あすなろ教の迫力
良夫「な、なんとかしてって、お前……(そう云いながら手に持ったビールとコップをガチガチと当てて震える)」
猛男「(玄関のドアを蹴飛ばして開けて)こらあ!ババア出て来い!」
良夫「あ、あとは任せるう~……」
良夫、手にビールとコップを持ったまま奥の居間の襖を蹴倒して、居間へと逃げてしまう。
為子「あちゃー」
和子「……だと思った。しょうがないなあ、お父っつぁんは」
金子「だからね、信仰をしてない人はこうなっちゃうの。いいから私に任せなさい。信仰さえあればへっちゃらよ……なにぃ~?出て来いだとぉ~?上等じゃない。南無あすなろ大蓄財、南無あすなろ大蓄財(と題目を唱えつつ、合掌をしながら玄関へと向かう)」
猛男「(金子の合掌姿と題目に毒気を抜かれ、一瞬酔いも覚めた風情で)な、なんだ、お前……な、南無、あすなろ大畜生?なんだ、そりゃ?大畜生って、俺のことか?」
金子「黙りなさい!南無あすなろ大蓄財よ。この大凡夫が!あすなろ教信者に仇を為すなら天罰覿面だわよ。この神聖なるあすなろ教の家のドアを蹴飛ばすとは……何事かっ!そこに土下座して謝りなさいっ!(合掌を解き手翳しをして)喝ーっ!!」
猛男「喝ーって……あ、あのね、オバサン……」
和子が猛男の前に出て来る。為子は金子のうしろで様子を見守っている。
和子「小父さん、小父さん……ったく、しょうがないなあ。家の前で大騒ぎして!困子小母さんやゴンちゃんに恥ずかしくないの?!」
猛男「(和子の登場でさらに毒気を抜かれ)あ、和ちゃん……和ちゃんが出て来ちゃうんじゃあ、俺……」
和子「俺じゃないわよ。ほら、困子小母さんが出て来たわよ」
通りの向かいの猛男宅のドアが開き困子がすっ飛んで来て猛男の腕を引っ掴む。




