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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
神鯨に、竜たちは挑む
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鉄の三叉槍と竜の弾丸

「何という力、だ……ッ!」


徐々に、確実に、圧縮は進む。


レムザが身を守るべく

展開した触手は球体となる。


ゴリラ・ジョーの攻撃をも

受け止めた強靭さをフルに活かすも

己と二名を守る、それ以上の事は出来ずにいた。


「あー!」


「大丈夫だ……ユミナ。

 守るとも。必ず守って見せよう。

 ハーク君が守ろうとしたのだ。

 それは、見習わねばならないッ!」



* * * * *



「――我が神よ。これなる鉄釘は

 彼の地へと至りし、導きの杖なり。

 杖は我らへ叡知を、祝福を与えし神器。

 貴方の声を受けし、この証にて

 我らに立ちはだかる試練を、苦難の道を

 その身にて、その足にて、越えさせ給え――」


イチモは鉄槍ウェネスを掲げて祈る。


ウェネスは液体のごとくうねり

その先の形を変え、三又となる。


銀の三叉槍。


愚直なまでに飾り気のない

ただ敵を、立ちはだかる者を

穿ち、貫かんとする姿かたちとなる。


イチモはそれを後ろへ引き絞る。


振り抜くーー



圧縮の中心ーーレムザーーへと

まっすぐ空を裂いて、突き進む。



* * * * *



圧縮による痛みとは別。


貫かんとする鋭い痛みがレムザを襲う。


その一瞬に気をとられ、触手は緩む。


その隙間。


ギラリと光る槍先がねじ込まれる。


「ひぅっ!?」


ユミナの眉間をほんの少し前で止まった。


槍はそのまま元の軌道を描いていく。

イチモの手もとへ戻った。



第二投。


イチモの投擲は先ほどの隙間とは

別のポイントを見定める。


レムザは警戒するも

それと同時に圧縮は強まる。


より一層レムザは触手を束ねる。


しかし度重なる圧縮にも耐えるべく

繰り出していく触手は回数と時間と

共に、細く短くなっていた。



イチモの投擲。


空気を裂く。


キィィィンと甲高い音を響かせる。


触手の隙間。

ほんのすこしの隙間。

それは視界の死角、正面から斜め下。


それを分かってのことか

槍の軌道は直線から曲線へと変わり

レムザの額の丸傷を狙っていた。


「しまっーーッ!?」


槍は止まる。



――三叉の間に巨大な爪を

かち合わせ、止まっている。


槍はカタカタと軋ませながら

未だにレムザの額を狙っている。


ハークが片腕を竜に変え

槍とレムザの間へと伸ばしていた。


しかしその腕から見える

生えた鱗は所々銀色の輝きを見せる。


「ハーク君!」


「と、止メられ、タ。が、キツい」


ハークは己と竜の間を行き来する。


「にー、にーちゃ!」


意識を取り戻したハークを見て

ユミナが喜び、叫ぶ。


ハークはあまりの唐突な言葉に

槍を制する力がすこし抜けかける。


「兄ちゃ、んデハ、ナイ、か……?」


「にーちゃ! にーちゃ!」


ユミナはレムザに抱えられたまま

じたばたと動き嬉しそうである。


「……ははは。ハーク君。

 これで君は三人の兄になったな」


レムザはふと笑みをこぼす。


「あノ、唐突に、ジョーク

 言ワないで、くだサい」


窮地の中、しばし三人を縛っていた

緊張の糸がわずかながらほぐれる。


「だが、窮地なのは代わりない。

 この通り、守るだけで精一杯だ」


ハークは周りの様子を

レムザから現れている触手群を

軽く一瞥する。


危うく鉄槍が狙い続けているのを忘れ

力が抜けた瞬間。


レムザの数本束ねた触手が

とっさにそれを掴んで補助する。


「ハーク君。君だけでも逃げるんだ。

 その後、早くには君を探しだす。

 さぁユミナを連れて、行くんだ」


レムザはユミナを下ろして

ハークへと渡そうとする。


しかしハークはそれを止めた。


「俺とユミナだけでハ、助かレない」


「だが……」


「なら、いマの状況だけでも

 変えられナい、すカ」


「ーーイチモと、彼のいう神様が

 いままさに我々を狙っている。

 おおよそイチモに一矢報いれば

 少なくとも何かしらチャンスは

 生まれるはずだ」


それを聞いたハークはもう一度

周りの触手を眺める。


そして自身が止めている槍を見つめる。


「レムザさん。頼みがアる」



* * * * *



「……おかしい。槍は貫くか戻るかがない。

 圧縮も強めているのにーー」


その時圧縮地点から

触手の塊がずるりとこぼれ落ちる。


しかし圧縮地点には細長くなった

触手の塊が人の形を模して、残っている。


しかもそれは、槍が頭らしき部分を貫き

そのままの状況を留めていた。


「なんだ? 二つに分かれた……?」


こぼれ落ちた触手から

レムザとユミナが現れる。


雪の上を急いで

その場を離れるべく走り去っていた。


「槍に触手を絡ませ、代わりにしたのか。

 なるほど……やられたなぁ。

 レムザさんが咄嗟にやったかな」


イチモはエアディスの力か

近くへと移動する。


「まさかこんな事ができるなんて……。

 やっぱり戦い慣れているんだ」


イチモが槍に手を触れようとした時

ふと違和感を覚えた。



――なぜ槍を残した?



レムザへ目を向けたとき

飛び込んできたのは半竜ハーク。


しかもハークは弾丸のごとく突き進む。

竜の腕は、銀に輝いている。


「おっと……?」


「イチモォォォォォ!」


イチモへ向かう直線上

鉄槍ウェネスを手に取るハーク。


構えつつ、ハークは突進する――

ここまで読んで頂き

ありがとうございます。


続きます。

次話投稿予定は

2021.7.26(月)です。

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