半身を起こし、声をかける。




「……ごめん…なさ…………スー…………」




…寝てる…?




「はぁ…」


…安心すると溜め息が出た。








…俺は彼女をベッドに運んだ。


…剣道の主将とは思えない位、華奢な身体だった。




…ずれた眼鏡を外し、頭上の棚に置いた。




…思わず見とれた…




…白い肌…


…長いまつ毛…


…サラサラの髪…




…こんなに人の顔を見る事なんて無かったなぁ…




「…………サイボーグなんかじゃないよ。」




…以前、トラが言ってた事を思い出した。


…真面目で無表情で礼儀正しくて融通が利かない彼女は、いつしかそう呼ばれていた。




…でもさ…




…泣いてる…




…悲しい夢でも見てるのかな。




…頬を伝う涙に触れた。








「……………………⁉︎」








…頭の中に物凄い量の感情が流れ込んで来た。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「…会いたいよ… …狂也…」








…この感情は…


…突然いなくなってしまった大切な人に会いたくて堪らない気持ち…。


…この人…


…前に何処かで…
















「…母さん…………会いたいよ。」








…これは…俺?


…そうだ。


…かなり最近の俺の心だ。


…鏡の前で母さんの事を想った。








…あの時…


…他にも何かあった様な…
















「……お姉…ちゃん…………?」








…また誰かの心…


……目の前の動かなくなった少女に恐る恐る触れる。








…首から…


…胸から…


…腹から…


……流れる……








…頭の中が絶望で真っ白になって…








…恐怖と悲しみが全身を包む…。








…動かなくなった少女の目は開いたまま…








…即死…








…ところでこの顔…








…誰かに似てる…
















「……………………?」


…少し寝てたのか?




「…………スー…………」


…彼女はまだ寝てる。




「…あ…」


…いつの間にか手が…




…俺に触れられたら嫌なんだろうな。




…起きる前にそっと離す。




「……ぉ…ねえちゃ…………」




…何でだろう…




…手を戻した。




…もう片方の手も添える。








…あの夢は…








「……折原さん……?」


「…………?」




…彼女はぼんやりと、こちらを見ていた。




「……あっ‼︎」


…俺は慌てて手を離した。




「…私、また倒れたんですね…。」


…俺は黙って頷いた。








…あの夢の事…


…まだ薄っすらと覚えていた。








「……お姉さん……亡くなったの……?」


「……えっ……⁈」


…俺の言葉で彼女の表情が変わった。




…何で知ってるの?…って顔。




「ごめん…変な事聞いて…」


「…………帰ります。」


…彼女はベッドから出た。


「…ちょっと待っ……」


咄嗟に腕を掴んだ。


「……離して……」


…振り返った彼女の顔を見ると、言う通りにするしかなかった。


「…………ごめん。」




「……おっ?っと……遅くなってゴメ〜ン‼︎生活指導のセンコーに捕まっちまった‼︎」


…社と入れ替わりにトラが戻って来た。


「…………」


…俺はしばらく自分の手を見ていた。


「和馬、大丈夫か?」


「…ああ。」




…あの時…


…振り返った彼女の目には、涙が溜まっていた。




…お姉さんの死は本当なんだ。




「さっき保健室からすっごい美人が出て来たけど……誰?」


「…さぁな。」




…ベッドの方を向くと、眼鏡がそこにあった。








…明日、渡すか。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