奇跡の遭遇。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
…社に逃げられた後…
…諦めた俺は、帰路に着く。
…いつもの路地裏を通り、近道。
…猫を引かない様に気を付ける。
…ゆっくり曲がり角を曲がる。
…その時…
「うわっ‼︎」
「あっ‼︎」
ガシャーン‼︎
…自転車が飛び出して来た。
「大丈夫か⁈」
…派手に転んだ自転車の奴に駆け寄る。
「…ってて……すいません…。」
…俺の手を取って立ち上がった。
…大した怪我ではないようで安心した。
「…どうもありがとう。」
…金髪で眼鏡をかけた若い男…。
「…いえ、俺の方こそすいません……………………ん?」
…この顔…………どこかで…………
「…………Jack……⁈」
「……えっ…………⁈」
…男は目をそらした。
「……Jack…ですよね?」
…まさかこんな所で?
「…えーっと……」
「俺、Jackの歌…大好きで……あ…握手して下さい‼︎」
…何か言おうとしてるのを遮って暴走してしまった。
「…うーん……」
…ちょっと困ってた。
「…すいません…迷惑…でしたか?」
「ゴメンね…。」
…そりゃ迷惑だよな。
「色紙もペンも持ち合わせてないんだ。」
「…………えっ………⁇」
…もしかして、めっちゃイイ人⁈
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「さっきは助けてくれてアリガトね!」
「いえ、俺の方こそ…ぶつかってすいません。」
…どういう流れでこうなったのか。
…俺とJackは一緒に食事をしていた。
…席ごとに仕切りがある、密会に最適な居酒屋。
「改めてお礼がしたいんだけど…君の名前は?」
「折原 和馬です。」
「和馬くん、よろしく♪」
…Jackが差し出してくれた手…
…俺より小さな手で、細くて長い指…
…その手を両手で握る。
…彼が後から添えた左手は、ギターの影響なのか指に傷があった。
…日が暮れるまで、色んな話をした。
…Jackが以前、この辺に住んでたって事。
…Jackが俺と同じ高校の卒業生だった事。
…実は10歳年上だった事。
…数時間だったけど…
…彼と過ごした不思議な時間…
…人気ロック歌手【Jack-13】は、とても気さくで優しい人だった。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
…指輪…貰っちゃったよ。
…自分の部屋で、さっきの余韻に浸りながら、Jackに貰った指輪を眺めていた。
…Jackらしいゴテゴテの髑髏の指輪。
…彼の人差し指に嵌めていた指輪は、俺の小指にやっと入る大きさだった。
…サインより凄い物を頂いてしまった。
…大事にしよう。
…俺は引き出しを開け、母の写真と一緒に閉まった。
…あ、電話だ。
「はい…雫?」
…外からかけているのか、ザワザワしていていた。
「カズ〜…どうしよう〜‼︎」
…言葉とは裏腹。
…困ってるというより、興奮してる声。
「どしたの?」
「今ね、楽器屋で…見ちゃったの‼︎」
…雫がよく行く楽器屋。
この辺では1軒しかない。
「何を見たと思う?」
「…さぁ?」
…雫は溜めて言った。
「Jack‼︎」
「……え?」
…何かリアクションを。
「え…えーっと……いーなー、すげー羨ましいー。」
「何〜?その微妙な反応は。」
…雫がそう言うのも無理ない。
俺のJack好きを知ってるもう1人は雫だからだ。
しかも、以前ライブチケットが取れなくて落ち込んだ時に、かなりグチを聞いてもらったからな。
その俺がJackネタで喜ばない訳がない。
…と言えど。
…さっきJackとご飯食べて、指輪貰っちゃったからね。
…これよりレアな出来事なんて中々無い。
「何か最近ボ〜っとしてるけど、大丈夫?」
「ちょっと寝不足かな。」
…今朝の事もふまえてか。
「じゃあ今日は早く寝なさいよ〜。」
「オマエはオカンか!」
「ふふっ…おやすみ〜。」
「ああ。」
…そして通話が終わった。
…Jackに会った事…言いそびれた。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□




