消された過去
俺は、夢を見ているのだろうか・・・。
様々な人の顔、話し声、景色、色々なものが混ざり合っている。
「・・・・。」
「んぁ?なんだ?起きたか。おい、メグ、もう一度回復魔術をかけてやれ。」
「暖かなる炎よ、傷ついた者に暖かな癒しを・・ヒール。」
暖かな力の流れが俺を包み込んだ。暖かい。
「メグ、今回のこれ、やはり、森の民が絡んでいるのか?」
「おそらく・・でしょうね。」
「だが、彼らだけを責めるわけにはいかんからな・・・。」
「王国の責任も・・というより、王国の影響がありすぎるのよね。」
王国の影響?いったい何が?魔獣が攻めてくる事に影響しているのか?
師匠に質問しようにも声が出ない。
「ねぇ、ザイール。あなたこの後、軍の諜報部に呼ばれているんでしょ?」
「あぁ、おそらく今回も記憶を消される・・・。」
「まったく、懲りないわね。」
「そうだな。あぁそうだ、今回の情報はいつもの様に、俺の部屋の右奥、下から二番目のレンガの裏だ。あとで確認しておいてくれ。」
「わかったわ、あんた、最近魔術抵抗が高くなってきたから、前回より長引くかもね。」
「そうだな、なるべく素直に呪いにかかっておくよ。」
「じゃ、私はこの後姿を隠すわ。」
「わかった、闘いで大けがをした後行方不明になった事にしておくよ。」
「よろしくね。私の事忘れたら、ぶっ飛ばすわよ?」
「大丈夫だ、おまえの・・・・・があるから・・・・・・。」
「・・・・・よね。・・・・。」
よく聞こえない!もっと話を聞かせてくれ!
目が明かない、手が動かない、声が・・・出ない。
「師匠!!!」
声が出ると同時に体の自由が戻ってきた。
ひどい頭痛に加え、全身に大量の汗をかいていた。
「アルバート君、お目覚めね。」
ルーナがこちらの様子をうかがっている。
「アルもひどそうだね・・・。」
ビルットがこめかみの部分を押さえて俯いている。
「二人とも、おとなしくしてね。光の命の根源よ・・かの者を癒せ・・マインドヒール。」
「「はぁ・・・。」」
魔法の効果が出た一瞬の内に頭痛が和らぎ、二人同時にため息をついた。
「で、あなたたちは何を忘れていたの?」
「俺は、軍諜報部員の顔を見てしまったことと、その時に話していた内容・・・。だな。
国王は、魔獣の襲撃があることを知っていた様だった。」
場合によってはその場で殺害されてもおかしくない秘密を聞いてしまったようだ。
「なるほどね・・・。で、あなたは?」
「俺は、昔の襲撃時に師匠たちが話していた内容だな。ビルット似ている内容だ。」
情報の受け渡し方法の事は、今は黙っておこう。
「そうね、あなたたち、解呪の事がばれると危険ね。口外しないで。」
「そうだな。でも、呪いが説かれていたら、見る人が見ればわかるんじゃないか?」
「ルーナさん、何か良い方法はないのかな?」
コーギがさっきより少し落ち着いたようだ。確かに解呪されていることがばれると危険だ。ここはルーナさんの知恵をお借りしよう。
「あるわよ。私が新しく呪いをかけてあげる。」
「はぁ?呪ってどうすんだよ!」
「ははは、違う呪いよ!そうね、頭に集中した方がいいから・・。髪の毛が伸びなくなる呪いにしましょうか?」
「それって・・。は・。」
「・・・・・・・・げる・・・?」
「くくっ!ないない。伸びなくなるだけよ!髪の毛が伸びる生命エネルギーを・・・この指輪に吸い取られる呪いね。」
「吸い取る?」
「危険はないのか?」
「ないわよ。指輪に生命エネルギーをためておけるっていうお得な呪いね。私も爪が伸びなくなる呪いを使ってるわ。便利よ?」
どうやら、微弱なエネルギーを指輪に蓄積し続けるらしい。そしてそのエネルギーは、キーワードを発することで体内に戻すことが出来る、お手軽な回復魔術のような物らしい。
俺とビルット、コーギも同じように髪の毛が伸びなくなる呪いと、対になる指輪を受け取った。




