5.美少女→おっさんの場合 その2―3
「あンら~っ! いやだぁ~んっ! 本当に良い男~っ!!」
男は鼻がぶつかる位置まで顔を近付けると、ふがふがと呼吸をして臭い息をルナに吐きかけた。
ルナは恐怖でガタガタと震えながら、男の興味が薄れるのを必死に待っている。
「ふむ……そして、お前の見立てはどうなのだ」
「うぅ~んっ! 微妙っ! すっごく、微妙よぉ~んっ!」
玉座に座る白髪・白髭のナイスミドルは、フィリの父親であるアルザード王である。
一方、そんなアルザード王にも敬意が有るのか無いのかよく分からない口調で話すのは、ルナと並ぶような大男であった。
「ルナ様は私の夫です! あなたには渡しませんよっ!」
「あらぁ~んっ! フィリちゃんもすっかり大きくなってぇ~! 大丈夫よ、アタシはそんな泥棒猫じゃないから。でも、テイスティングくらいはさせてねぇ~っ!」
「それがダメだと言ってるのです! もう、本当にあなたは油断も隙もないのですから!」
王族と謎の女言葉の大男に囲まれたこの状況。
(カオスすぎるっ!!)
ルナは白目を剥いて卒倒しそうになっていた。
「あ、あの、失礼ですが、あなたが何者なのか説明をしてくれませんか?」
「あらやだ! アタシとしたことが、あまりの良い男に興奮して自己紹介を忘れていたわぁ~! アタシはこの国の行く末を占うマッチョシャーマンよ!」
「いや、その……失礼ですが、あなたが何者なのか説明をしてくれませんか?」
まったく意思疎通の取れないこの状況に、泣きそうになるルナ。
ただ、シャーマンというだけあって大男の着ている衣装はどことなく民族的であり、インドのお坊さんが着ているような服の黒バージョンだと、ルナは始めから思っていた。
紫色の髪は短く刈り上げられていて、唇には髪と同じ色の口紅が塗られている。
鼻には動物の骨のようなものが埋め込まれていて、元の世界で言うなら鼻ピアスだろうか。
(やっぱこの人怖いィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!)
ルナの率直な感想だった。




