笑顔の神官
「だから!その師匠って何なのよ!!」
ロア師匠が興奮気味に詰め寄ってくる。
「だから、その話は少し待ってくださいって!今は巨人の事を先に終わらせましょうよ!」
「アルニャート!!巨人が縮んでいっているにゃ!」
「なに!どうなってるんだ?師匠は何か知らないんですか?」
「だから!師匠って何よ!」
「アルバートさん、この巨人・・・元は人間かも・・・。」
マリーさんの声に振り向くと、ミミが言ったように巨人が急速に縮んでいた。
ただ・・・。
「全身が水膨れみたいになってるわね・・・。」
「ねぇ!これってどういうことなの?あなた達は何か知ってるの?」
「いや、知りませんよ。こんな・・・気味の悪い・・。」
普通の人間があの大きさになって、急速に縮んだとなれば、元に戻らない部分が殆どだろう。恐らく、このまま放っておけば命はない・・・。
「マリーさん、治癒術を・・・。」
「良いんですの?まともな人間とは限らないのですよ?」
「それでも、話くらいは聞いてみたいじゃないですか。」
「・・・知りませんよ?」
マリーさんは、巨人だった肉塊に手をかざし、神の奇跡を祈りだした。
「偉大なる神の御手により、この者に癒しの奇跡を・・・ヒール!」
「ギャガガガ・・・!」
頭部と思われる部分から、悲鳴のようなものが聞こえたが、傷が治っている様には思えない・・・。
「・・・私では・・・。元に戻すことは・・・。」
「でも、まだ、生きてるんですよね?」
「・・・えぇ、時間の問題かとは思いますが・・・。大神官様のパーフェクトヒールであれば・・・。」
デック大神官であれば、こいつを癒すことが出来るかも知れないという事か・・。
しかし・・・。
「ちょっと!こんなの放っておけば良いじゃない!それより!私の事!!師匠って何よ!!」
「すみません、もうちょっとだけ話を・・・。マリーさん。もう、無理なんですね?」
「申し訳ございません・・・。私の信仰が足りないばかりに・・・。あぁ・・グラディア神様・・。」
どうにもならない奴に、時間をかける事も無いだろう・・・。
「仕方がないですね・・。こいつは・・このまま放って・・・。」
「おやおや?どうされました?何やら闘いの気配を感じてやってまいりましたが・・・おや?」
・・・こんな所に・・・何者だ?
「この方・・・どうかされたのですか?」
「えぇ、少しトラブルがありまして・・・。」
この男・・。笑顔である事は分かる・・・のだが・・・。おかしい。顔がよく分からない・・・。
どこかで見たことあるような・・。どこにでもいる様な・・・。
「あぁ、これは失礼。私、旅の神官でして、各地を巡り、神の布教活動を行っている所なのですよ。」
「旅の・・神官?様?」
「えぇ、それにしてもこの方・・酷い有様ですねぇ。お知り合いですか?」
「いえ、そんな事は・・。」
「ほぅ、なら、この方を癒したとしたら、私の神を信仰してくださいますかねぇ?」
そう言うと、旅の神官は肉塊に近寄り、何やら呪文を唱えだした。
・・・マリーさんとは違い、はっきりと言葉に出さない詠唱で、どんな呪文なのかが皆目見当がつかない。
・・・と、急に肉塊がビクビクと動き出し、赤い光に包まれていく。
「これ・・リザレクション?パーフェクトヒール?」
マリーさんにもわからない術を使い、肉塊の形を変えていく・・・。
「ふぅむ。私ではここまでの様ですねぇ。人型にはなりましたが・・。意識までは無理でしたか。」
「え?あと少しでは?」
「・・・えぇ、ですが、私の魔力と次の用事が・・・。」
「そうですか・・。」
「後は、時間はかかりますが、ヒールとマインドヒールを交互にかけ続ければ、あるいは・・・。」
「分かりましたわ。この後は、私が責任を持って癒しますわ!」
諦めかけていた事が、現実になりつつある事を目の当たりにして、マリーさんはテンションが上がっているようだ。
「では、運よくこの方が復活した時には、あなたの名前と、布教している神様の名前を伝えておきましょう。どの様な神を信仰されていますか?」
「・・・いえ、私の力では完治しなかったのです・・・。ここは身を引きましょう・・。もし、この方が意識を取り戻したとしたら、アシュヴィーが関わったとでもお伝えください。」
「分かりました。必ず!」
笑顔の神官は、そう告げると、山の方へと去っていった・・・。
「あの神官・・・血の匂いが沢山したニャ。」
「認識阻害の魔道具も使ってましたわ。」
「怪しさ大爆発って所か・・・。」
俺たちは、旅の神官が去った方を見つめ、不安を隠すことが出来なかった。
「ねぇ!私の事も話してよ!!」




