カトルフォイルへ
朝、俺はドライアードとウンディーネにお願いして、暫くの間、泉を守ってもらうようにお願いをした。
細木が生える泉が、しっかりとした林の様に変化したのを見てから俺たちは出発する事になった。
「しっかし、精霊術って無茶苦茶だよな。あっという間に立派なオアシスに変化するなんて・・。」
「いえ、多分、数日しか持たないと思いますよ?放って置いたら・・・。俺が、夜の間に、精霊界を通じて魔力を提供しておかないといけないですね。あの泉が安定するまでは、がんばらないと・・。」
「はぁ・・・精霊もしっかりしてるのな。」
「そりゃ、彼らの存在がかかってますからね。魔力の提供無しに働かせたら、存在が消えるか、生物を襲って、狂える精霊になるかのどちらかですからね。」
俺は、ノームに魔力を提供しながら馬車に揺られている。
水路の土に、水が染み込みすぎないように加工しながら、更には水路の縁をすこし盛り上げる様にも加工して行っている。
我ながら、精霊との意思の疎通がうまくなったと思っている。
もうそろそろ中級や上級の精霊との交信を試みても良いかもしれない。
ちなみに、ドライアードやバルキリーは中級に分類されているようだ。
シェイドは相性が良いようだが、上位の精霊を呼び出して、制御が効かなかった場合は魔王コースまっしぐらなので、試そうとも思っていない。
「アルバート、もう少しだ。がんばれ~。」
ヴァールさんが言葉とは裏腹な気の抜けた声で教えてくれる。
「分かりました。こっちは全然大丈夫なので、そのまま行ってください。」
「うーす。」
行きに作った水路は、しっかりと機能している様で、泉からの水が順調に流れている。
次の雨季が来る前までには、ため池を大きくするか、溜まりすぎた水を抜く場所を作っておかなくてはいけないだろう。
「あ!アルニャートにゃ!!」
少し遠くで、ミミの声が聞こえた。
どうやら、水路の水を見に来ていた様だ。
俺は、ノームに礼を言い、精霊界に帰ってもらった。
馬車のカートから降りると、一度背伸びをする。・・・腰が痛い・・・。
「アルバート、ご苦労様。上手く言った様ね。」
「リア様、問題なく水場とつないできました。」
「ん?川と繋ぐのではなく?」
「そうなんです。今回の雨季で発生した水場がありまして・・・。」
「ふぅん。じゃ、美味い事ウンディーネを手なずけたわけだ。」
「狂える精霊にならないようにしただけです。」
「アンナは精霊を助けたことは有るのか?」
「助けるって表現は微妙ね・・・でも、殆どの場合は手遅れ、あたしが出会った自然発生した精霊は、討伐対象ばかりだったわね。」
「・・・あぁ、あの時はやばかったな・・・。狂えるサラマンダー・・・。燃える服、焦げる髪の毛・・・。精霊相手は割に合わない・・。」
リア様とシャイニングフォースの皆さんは、ついさっきまでお茶をしていたらしく、俺とヴァールさんもその輪の中に加わって、水場での話をした。
「それはそうと、ロア師匠は元気にしてますかね。上手い事・・いて!」
ヴァールさんがフォークで脇腹をつついてきた。
っと。深入りしない方が良いって事だったっけ。
「上手い事・・・なに?」
「え、上手い事・・・安全な旅が出来ていると良いな~って。」
「ロア姉様は大丈夫よ。きっと収穫祭前には帰って来るわ。」
・・・リア様が少し寂し気な表情を浮かべている。
ヴァールさんがこっちを睨んでいる・・・。
はい、深入りはしません。




