山を登る
コサンド王国が前方に見えるのだが・・・。これは渡るのがためらわれるな・・・。
噂によればその昔、現リーフ王国の国王が冒険者の頃に、この亀裂を作ったと言われている。
一体何をしたらこんな亀裂が出来るんだか・・。
コサンド王国と大陸との間は、テイケイ帝国の周辺に流れる川と同じくらいの幅があるだろう。橋を架けるにしても数年がかりの工事になるのだろうな・・・。
亀裂の下方には、海の水が流れ込んできており、流れ込む水流により至る所で渦が発生ている。場所により亀裂の深さは違うのだが、いま俺がいる場所では、城の城壁よりもはるかに深く、落ちればただでは済まない事が容易に想像できる。
「超級魔術でも使ったのか?・・・いや、もともとこのような地形だったのだろう。人の業ではない・・・。」
恐らく、リーフ王が自分の名を売る為に、吟遊詩人でも雇って適当な噂を流させたのだろう。
・・・さて・・・。
俺は更に進み、高い山を目指す。
山ではあるのだが、全体の3割くらいはえぐられており、更に険しい断崖となっている。
親方様の話だと、その泉は山に囲まれた地にあるとの事だったので、ひたすら山を登って探さなければならないのだ。
【奇跡の泉】
利き腕を失った俺は、このままでは職を失う事ばかりか、親方様に捨て石にされてしまう・・・。
奇跡の泉とやらを探し出して、失った腕を取り戻さなければならないのだ。
「最上級の神官であれば、身体の欠損をも直せると聞いたことがあるのだが、ロゼッタクラスではそれもかなわないのだろうな・・・。ちっ、回復魔法も上手く使えない神官が!」
俺は、ロゼッタのマウントを取ってくる話し方が嫌いだ。なるべくあいつと一緒に行動はしたくないものだ。・・・・何を考えているかもわからんしな・・・。
ま、あんな奴を頼らなくても、テイケイ帝国では魔道義手も開発されているらしいので、かりに奇跡の泉が無かったとしても、最悪、そちらを頼る事も可能なのだ・・・。めちゃくちゃ金がかかるらしいが・・・。
日が傾いてきた頃、ようやく山頂にたどり着く。
・・・はずれか・・・。
目の前には、白く雪が積もった平原が広がっている・・・。泉らしいものはどこにも見当たらないな。
どちらにしろ、俺はこのまま前に進むしかない。戻ったとしても反対側には海が広がるのみで、それこそ泉などは無いのだから・・。
「・・・俺も、魔道具・・・盗ってくればよかったな・・・。」
さすがの山道で、馬を引き連れる訳にもいかず、自分の足で歩いている。
体力の消耗はもちろん、道中の食料も調達し続けなければならない為、一日の進行速度が極端に遅くなってしまうのだ。
「そろそろ、晩飯の準備をするか・・・・。」
一応、念のため、赤い悪魔が投げ捨てた白い鳥を持ってきていたので、そいつを焼いて食う。
「・・・旨いじゃないか・・・。」
人それぞれ、味覚の基準は違うのだな。




