カーテンとサルのオモチャ
楽器の並んだ部屋。
右を向けば、
木や鉄で出来た細長い板が
長さを変えて並んだ楽器。
左を向けば
流れるような曲線を形作った
大小さまざまな楽器。
そして椅子に置かれたままの
シンバルをひたすら叩くであろう
ちいさなサルのオモチャ。
他にも多く見受けられるが
それらがそこかしこに乱雑に置かれている。
「楽器……だよな。
なんでこんな雪山に……」
「う! うー!」
ユミナは目を輝かせて楽器へ手を伸ばす。
ハークはそれを制し、部屋へ目を凝らす。
いったい何故
こんな雪山の建物にあるのか
ハークは不思議に思った。
――ウオォン。ウオォン!
大男が叫ぶ。ミシミシと建物が揺れる。
ガシャンガシャンと
物を破壊する音を響かせる。
だんだんと音と共に近づいてくる。
ハッとハークはユミナに話しかける。
「ユミナ。もしかしてどっちにいけば……」
「うう!」
ユミナは横に振る。
それは、分からないではない
分かるが答えないという様子である。
ハークの目をじっと見つめる。
「ここに来て?!
……部屋の戸から出る?!
それとも窓を突き破る!?
それとも床をぶち抜く?!」
大男は迫る。
破壊音が近づく。
ハークは体勢を低くしつつ
ユミナを抱え走り出す。
「と、とりあえず、だ!」
向かったのはカーテンである。
* * * * *
ーーウオォン
大男は部屋続きの扉に巨腕を振るう。
振り下ろされた腕に圧された扉は
ぐしゃりとひしゃげてしまう。
ガラガラと広がった部屋は
楽器の並ぶ部屋であり、誰もいない。
「ウオォン!」
大男は楽器に八つ当たりと
言わんばかりに、上から下へと破壊していく。
鉄製であるが、圧縮されたようにぺしゃんこになる。
「ウウウッ! ウオォン! ウオォン!」
大男は地団駄を踏む。
グラグラと建物が揺れる。
その時、扉近くにて。
いくらか無事な楽器の中から、ガサガサと音が響く。
大男はそれを聞き逃さず
ゆっくり、巨体を慎重に動かし、音の方へと向かう。
太い指を器用に楽器をどかし
大男が見たものは、なんと
動くサルのおもちゃ。
大男が呆気にとられたその瞬間
男の頭の上でカーテンが揺れる。
「グルァァァッ!」
ハークは手足をラプトルに変え
大男の頭にしがみつく!
大男の両目にラプトルを尾を
鞭のように勢いよく、叩きつける!
「オ、オォォォォォォ……!?」
怯んだ大男は体勢を崩し、尻餅をつく。
大男の体重に耐えられなかったのか
床は大男の尻の形に大穴が空けられる。
「ウオォォォォォォ……」
そのまま大男は一階へと落ちていった。
「ゴ、ゴれ、で、イい、かな」
「う!」
ユミナはグッドと親指を立てる。
ハークは一時的に体の一部を
ラプトルに変えることに成功した。
ユミナは新たに指差す。
今度はイチモが吹き飛ばされた先。
ハークは大男が壊した扉へ戻り、次の場所へと急ぐ。
* * * * *
階段の先。
イチモが壁に打ち付けられた後が残る。
壁はポロポロと破片が落ち
衝撃で壊れた窓からの風に吹かれ
階段へと吹き飛ばされていた。
近づいてようやく分かったが
こちらの下りの踊場には
何事もなかったかのように何もなかった。
詳しく言えば
イチモが転げ落ちたであろう
痕跡が一切なかったのである。
代わりに、踊場の中心部だけ
小綺麗に、端にゴミが溜まる。
まるで中心から風圧にでも
押しやられたような状況である。
ハークは階段を一気に走り抜け
一階へと降りていく。
一階の廊下に抜けようと
曲がったとき、爆発音と衝撃が
遠くから勢いよく伝わる。
「ウオォォォォ……」
暗闇と土煙で現れる影。
先ほどの大男の様な巨大な姿が見えた。
土煙と共にイチモが見えたが
もう一人、スーツ姿の人物
レムザが影に構えて現れた
お疲れさまでした。
ここまでが7話となります。
ここまで読んでくださり
ありがとうございます。
続きます。
次話投稿予定は2021.6.24(木)です。
区切りの話を予定してます。
よろしくお願いします。




