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【新連載】【エトゥールの魔導師2】エトゥールの養い子〜貴方と手を繋ぎたい〜  作者: 阿樹弥生
第2章 貴方に名前を呼ばれたい

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(51) 第2回メレ・アイフェス集合会議⑪

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 精霊獣(ネコ)の姿をしているためか、本来なら恐れ多い初代のメレ・アイフェスは、少々、相手の距離感をおかしくする傾向があった。するりと懐にすべりこんで信頼を得る――それこそ猫のようだった。

 この人が商人だったら、あの残忍で有名だったカストの王にも、大量にエトゥールの商品を買わせることができるに違いない、とリルは思った。


 愛想のない専属護衛のアッシュですら懐柔(かいじゅう)され、納品のたびに縁側に座ることになり酒の相手をさせられるという結果を産んだ。

 最初は護衛任務を理由に酒を固辞(こじ)していたアッシュだったが、「主人の受注にかかわると思えば、これも任務の一つだし、なんだったらエトゥール王の許可をもらってきてもいい」というロニオスの巧みな言葉にすべてを諦めたようだった。

 いつのまにかロニオスの(いおり)には、アッシュ専用の酒器が用意されていた。もちろん用意したのはロニオスに依頼されたリルだった。

 そしてリルもいつのまにか人生相談にも似た悩みをうちあけるようになっていた。


「私はどうしたらいいんですかね?」

『名前を呼んで欲しいと、はっきりと言ったのだろう?』

「言いました」

『では(ボール)はあちらにあるから、待っていればよい』

「私に興味がなく、名前を覚えられないとか…………」


 あ、自分で言って落ち込んできた、とリルは気分の落ち込みを自覚した。そうだったら、一生『養い子』や『妹弟子』呼びだろう。

 サイラスが生きてそばにいるなら、それでもいいじゃないか――リルは常々そう自分に言い聞かせていた。再会できた。共に暮らしている。これ以上、望みを抱くのは間違っている。


 間違っているけど、名前を呼んで欲しい――。


 もんもんと思考をして、結局その点に戻る。ループは果てしない。

 リルは自己嫌悪から頭をかかえ、再び深いため息をついた。


「私って欲深(よくぶか)だなああああ〜〜〜〜」

『名前は個につけられた存在証明だから、それで呼ばれたいという欲求は人間ならば、当然だ』


 リルは(かたわら)で酒をすする精霊獣(ロニオス)を見下ろした。


『そもそも(よく)とは、なんだと思うかね?人の行動力の(みなもと)だ。かなえたい欲求を満たすために人は行動を起こし、叶えられた時の満足感に(ひた)る。それの繰り返しが、「生きる」ということだ』

「…………生きる」

『欲求が失われると、人は無気力になる。そもそも真に欲深(よくぶか)な人間は、欲深(よくぶか)だと(かえり)みることはしない。君の思考は健全であり、欲深い域に達するには、まだまだ修行が足りないな。私など周囲を巻き込んで己の欲望に忠実に生きているが、反省したことなどないぞ?』


 妙に説得力がある言葉だった。


「…………ちなみに今のロニオス様の『欲望』とは」

『縁側で日向(ひなた)にあたりつつ、(おだ)やかに極上の米の発酵酒を飲むことだ。あとは敷地内に酒蔵(さかぐら)を設けることだな』


 ロニオスは迷いもなく、即答した。

 リルも思わず笑いを漏らした。


「リル」


 聖堂に通じる小道の庭木戸(にわきど)が開かれて、金髪のメレ・アイフェスが現れた時、リルは驚いてしまった。しかもがっしりとサイラスの腕をつかんでいる。

 その後ろには、背の高い茶髪の天上のメレ・アイフェスまでいるのだ。


「え、カイル様?ディム様まで?」

(ボール)が戻ってきたぞ』


 くくくっ、と笑いを押さえたロニオスの思念がリルの頭の中に聞こえたような気がした。


「俺もいるぞ」


 サイラスの声にやや拗ねたような響きがあった。カウントされなかったことが不服らしい。


「サイラス様が何かをやらかしましたか?」


 専属護衛のアッシュが見事にリルの心中(しんちゅう)を代弁してくれた。


「なんで、そうなるんだよ?!」

「だって、どうみても逃亡阻止の連行(れんこう)ですよね?」

「うん、やらかす前に連れてきたんだよ」

「カイル、誤解を生む表現をすんな」


 カイルはサイラスの抗議を無視して、リルの前に立って、サイラスの背中を叩きながら、言った。


「リル、サイラスは君の名前を呼ぶことができない状態におちいっているんだ。それを説明しにきた」

「…………はい?」

「ストレート過ぎっ!!」


 サイラスは焦った。まさかいきなりの問題点の直振りだった。養い子は驚いて目を丸くしている。


「えっと……名前が呼べないって、やっぱり興味がなくて?」

「やっぱりって、なんだよ?!」


 サイラスは養い子の発言に目をむいた。

 ひどい誤解が生じていることに彼はようやく気がついた。

 カイルは吐息をついて、さらにサイラスの背中を叩いた。今度は反省を促すように強めに――。


「ほらね?誤解を生むから、放置しない方がいいんだよ」

「興味がないなんてレベルだったら、お前達に相談するかよ?!」

「まあ、そうだね。でもそれは、リルに言わないと」


 サイラスはさらに焦った。そこまで言うなら、説明の仕方まで指導しやがれ、とカイルを心の中で罵った。

 ディム・トゥーラが、ぷっと笑いをこらえ、肩をふるわしているところを見ると筒抜けらしい。

 だが、助け舟を出す気配は皆無だった。サイラスの同僚達は薄情だった。


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