[一章-16:バングル《Bangle》]
———どこかのジャングル
腰巻カバンのポケットの中がチカチカと点滅する。
数秒たってから点滅しているものに気付き取り出す男。
「もしもし久しぶりだな」
と男。呆れたように
「もしもし、全くだよ。連絡ぐらいよこせよ」
と話す一馬。相手は父、海馬だ。彼はボロボロの布切れを着ているような格好をしている。
「スマンスマン (棒)、電話してきたってことは学園長にバレてないことだな?」
と海馬が尋ねてくる。何がバレてないのかすらわからない一馬、
「どういうことか説明してくれ」
と言う。説明無しでは一馬には何のことかさっぱりだ。
「そっか、雫に見えてもあんたは見えないのか、説明してやろうか?」
と何故か挑戦的な口調。早く説明しろよと強く言いたい気持ちを抑え、
「教えてくれ」
と頼む。
「いいぜ、そのバングルは術式が二つ組み込まれていてな一つが術式認識妨害、もう一つが能力察知妨害の術式だ」
だいたい一馬にも言っている意味はわかるが
「術式ってことは作ったのはお母さんか、術式についてもっと詳しいこと教えてよ」
と頼む。すると声の主が変わる。
「もしもし一馬?雫もいるって本当?後で変わって〜」
と優しい声で話すロングヘアーの女性、時雨だ。彼女は海馬の180°異なり綺麗な服を着ている。一見何故この二人が夫婦どころか知り合いなのか疑うほどだ。一馬はうん、と答える。すると電話越しでもわかる喜びを一馬は感じる。バングルの術式についての説明が再開される。
「まず術式認識妨害は、名前の通り、もう一つの能力察知妨害の術式を隠すための術式よ。術式バレたら学校持っていけないでしょ?で能力察知妨害はこれまた名前の通りで能力の使用を察知されないようにする術式。
でも、バングルに二つの術式を組み込むのは難しくて……1日に40〜50分程度しか効果を発揮できないし、しかもいつ術式が崩壊して使えなくるかもわからないの」
とどんどんテンションが下がっていく時雨。
するとまた声の主が変わり、
「そろそろお前もヤンチャするだろうと思ってな、作ってもらった。大事に使えよ。あっ、あともう少ししたら仕事落ち着くし帰る」
最後の言葉の突然の報告に驚く一馬。しかし電話の向こうから、雫を呼ぶ声。一馬は反応できずに雫と変わる。両親が揃って帰ってくるのは4年ぶりとなる。その事を聞いたのだろうか、雫はとても喜んでいるように見えた。何年も会っていないのでお互い話したい事がたくさんあり過ぎて超が付くほどの長電話となっている。一馬はとりあえず雫に歩きながら話すように促した、兄妹は歩き始める。
ほとんど夕日は沈んでいた。




