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仮面β  作者: 霧咲 ユウ
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5/8

奇跡の遭遇。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


…社に逃げられた後…


…諦めた俺は、帰路に着く。








…いつもの路地裏を通り、近道。




…猫を引かない様に気を付ける。




…ゆっくり曲がり角を曲がる。




…その時…




「うわっ‼︎」

「あっ‼︎」




ガシャーン‼︎




…自転車が飛び出して来た。




「大丈夫か⁈」


…派手に転んだ自転車の奴に駆け寄る。




「…ってて……すいません…。」


…俺の手を取って立ち上がった。




…大した怪我ではないようで安心した。




「…どうもありがとう。」


…金髪で眼鏡をかけた若い男…。




「…いえ、俺の方こそすいません……………………ん?」




…この顔…………どこかで…………




「…………Jack……⁈」




「……えっ…………⁈」


…男は目をそらした。




「……Jack…ですよね?」




…まさかこんな所で?




「…えーっと……」


「俺、Jackの歌…大好きで……あ…握手して下さい‼︎」


…何か言おうとしてるのを遮って暴走してしまった。




「…うーん……」


…ちょっと困ってた。




「…すいません…迷惑…でしたか?」


「ゴメンね…。」


…そりゃ迷惑だよな。


「色紙もペンも持ち合わせてないんだ。」




「…………えっ………⁇」








…もしかして、めっちゃイイ人⁈








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「さっきは助けてくれてアリガトね!」


「いえ、俺の方こそ…ぶつかってすいません。」




…どういう流れでこうなったのか。


…俺とJackは一緒に食事をしていた。




…席ごとに仕切りがある、密会に最適な居酒屋。




「改めてお礼がしたいんだけど…君の名前は?」


「折原 和馬です。」


「和馬くん、よろしく♪」








…Jackが差し出してくれた手…




…俺より小さな手で、細くて長い指…




…その手を両手で握る。




…彼が後から添えた左手は、ギターの影響なのか指に傷があった。








…日が暮れるまで、色んな話をした。








…Jackが以前、この辺に住んでたって事。


…Jackが俺と同じ高校の卒業生だった事。


…実は10歳年上だった事。








…数時間だったけど…


…彼と過ごした不思議な時間…








…人気ロック歌手【Jack-13】は、とても気さくで優しい人だった。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…指輪…貰っちゃったよ。




…自分の部屋で、さっきの余韻に浸りながら、Jackに貰った指輪を眺めていた。




…Jackらしいゴテゴテの髑髏の指輪。




…彼の人差し指に嵌めていた指輪は、俺の小指にやっと入る大きさだった。




…サインより凄い物を頂いてしまった。




…大事にしよう。




…俺は引き出しを開け、母の写真と一緒に閉まった。








…あ、電話だ。


「はい…雫?」


…外からかけているのか、ザワザワしていていた。




「カズ〜…どうしよう〜‼︎」


…言葉とは裏腹。


…困ってるというより、興奮してる声。




「どしたの?」


「今ね、楽器屋で…見ちゃったの‼︎」




…雫がよく行く楽器屋。


この辺では1軒しかない。




「何を見たと思う?」


「…さぁ?」




…雫は溜めて言った。




「Jack‼︎」


「……え?」




…何かリアクションを。




「え…えーっと……いーなー、すげー羨ましいー。」


「何〜?その微妙な反応は。」




…雫がそう言うのも無理ない。


俺のJack好きを知ってるもう1人は雫だからだ。


しかも、以前ライブチケットが取れなくて落ち込んだ時に、かなりグチを聞いてもらったからな。


その俺がJackネタで喜ばない訳がない。




…と言えど。




…さっきJackとご飯食べて、指輪貰っちゃったからね。




…これよりレアな出来事なんて中々無い。




「何か最近ボ〜っとしてるけど、大丈夫?」


「ちょっと寝不足かな。」


…今朝の事もふまえてか。


「じゃあ今日は早く寝なさいよ〜。」


「オマエはオカンか!」


「ふふっ…おやすみ〜。」


「ああ。」




…そして通話が終わった。








…Jackに会った事…言いそびれた。








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