[三章-13:不穏《Restlessness》]
閃剣と男との間に静寂が生まれる。数時間にも感じられる1分がすぎた頃、閃剣が口を開く、
「あんた、何者?邪魔しないで」
「私の名は、龍神……いや、龍人か…」
と音だけ聞くとどちらも同じ答えを自分のみ理解して答える。
「なにも変わっていないじゃあないか。ふざけた名前だね、“自称”龍神さん。知ってる?龍神は、龍神の門に引きこもっているんだよ」
と馬鹿にしたような口調で言う。“自称”龍神は口を開かず、ただ閃剣を睨みつける。
「いいや、どちらもまとめて殺す」
「さっきも言った通り、こいつは死なせない。だから、お前が死ぬことになるぞ」
と真剣な表情で“自称”龍神。
「何だ、その理屈…筋が通っていないや。死ぬのは君たちだよ」
今にも刺突が繰り出されようとする。しかし、その刺突は繰り出されることはなく、背後から現れた、ローブの方へ向き、
「上の命令じゃ、仕方ないか……ごめんね殺すのは僕じゃなくて彼らだ。……はぁー、もう少しあの龍の魂と遊んでくれればよかったのに。名残惜しいけど…さよなら2人とも、二度と生きて会うことは無いだろうよ」
と残念そうに歩き出す閃剣、それをカバーするようにローブが立ちはだかる。一馬は状況的に龍の魂はレイである事に気付き、
「待て!レイを、俺の龍の魂を捕まえたのか?」
ゆっくりと歩く閃剣は何も答えない。一馬は続けて
「レイをどうするつもりだ!かえせ!このやろ!」
と言いながら追いかけようとするのを“自称”龍神に制止られる。一馬の怒りは“自称”龍神にも向き
「何でとめる!邪魔するんだったら、助けてくれあんたでも潰してから追いかけるぞ!」
と叫ぶ。
「“自称”龍神ね……まぁ、それはいいとして、今追いかけたら、あのローブ軍団に滅茶苦茶に斬り裂かれて終わりだ。今は、ここから抜け出すことを考えろ」
一馬の怒りはおさまらず、
「うるさい、レイが捕まえた奴を見逃せっていうのか?ふざけたこと言うんじゃねぇ!」
と叫び、“自称”龍神の抑えつける手を何とかして解こうとするも力の差か解けない。
そうこうしているうちに閃剣は見えなくなってしまった、それと同時に隠れていたローブが姿をあらわす。
「分かってはいたがなかなか多いな…さて、どうしたものか」
と呟く。一馬は
「全員、ぶっ殺して、レイを取り戻す」
と“自称”龍神の手が無ければ今にも突撃しそうな表情、動きをする。
「こいつを守りながらか……ふぅー」
と息を吐き出しながら、周りを見渡す“自称”龍神。吐き出し終わると同時に、一馬に一撃、気絶させる。ローブがそれを理解するよりもずっと早く、“自称”龍神は動き出す。剣を作り出し、突撃の線上にいるローブを斬り捨てる。木の上からの奇襲も読んでいたかのようにダガーが届く前に斬り捨てる。“自称”龍神は、ローブよりも速く、木をかわしながら移動し、視界から外れる事に成功する。
一馬は暗い世界に1人佇んでいた、
「ここは、どこだ?知らない場所だ。何も無い」
と体を動かそうにも、動かない。そして先ほどの言葉が音として外に出ていなかった事に気づく。
体が自分のものではなくなったかのような感覚に襲われる。
【我が主人よ、やはりこの世界にもおられたのですね。その者は、なかなかの器の持ち主ですね】
と脳に直接語りかけるような声ひどく不愉快なが頭の中に響く。一馬は頭を抑えて倒れこむ……なんてことも体が動かないので出来ない。一馬は自分の意思とは関係なく口が開いている事に驚き、抵抗しようとするも体が言うことを聞かない。
「我ノ力ハ未ダ不完全ダ。此ノ体ヲ制御スルコトガ出来ナイ。依リ代ガ弱ッタ時カ、負ノ感情ニ染マッタ時ダケ意識ヲ少シ制御出来ル様ニナル」
と言う一馬の中にいる誰か。また不愉快な音が一馬の頭の中に響く。
【私におまかせください、力を与えましょう。幸い馬鹿な人間どもが私を解放し、制御できるなどと思っておりますので、それを利用して主人様に微力で私の力を渡すなどと言う無礼をお赦しいただけませんか】
「許可スル」
と答える。急に暗い世界に光が射し始める。外から、一馬を呼ぶ声が聞こえてくる。
「チッ、時間切レダ」
その言葉を発した後一馬は夢から目覚める。




