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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
半竜は、歩き出した。
25/328

達人は猫をまね、人を放り投げられる

「儀式ってなんだ!?」


物陰に隠れつつ、ハークは問いかける。


「村の存続に、供物がいる。

 米や麦が、いつからか肉だ魚だに変わった。

 最近は遠方の品物も並んでいる。

 黒獅子は、珍しさから供物に

 最適と考えたんだろう」


ロニィの案内で、周りに注意しつつ

村長家の裏にたどり着く。


村長家は木の柵で囲われ

庭を挟んで中の様子が伺えた。


「待ってくれ。村長と誰かが話している」


「何? 村長が? それが誰かは見えるか?」


ハークは目を凝らす。


* * * * *


「これはこれは主使しゅし様。

 ご機嫌麗しーー」


「村長。貴様、何のつもりだ」


「はて。何か私ーー」


「その鉄、使ったそうだな? 」


主使しゅしと呼ばれた人物。

七三分けで細目の眼鏡をかけた四十ほどの男。

紺の袴に黒の羽織、中は白の着物を身に付ける。

手元には閉じられた扇子。

懐には紫の小さな長方形に折られた布が、顔を覗かせている。


大主神たいしゅじん様の教えを忘れたか。

 それを賜った時、誓った言葉を捨てたか?」


「いえ。滅相もない。

 一度たりとも忘れはしません」




村長と主使は会話を続けている。


* * * * *


「白い服に黒の上を着ている。

 眼鏡で細い目。何かあおぐものを持っている」


「おそらく主使しゅしだ。

 なぜ今来た……? まだ来る時期ではないはず。

 いや、まずはこのまま進むぞ」


ロニィは静かに進む。


しかしそれを追うハークは

誤って足元の小枝を踏み折ってしまう!


「誰だ!」


村長は音のする外へと目をやる。

ハークは焦りから声をあげかけたが

ロニィが口元を掌で押さえる。



”みー、みー”


「ほぅ、猫か。お前のか」


「いえ。野良でしょう。

 あるいは村人の飼い猫かと」


村長と使主は話を続ける。

ロニィの機転により、うまく通せた。



「(よくそんな声を)」


「(幼い日の娘をあやした時の事が

 まさかこんな所で……)」


* * * * *


村長の家の一角。

村の倉庫とは別の、個人の倉庫が見つかる。


白い壁に斜め格子模様の二階建て。

入り口と二階部の窓のふたつだけが

倉庫に入れそうであった。


「小僧。上が開いている。

 あそこへ投げ入れるから

 中から鍵を開けてきてくれ」


「投げ入れ……、投げ入れる?!

 そんな事出来るわけ――」


「よく見ろ。あそこの大きさは

 子供一人くらいだ。ワシでは無理だ。

 これは床も石造りだ。掘るのも無理」


有無を言わさずロニィはハークを抱える。

そのまま片腕の力だけで二階をめがける。

その力は壮年の男とは思えない、

強靭で勢いのある投石機のようだった。


「(イヤーッ!)」


「(うわあああああ!)」


ハークは迫る窓枠に運良くすっぽり入った。


「(よし! そのまま中へいけ!

 下のかんぬきを外せばいい!)」


窓から落ちないよう

急いで中へとハークは潜り込む。

床にずり落ち、床に積もったホコリが舞い散る。


暗い倉庫内で、ゴホゴホとせき込むハークは思った。


「かんぬきって、なんだよ……」

少し遅れての投稿です。

申し訳ありません。続いてます。


次話投稿予定は、2021年3月25日(木)です。

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