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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】とは
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ハークとベルードとホーリー

研究所内の一角。


木板の看板が提げられたモカウ棟へ

ハークたちは足を入れていく。



ホーリーの他にも早くに

わるいこだと分かった子供たちに

ひとりひとり個室を与えられている。


場合によっては同室になるが

最高でも二人入るとベルードは話す。


「ここね、俺も最初の頃入ってたワケ。

 ハーク君も、入ればわかるんだけど

 結構、中は頑丈で静かで快適。

 すっごい落ち着くって感じ。

 博士、だったかな。モカウって木なんだ。

 どこぞの神木って言ってたっけかな?

 アナグマ博士は、俺らのために

 見つけてくれた木で特注品だったかな。

 気を付けて扱ってね?」


ベルードはスラスラと答える。

どこか懐かしそうな様子に

ハークは話に出たモカウの柱の一本に

手を置く。


「温かい。なんだか安心する気がする。

 そのモカウって木のおかげなんだろう。

 ……早くホーリーに会いに行こう。」



* * * * *



「やぁこんにちは、ホーリー。

 改めて、俺はベルード。最初ぶりだっけか。

 えっと、こちらハーク君。君と同い年。

 俺と同じスタッフで、見習い、てやつね。

 二人で君を手伝っていくつもり、ね。

 ここまではいい?」


首を傾げたベルードに

合わせて首を傾げて

小さく微笑む少女ホーリー。


身長はハークより一回り小さい。

肩にかかる程度の金髪ストレート。

左頬には厚手のガーゼが付けられている。

ベルードの話に、微笑みかえしている。



個室は一律の直方体ほど大きさで

必要最低限の家具だけが置かれている。


ベッド、机、椅子、本棚、日記帳。

一日の終わりに、必ず日記をつけることが

このモカウ棟の子供たちに課せられている。


ほとんどが木製の部屋は、消灯時間を過ぎると

壁や床に収納されてしまう。

これは部屋の外からの刺激を極力抑えつつ

よく眠れるようにするための工夫である。



少女ホーリーの部屋に入った二人は

いくらか距離を取りつつ話を進める。


今回の件、ハークが新しく入ったことで

スタッフとして仕事を覚えていくこと。

そして、ベルードの仕事および権限が

一部ハークに渡ること。


この二つをベルードの口から伝えられた。



「こんにちはハーク。よろしくね。

 ふふ、ベルードはもう狼にならないの?」


ホーリーは手のひらを頭の上にかかげ

狼の耳のようにパタパタとはためかせる。


しないしない、と少し焦りつつ

ベルードが答える様を

どこか楽し気に眺めていた。


「――ホーリー。

 今後はハーク君だけが来るかもだけど、

 やることは俺と同じだからよろしく。

 それじゃハーク君を

 他の所に案内してくるから」


わかった、とホーリーの部屋を出る。




「――んで、この部屋。

 モカウ棟内の監視室。

 手動で消灯時間外に部屋を出したり

 隔離棟に移すときに頑丈に施錠したり

 要するに、ここのメインシステム部屋なワケ」


ベルードは監視室に置かれた

機械類のあちこちに指し示す。


「そんな事を、教えて大丈夫か?

 もしかしたら、ここをいじくって……」


「いやいや、しないでしょ?

 だってホーリーと話している時

 君の顔はどこか安心していたから。

 そーいうのって大事。

 自然体でいられるのって

 かなり難しいんだよ。

 俺もそうだったワケ」


その後、ベルードに

半ば適当な案内をされたが

モカウ棟の大体の地図を

ハークは覚えた。



現時点で使われている棟内の部屋は8部屋。

廊下一本に左右に4部屋ずつ。

消灯時間になると部屋は外側から壁で覆う

部屋自体がそのまま下へと格納され

部屋全体を覆うこともあるが

とにかく時間外に出ることはない様にするためである。


消灯時間後は、外からの物音が

響かない様な作りである。


ベルードの話した通り、

わるいこになって暴れて

すぐに部屋から移送する際に

他の子に影響しない様に、

ということなのだろう。



* * * * *



「ハーク君。当分はモカウ棟で

 ホーリーの観察と出来るなら

 掃除、ゴミ拾いを頼みたい。

 ……ゴミ捨て場で生きていた

 君の強みを活かせると思う」


報告に戻ると、レムザがゴミ袋と

専用のトングが手渡される。


「わか……、りました」


「うむ。ゴミの中には

 彼らの私物が誤って捨てられたり

 わるいこになった理由が分かったり

 することがある。地味だが、重要な仕事だ。

 頼むぞ、ハーク君」


レムザはガッシリと

ハークの肩へと手を置く。


なぜ、会って間もない人間を

ここまで信用できるのだろう?


