動け。されば道を拓けよう
「うぉ?!」
派手に壊されたフェンリーの部屋から
吹き込む強い風は、部屋の物を吹き上げ
ハークへと打ち付ける。
すると、ピンク色の装飾が施された
一冊の本がハークの目に映る。
その表紙には巻物と似たような字が書かれている。
「……もしかしたら」
ハークは申し訳ないとつぶやき、中を開く。
ペラペラとめくった先に、巻物とそっくりな
字の書かれたページを見つける。
ひとつひとつに線が引かれ、丁寧且つ
可愛らしいイラストがついていた。
「ーーつまり、自分の事について言ってたのか。
他人も……自分。何だこれは。
他人は他人、自分は自分……だろう。
……ダメだ、分からない。
俺は、考えるより、動くしか、ない!」
理解できないことに落ち込むよりも
ハークはむしろどこか吹っ切れた様子だった。
巻物が取り出された引き出しヘ向かう。
巻物とピンクの本と一緒の引き出しに戻す。
気持ちを改め、村へと駆け出す。
* * * * *
村は周りを高い木の壁に覆われている。
入り口はひとつで、必ず一人は
門番として常駐していた。
山から見える村の様子は
先ほど潜入したときよりも慌ただしかった。
台車に縄で縛り、乗せられたライオンの姿を、
何も知らない村人が物珍しそうに眺めている。
もうひとつの台車には麻袋が
大小一つずつ乗せられた。
「台車は……、村長の家か」
村長の家に着くと、三つの荷が下ろされる。
村長はどこかを指差し、荷が運ばれていく。
その直後、村長に駆け寄る村人。
村人から耳打ちされ、慌てて家へと入っていった。
「しめた!」
ハークは山の木々や茂みに身を隠しつつ走る。
木の壁の下。人気の少ない場所をよく見ると
隙間があった。おおむね10センチ。
野良猫が入れる程度であった。
ハークはその辺りを急いで掘る。
周囲に注意しつつ、最低限自身が入れるほどの
大きさに作り上げていく。
「よっ……と」
ハークは穴に身体を滑り込ませる。
中の様子に注意しつつ、タイミングよく
村へと潜入を果たす。
* * * * *
村長の家のすぐ近く。
三人がいると思わしき倉庫へたどり着く。
ちょうど村人が出払っていた。
ハークは音を立てないよう静かに忍び込む。
倉庫はいくらか外からの光が差し込み
中は比較的物の位置が分かるほどである。
大きな麻袋が、ゆっくりと伸縮を繰り返している。
「(助けにきた)」
「……む! 小僧か!? どうやって」
「(しーっ! 他は?)」
「(分からぬ。小僧、袋の縄を。
それと近くに刃物を持ってきてくれ)」
囚われたロニィの指示通り縄をほどき
倉庫の壁に置かれたクワを持ち出す。
「そのまま持っているんだ」
麻袋から身体を出したロニィは
そのままクワの刃に腕の縄を切りほどく。
「あの鉄は?」
ハークはロニィの身体や周囲を警戒する。
先ほどロニィを貫いた水のような鉄が
まだ近くにあるのではと考えている。
「どうやら村長から
遠くへ持ち出せないようだ」
ロニィは自由になると直ぐ、
もうひとつの麻袋を素早く開く。
中にいた娘フェンリーが
すうすうと寝ていることに安堵した。
「お、おい。撃たれただろう?
そんなに動いていいのか!?」
ロニィの動きにハークは目を疑った。
先ほど盗み見ていた光景では
致命傷に近い一撃と見えていた。
「なに、村の医者とひとつ貸があってな。
内緒で手当てしてくれたんだ。
何があるか分からんな。いや本当に。
――っと、話している時間はない。
急がんと。お嬢さんが村の儀式に使われる!」
「儀式?! なんだそりゃ」
「説明は後だ。行くぞ!」
フェンリーを倉庫の積まれた藁束の中に隠す。
黒獅子エリーを探して二人は
静かに倉庫を出た。
続いてます。
投稿すこし遅れました。申し訳ありません。
次話投稿予定は2021年3月22日(月)です




