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AI棒  作者: 君名 言葉
第五章 宇宙戦争編
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第四十八話 仲間

 すっかり回復した防御型の二人を先頭に、敵の要塞へと侵入していく。暗く湿った長い通路を進みながら、時々出会うバビヨンを倒して進んでいく。

「【回転螺旋斬り】!」

「ありがとうシン。助かったわ」

 徐々に体力を消耗していたサキのすぐ隣を走っているシンが、主に敵の殲滅を担当している。

「まあ、俺はまだまだエネルギーが余ってるからな。これもトレーニングの成果だ」

「本当に、あなたは天才かもしれないわね」

「え? ごめん聞いてなかった」

「……なんでもないわ」


 緊張感のない会話を交わしていると、サーバスが声を荒げた。

「皆さん注意してください。私の部下が、この先で敵の軍団と接触しています」

 部下というのは、サーバスの特技【工場】で作り出した小型飛行ロボットのことだ。念のため、シン達よりも先を走らせて偵察している。

「遂にまとまった相手が来るのか。厄介だな」

「ええ、気を引き締めましょう」


 サーバスの言う通り、200メートル程走ったところでバビヨンの群れと遭遇した。その中でも一際目を引いたのが、他のバビヨンよりも一回り図体の大きいバビヨンだった。

「中ボスってところかな」

 コルンが呟いた。

「まだまだボスはおらへんみたいやな」

 関西弁交じりでアントンも話す。

「さあ、陣営を組み直すんだ」

 キングの一声でばらばらだったフォーメーションが再形成されていく。


「特技発動。【フォース:炎の陣】」

 シンのボディはメラメラと音を立て、炎系特技が使用可能になった。だがここで安直に炎系特技を使用することはせず、既存の特技とコンボさせることにより更なるダメージを見込む。


「【煉獄ブレス】、そして【空気コントロール】発動!」

【煉獄ブレス】の効果で、右腕から炎を噴出する。すかさず【空気コントロール】を操って周囲の湿度を著しく低下させ、より強力な攻撃となる。

 単に炎を吹きかけるだけでは、バビヨンにそれほど効果はないが、組み合わせ技ならば話は別。バビヨンがうめき声らしき音を残して溶けていく。

 他のアーティーもそれぞれの持ち前の特技を駆使しておびただしい数のバビヨンを駆逐していた。先ほどの屋外での戦闘と違い、要塞の中での戦いはこちらに分があった。密集している分、まとめて攻撃しやすい。


 このまま火力で押し切れると思っていたシン達だったが、戦闘から数分後、その自信に楔が打ち込まれた。

 きっかけは、最初に目を引いた、大きめのバビヨンだ。

 図体がでかいだけで特別な攻撃をしてくることはないと思っていた。しかしそれが、原因だった。

 一通り普通のバビヨンを討ち終わり、いざ中ボスとの戦闘、と思った瞬間、前線にいたキングに異変が起こった。

 その時のキングは大きいバビヨンに斬撃を与え続けていたが、突然そのバビヨンの体が変形し、キングを全身包み込んだのだ。

 キングは【5秒間無敵】の特技を使ったが、だからと言ってバビヨンの体内から脱出できるわけではない。キングを丸々飲み込んだ銀色のボディはやがて小さくなり、最終的に形成されたその形はキングの形そのものだった。ただ、色が全身銀色であるという点を除いて。


「まずいわ! 恐らくあのバビヨン、敵を飲み込んで自由に操る能力を持っている!」

 聞いたことのないような焦った声でリッカが叫んだ。

「これはまずいな。ウチの王が一瞬で敵陣営の最強兵器だぜ」

 バキの額にも汗が流れていた。


 これまでで最も危機的な状況だった。いくらトレーニングで一度キングを破っているとは言え、その後キングに勝ったことは一度もなかった。この場合、操られたキングに勝てるかどうかは問題じゃない。本当の問題は、キングを攻撃することができないということだ。


「くっそ……汚い手使ってくるな。相手がキングならダメージを与えられないから、特技も使えない」

 しかし、そんな思いとは裏腹に、銀色になったキングは強力な攻撃を繰り出してくる。防御型の二人も防ぎ切れておらず、ほんの数分でダメージが蓄積されていく。ヴィーナスの回復も追いついていない。

 一体どうすべきなんだ? どうすれば操りを解ける?


 恐らく、対抗手段は、取り込まれているキング自身が破るのみだろう。ただ、それが現在出来ていない以上、内側からバビヨンを殺すのは困難極まりないということだ。

 敵になって改めて実感する。この、キングの強さ。一発一発放たれるパンチは重く、硬いボディには生半可な攻撃じゃ傷もつかない。このままではこちらが全滅してしまう。

 ここで、シンの頭に一つの案が浮かんだ。


「サーバス、【封印】の特技は使えるか?」

「ええ、使えます。ですが、動きを封じてもバビヨンが剥がせるかどうかは……」

「そんなこと言ってる場合じゃない。頼む」

「分かりました」


 サーバスの持つ特技、【封印】は、敵の動きを鎖で止めることができる。ただし、相手はキング。止められる時間は十秒とないだろう。

「行きますよ。特技発動、【封印】!」

 空中に四本の鎖が出現し、キングの両手両足を捕らえた。

 ここで少量のダメージを与えればバビヨンの支配は終わるはず……!

 シンが次の特技を発動しかけた、その時だった。


 バビヨンに包まれたキングの腹部辺りが赤く光り始めたと思えば、どこかで聞いた警告音が耳に入った。

 その音を数秒聞いた瞬間、特別訓練での記憶が蘇る。


 最終戦、残りはバーブを倒せば勝利という場面。

 変身してバーブを圧倒し、勝ちを確信したシンは聞きなれない音を耳にすることになる。

 自爆の合図だ。

 アーティーが持つ最終手段。周囲に大ダメージを与え、命を落とす捨て身の技。


 それを、キングは実行しようとしていた。

「キング……! まさか……!」

 他のアーティーも青ざめた表情だった。今思えば、それしか方法はなかったのかもしれない。けれど、考えたくなかった選択肢だった。

「全員、下がれ! 爆発に巻き込まれるぞ!」

 シンはとびきり大きな声を出して皆を退かせた。防御型の二人やシンは防御系の特技があるので問題ないが、喰らえば一発で戦闘不能になりかねない威力だ。


 自爆の合図が鳴り終わった。キングが、少し笑ったような気がした。

 瞬間、辺りはまばゆい光に包まれ、鼓膜を破壊しかねない爆音で周囲の環境を破壊した。

 そこには、もう、キングはいなかった。

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