日が傾き始めれば話も盛り上がる
今回の野外演習は、実践に近いものとして行われているものの、各所で緩さが感じられる。実際の行軍では食後の団欒のような時間は取れるはずもない。
そんなことを考えていると、おっさんがおもむろに語りだした。
「そういえば、今回の野外演習ではねぇ、見張り番を各員で持ち回りだから、決めちゃおうか~。2人一組で、たいまつ一本分の見張りをしてもらうからねぇ~。」
「じゃあ、私はアニキと。」
「あたしは、いつも通りビルットと一緒がやり易いな。」
あっという間にペア分けが行われた。
サンタスとギニン、ビルットとコーギ、俺とリンというペア分けだ。無難ではあるが、リンがどこまで戦えるかで俺の負担が変わってくる。
まぁ、全体を見る視野の広さも一つの強みではあるが・・・。
「ちなみに、自然発生するスライム以外は敵はいないと思うから、安心してねぇ。」
「それは、有難いのですが、なぜです?」
コーギはストレートに疑問をぶつける。
「来る途中で話そうと思ったんだけどねぇ・・。」
おっさんはのんびりと、勇者に関する話を始めた。
遥か遠い国から召還されたこと、2人のチームで動いていること、男性2人、女性2人であること、体を慣らすために近くの森で獣や魔獣を狩り進めていること、それぞれが特殊な技術を有していること。
そして最終的には魔王と呼ばれる存在を倒す使命があるということ。
わざわざ遠い国から他国の政治に首を突っ込むなんて、おせっかいな奴らだ。
しかし、この【しあわせの国】は人が圧倒的に足りていないのも事実。国王も有難く思っていることだろう。
「今回の勇者一行は、いつまでもつのか・・・。」
おっさんは、昔を思い出しているのか、空を見上げながらつぶやいた。
魔王は、魔獣の大攻勢に関わっている様で、それを止めるために勇者が派遣されているようなのだが、いまだに魔王に関する様々な事が判明していない。軍の上層部でも、魔獣の大攻勢は自然現象なのではないか?との意見も出ている状態だ。
ただ、不思議な事に、派遣された勇者が凱旋した記録がなく、何かがある、とは考えられている。
特殊な技術を有し、他を圧倒する勇者が戻らない。それこそが魔王の存在証明を確たるものとしているのだ。
おっさんは、焚火に新たな薪を投げ込みながら話の切り上げを提案してきた。
「さて、そろそろ体を休めようかねぇ、一番手はだれは行くんだい?」
「もちろん!俺様だろ!」
「さすがアニキ!」
「では、二番手は私たちが立とう。先に失礼するよ。」
サンタスとコーギの発言で、あっさりと順番が決まる。
なぁ、話し合いをしようや・・・。
「じゃぁ、明け方はアルバート君とリンクルちゃんだねぇ。闇が深くなるのは夜明け前っていうから、気を付けてねぇ~。」
「了解です!」
リンが元気に返事をする。・・・早めに寝るか。
サンタスに渡した革製の上着は返してほしくないので、一応持ってきた厚手のマントを地面に敷いて体を休めることにした。
泉の畔で焚火が一つ、月が現像的な風景を怪しく照らしている。
サンタスの鼻歌さえなければ、素敵な夢が見られそうだ。
「フンフン!フフン!フフフフンフフン~」
無理そうだ。




