急いで出国!
「魔晶石40に精霊石40?ふざけてるのかあの宰相は!10でも多いわ!!」
商人のナイロウは宰相のお陰で大きな利益を上げているものの、陰口は無駄に多い。
「おい、お前!鉱業ギルドに行って精霊石を35仕入れてこい!お前は魔術師ギルドに行って魔晶石を30仕入れてくるんだ!急げよ!」
自店の在庫をすべて把握しているのか、確認せずに指示を行う。
「お前は請求書を作成しろ。宰相当てだ。魔晶石は1個、金貨1枚・・・。いや、金貨1枚と銀貨3枚で。精霊石は1個、金貨・・・2枚で、無垢の枝は、・・・銀貨8枚、5本で金貨4枚。ヤギは、サービスだと書いておけ!」
「旦那様、少々高くはないですか?」
「大丈夫だ、ばれやせん!この量の素材を一日で集めるのだ。当然の益であろう。」
そう伝えると、ニヤリと笑って店の奥へ引っ込んでいった。
鉱業ギルドも魔術師ギルドも魔獣の襲撃を免れてはいたが、襲撃の際に貸付した物品のお陰で、笑みが止まらない状態だった。特に魔術師ギルドでは魔獣討伐の報酬も入ってくる予定。さらにはナイロウ商会からの大量買い付けが来ている。
魔獣の襲撃を受けて、様々な機関、様々な人々が多大なダメージを受ける事となったが、上手く襲撃を免れた者たちは私腹を肥やすこととなる。
「・・・ギニン、こっちだ・・。」
辛うじて聞こえるであろう声で俺はギニンを呼び止める。
サンタスと一緒に行動しているのだが、あいつを呼ぶと必ず賑やかになって目立ってしまう。だからギニンに声をかける事にした。
「アニキ!あそこです。」
「んぁ?おお、そこか!」
「うるせぇ。」
俺はサンタスの口元を手のひらで押さえて、手近な壁に押し当てた。うぁ、サンタスの唾がついた。
「いってーな~。手加減しろっての!」
「静かに!今目立つ訳にはいかないんだ。静かにしろ。」
「ちっ!」
今、俺たちは、出立の準備を分担して行い、外壁が全損している場所から1ブロック離れた井戸のそばで合流待ちをしている。
コーギは既に合流しているので、おっさんを待つのみとなっている。
俺たちは、井戸の水を水袋に汲みながら、今後の予定を詰めていく。
「・・・そこで、おっさんの連れてきた野獣を討伐に出る。様に見せかけて森へ入る。」
「で、そのまま行方不明って事ね。」
「ああ、おっさんが手ごろな野獣を連れてきてくれることを願おう。」
全員の水袋がいっぱいになった。次にサンタスが買い出しに行った食料を分配する。
「おい、サンタス。干し肉ばっかじゃねえか!」
「うまいだろ!長持ちするだろ!・・・俺が好きなんだよ!」
「他にもいろいろあったでしょ?カブの実だとか、ニラニラの皮とか・・・。」
「肉を食わねぇと力が出ねぇぞ!俺様を見ろ!!」
「・・・だからうるさいって・・・。」
干し肉を均等に分担しながらその時を待つ。
そろそろ昼時の鐘が鳴るころか・・・。と、門番の動きが慌ただしくなっている。
「来たみたいだ!行くか!」
俺たちはそれぞれの荷物を抱え、壁の瓦礫へと向かう途中で、俺の頭上を影が通り過ぎた。
「お待たせぇ~。獲物を連れてきたよぉ?」
「おっさん、さすがだな!」
「どんな獣を連れてきたのですか?数は?」
「そぅだねぇ。今回はブレードウルフ、数は30位かなぁ?」
「さ・・。30・・・。」
ブレードウルフは中級冒険者の天敵と呼ばれる獣だ。牙が上下に長く突き出ており、敵を牙で刺し殺す戦い方を得意としている。その牙は強力で、武器にも防具にもなる。厄介な野獣に分類される奴らだ。
「どぉりで、門番が騒いでいるわけだ・・・。」
「あまり弱くてもねぇ。君たちを追いかけまわして、殺す前提だからねぇ。」
「殺すなよ?」
「やだなぁ。殺さないよぉ。ふりだよふり!」
その時、門番とブレードウルフが戦いを始めた様だ。
「行くよ!」
コーギの言葉で俺たちは走り出した。




