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【新連載】【エトゥールの魔導師2】エトゥールの養い子〜貴方と手を繋ぎたい〜  作者: 阿樹弥生
第2章 貴方に名前を呼ばれたい

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(49) 第2回メレ・アイフェス集合会議⑨

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 カイルはサイラスの尻込みぶりを予測していたようだった。

 カイルはサイラスのそばに立つと、その顔を(のぞ)きこんだ。間近な金色の瞳がまるで全てを見透かしているようで、サイラスは落ち着かない気分になった。


 カイルはサイラスをしばし見つめたあと、おもむろにがしっとサイラスの腕をつかみ強引に立ち上がらせた。


「カイル?」

「こういうことは、さっさと行動に移すことが一番の解決策なんだよ」

「行動って、まさか――」

「もちろんリルにすべてを打ち明けることだよ」

「まてまてまて」


 サイラスは慌てたが、カイルの連行は止まらなかった。そのまま扉まで引きづられていく。

 ディム・トゥーラはその様子を見守っていたが、短い吐息をつくと立ち上がり、同行を選択した。


「まあ、確かにさっさと解決するべき案件だな」

「ディム・トゥーラ!」


 支援追跡者(バックアップ)はカイル・リードを止める気がないらしい。


「カイルの言う通りだ。サイラスの悩みはリルの悩みに直結している」

「だけどさ――」

「放置して長く悩ませたあげく、大泣きされたら、誰が対応するんだ?俺は即、上に逃亡するぞ」


 まさかのディム・トゥーラの逃亡宣言に、サイラスとともにカイルも唖然とした。


「ディム?」

「人には適材適所というものがある。泣かすことに場数(ばかず)を踏んで慣れたカイルとは違う」

「場数って、何さ?!人聞きの悪いっ!」


 カイルは支援追跡者(バックアップ)の暴言に猛抗議した。


「お前が姫を泣かせた回数の報告は受けている」

「――」


 ファーレンシア自身か、侍女達か、それとも――即座に、カイルはディム・トゥーラに報告をあげた可能性のある存在をかえりみた。

 仔狼姿の精霊獣(ウールヴェ)は、露骨に主人から視線を逸らした。


「トゥーラっ!!」


 利口な精霊獣(ウールヴェ)は間髪いれず支援追跡者(バックアップ)の背後に逃げこんだ。

 それから、そろそろと安全地帯であるディム・トゥーラの足元から顔を(のぞ)かせる。


――カイルは昔から姫を泣かせてばかり


「と、聞いている」


――最低


「確かにサイラス並に最低な行為だな」

「…………おい」


 変な基準にされて、サイラスは憮然(ぶぜん)とした。


「サイラスと同レベルなんて酷評すぎるよっ!」

「…………おい」


――サイラスと同レベル。サイラスよりひどいかも


「確かに」

「ちょっと、そこで結託しないでくれる?!昔はあんなに不仲だったくせに!」

「いつの話をしているんだ。時代は常に動いているんだぞ。こんな優秀なウールヴェは他にいないぞ?」


 しれっと、ディム・トゥーラは過去を消し去り、カイルのウールヴェを()(たた)えた。


――僕、優秀。よく、できる子。ディム・トゥーラと一緒にカイルの尻拭(しりぬぐ)い頑張る


「〜〜〜〜っ!」

「そもそも、姫を泣かせていないと主張できるなら、きくが?」

「ぐっ――」


 カイルが詰まる。

 反論の言葉が見つからなかった。


「俺は地上から退避する条件を設定している。まず一つは、サイラスの養い子リルが大泣きした時だ」

「「はい?」」


 冗談かと思ったら、ディム・トゥーラは真剣だった。


「………………他は?」

「侍女集団を怒らせた時に決まっているだろう」

「……ああ……そうだよ……ね……」


 真顔で答えるディム・トゥーラの内容に、カイルは不覚にも納得してしまった。


「その時は、僕も逃げたい……」

「だろう?」


 二人の会話にサイラスの方が慌てた。


「ちょっと待てよ。アッシュも言ってたけどさ、エトゥールの侍女達は、そんなに恐ろしいのか?エトゥール王城の影の支配者、エトゥールの最終兵器、怒らせては命が保証されないエトゥールの審判者――例えるならイーレ様が百人ほど集まった女性団体って――」

「…………なんて的確な比喩表現なんだ……」


 カイルが否定どころか、肯定のつぶやきを漏らした。


「エトゥールの侍女って、暗殺集団なわけ?!」

「まあ、確かにそういう職業の人も混じっているけど」

「「混じってるのかっ!」」


 ディム・トゥーラとサイラスが判明した新事実に愕然とする。


「だって、女性にしか立ち入れない場所だってあるじゃないか。専属護衛やアッシュみたいな技能を持つ人材は当然いるよ。ファーレンシアを守れないだろう?」


 当然じゃないか、という表情でカイルが二人に解説した。


「…………強いのか?」

「サイラス、手合わせとかは絶対にやめてね。リルの目の前で女性を押し倒す気?」

「うっ…………」


 サイラスの脳筋ぶりを理解しているカイルは釘をさすことを忘れなかった。

 確かに体術だと、身体が密着する可能性はおおいにある。なぜだか、養い子の目の前でそういうことをしたくない、とサイラスは思った。


「相手は現地の女性。イーレとは違うんだ。誤って怪我をさせたら、責任を取るために婚姻に発展しかねないよ。だいたい導師達(メレ・アイフェス)に対するハニートラップなんて、他にもいっぱいあるよ。気をつけてね」

「なんで?!」

「自覚がないみたいだけど、僕達は『異国』の賢者で、人々に知恵を分け与えて導く役目の導師でもある。今はエトゥール王の庇護下にあるけど、この混乱の中、その身を欲しがる国や領地はいくらでもいるよ」


 カイルの顔から笑みが消えていた。

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