ハークは困惑しつつも

与えられた仕事に取り組む。



* * * * *



一週間が過ぎた。

ハークは、ゴミ捨て場での経験を活かした

ゴミ拾いに精を出していた。


レムザが言う、

子供たちがわるいこになった理由

その手がかりとなる品物は

一週間の中では見当たらなかった。



ゴミを集めて、まずベルードに報告する。


中からいくらか見定め

ベルードが気になるものを取り出す。


それをゴミと分けて

取りだした物をレムザの元へと届ける。



「……くしゃくしゃの紙。

 中は……あぁ、書き間違えか。

 これはどこで拾った?」


「えっと……、モカウ棟の廊下、です。

 それよりももっと小さく丸めてありました。

 場所は、入り口を背にして右側の3と4の

 部屋の柱付近」


ハークは最初の数日で

ゴミを拾った場所を問われ続けた。


仕事上、ゴミの位置まで

把握しておかねばならないと

レムザから教えられた。



どうやらベルードから聞かされるはずだが

ベルード本人は直感で覚えているらしく

そこまで教えるということはなかった。


ハークは位置を把握すべく

レムザから手帳を貰い

丁寧に記録することにした。



位置を聞いたレムザは

書類ファイルを取り出す。


ぺらぺらとめくり

あるページを開きつつ電話をかける。



「博士。お疲れ様です。

 いま……はい。えぇ、そうです。

 ウォートとクラックの、二人の部屋の

 はい、その辺りで。……分かりました」


スマホを閉じ、ふぅっと一息つくレムザ。


「次の仕事にかかってくれ」


レムザは支度を始めた。

引き出しから重厚そうな

赤黒いグローブを取り出し、手に付ける。


「ハーク君。引き続き明日も頼む。

 そうだ、もうすぐホーリーの所へ行く時間だろう。

 ゴミを捨てて、早く行ってくるんだ」


ハークの頭を優しくなでてやり

レムザは部屋を出た。


なで方としては、髪型がぐしゃりと

変わってしまうほど

強くかつ不器用そうな様相であった。



ハークは急いでモカウ棟へと向かった。

隔離棟とモカウ棟の間にあるゴミ捨て場に

しっかりとゴミを置き、駆け出して行った。



* * * * *



モカウ棟の入り口にて

ベルードとレムザが何やら話していた。


すぐ近くには

大きな鉄製荷台を乗せたトラックが2台ある。


一方は荷台の中からガンガンと

激しく叩きつける音。


もう一方はギリギリと絶えずひっかく音。


「……あ。ハーク君。

 悪いけど、ちょっと行ってくる。

 レムザさんと、博士の所に、ね」


「え? いいんですか? 誰も居なくなるんじゃ」


「大丈夫。

 モカウ棟は『厳重施錠状態』に変更した。

 何があっても、ここにいる子たちは出ることはない。

 ホーリーとは、監視室から遠隔電話で話してくれ」


そう言い残し、レムザはトラックへ乗り込み

ベルードはトラック荷台へと飛び乗った。


「(なんでそこなんだろう……)」


素朴な疑問がわいたが、ハークはモカウ棟へと急いだ。

続きます


2021.2.18 「モカク」を「モカウ」に変更(作者の打ち間違え)


2021.6.15 描写加筆しました

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― 新着の感想 ―
XのRP企画に参加くださりありがとうございます。遅くなってしまい申し訳ございません。 新鮮な設定だったのでとても興味深かったです。この先も気になるところではありますが、まだ企画参加者の皆様のとこを回り…
[良い点] いつの間にか一人になっていたハークくんは、とても辛い境遇だったろうと思います。衣食住の全てを、ゴミで賄うことは、衛生管理の面においても悲しい状況です。研究所で、少しでも生活環境が改善された…
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