(46) 第2回メレ・アイフェス集合会議⑥
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カイルの抗議をいつものようにディム・トゥーラは華麗に無視をした。それは安定の日常光景で、サイラスはなぜかほっとした。
記憶の空白期間が存在しても周囲の態度や反応は変わらない。それはサイラスにとっての正しい居場所であることの証明でもあった。
気にも止めなかった日常に、心の平穏さを感じるとは――サイラスは自分の心情の変化に驚いてもいた。
退屈か、退屈じゃないか、に価値観を見出していたはずだったのに……。
ディム・トゥーラはサイラスに対して質問を投げてきた。
「それは失語症の一種だと思うが、脳神経の異常としてシルビアに相談は?」
「養い子の名前が発声できない、とは言ってない」
「なぜ?」
「彼女に相談すれば、イーレに筒抜けになるじゃないか。イーレが知ったら、『妹弟子を泣かせる気か』と殴り飛ばされかねない」
「「あ〜〜〜」」
二人はサイラスの自己防衛策に理解を示した。
女子供を泣かせる行為は、イーレの鉄拳制裁を受ける理由として十分であり、その可能性がおおいにあるからだ。
サイラスは肩をすくめてみせた。
「一応、別の理由をこじつけて、脳神経検査を受けたけど異常なし。そもそも神経損傷だったら、体内チップが反応するだろう?」
「……シルビアにその小細工がバレてないとは思わない方がいいよ」
カイルが不吉なことを言った。
「なんだって?」
「彼女には誤魔化しがきかないって、言ってるの。見抜くことに関しては、そこらの精神感応者より優秀だよ。嘘や誤魔化しがまったくきかない。あれって、すでにホラーの領域だよ」
カイルが真顔で語る。
「…………何があったんだよ?」
「いろいろと。彼女が言うには、脈の変化や発汗反応、瞳孔の収縮率、脳波、血圧の変動から察しているらしいけど、心理遮蔽をしても嘘を看破するんだよ?これって、新種の能力者のレベルだよね?怖いったら、ありゃしない」
「単にお前が、腹芸ができないだけだろう?」
ディム・トゥーラが、ぼそりと突っ込む。
「ディムは、そういう経験ないわけ?」
ない、と答えようとして、ディム・トゥーラは、ジェニ・ロウからロニオス・ブラッドフォードの生存についての追求を受けた件を思い出した。
あの看破力は驚異的だった。
「シルビア相手ではないが、確かにあるな……。ホラーの領域という表現は理解できる」
「でしょ?」
「男性の嘘や誤魔化しを見破るのは女性特有の才能かもしれない」
「ああ、確かにそうかも」
「あのさぁ、浮気を見破る女性の勘について語っているんじゃないよな?だいたい嘘を見破るのは、精神感応者の得意芸じゃないのかよ」
今度はサイラスが二人の会話に突っ込んだ。
「俺達とは本質が違う。精神感応者は、単純に本音を拾いあげるだけだ。副音声が聞こえるとでも、表現すれば理解できるか?」
「ああ、なるほど。だから、俺の本音もいつも筒抜けなわけ?」
「お前は隠すつもりが、これっぽっちもないだろうが」
バレてる。
サイラスは内心、舌をだした。
「中央の人間なら、精神感応者との対話では必ず遮蔽するし、精神感応者も無理に覗かない。だが、お前はあけっぴろげすぎるぞ?」
「でもディム・トゥーラは、遮蔽しなくても強引に踏み込まないだろう?礼儀正しいじゃないか。そこは信頼しているんだぜ?」
「――」
「あ、照れてる」
ディム・トゥーラの一瞬の沈黙に、余計な突っ込みをいれたのはカイルだった。
雉も鳴かずば撃たれまい――カイルはディム・トゥーラの持っていた端末で間髪いれず殴られた。
これまた安定の日常光景だった。
やはり安心する――そんなサイラスの感想も筒抜けだったらしく、ディム・トゥーラに睨まれた。
こほんと、咳払いで誤魔化してサイラスは先を促した。
「それで?」
「遮蔽は精神感応者の防御手段の一種だ。人の本音が大音響で垂れ流しになっている中に、二十四時間ほどいてみろ。たいていの能力者は病む」
「逆に言えば、僕達には遮蔽をしている人間の本音は聞こえない。だからシルビアの嘘を看破する能力を『才能』と評するし、僕は彼女に勝てないってこと」
カイルが愚痴る。
「そして彼女はすぐに支援追跡者に報告をあげるんだ」
「俺に報告をあげるのは、当たり前だろう」
「そして叱られるという道筋ができているんだけど?」
「叱られるようなことを俺に隠すお前が悪い」
サイラスは状況を理解してつぶやいた。
「なるほど。シルビアはイーレを俺の支援追跡者としてみなしているから、いちいち報告をあげているのか」
「後見人だから、ある意味正しいな。サイラスが何かをやらかせば、イーレが後始末をするのだから。しかもシルビアはイーレの担当医だ。後見人の気苦労を軽減するのも担当医の役目だ」
「俺をストレスの元凶扱いしていない?」
「そう意味ではカイルといい勝負をしているぞ」
サイラスは顔をしかめた。
「え?俺って、カイルと同レベル?嫌なんだけど?」
「サイラス、僕に対して失礼だよ?」
「正直な感想ってヤツだぜ?シルビアが始末書の数を愚痴ってたし」
「うっ…………」
心当たりがありすぎるのか、カイルが軽く胸を押さえた。




