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第五十話 目覚め

あれから一週間が経った。

俺達はカフェ神楽耶(かぐや)で暴れたという事で学園から謹慎処分を受けていた。

俺のバッサリと斬られた腕は斬癒(きりやし)のカムイの力とタカマガハラの医療技術でで無事回復することができた。

とは言ってもまだ神経が繋がり切っていないのか指先に違和感が残っているが。

刹奏(せつか)は、あの日から目を覚まさない。

刹那さんは心配いりませんよというのだが、一週間も目を覚まさないというのは気にかかる。

陽依(ひより)はボロボロにされてはいたものの体の傷自体はたいしたことはなかったらしく今はピンピンしている。



「あーーーー!!もうむかつくむかつく!!!何であんなのが私の妹なのよ!!」



よっぽど暇なのか今日はサクラと俺の部屋までやって来てこうやって愚痴をこぼしている。

陽花(ひはな)さんがテラス様に確認したところ、本当に陽花さんとテラス様の娘だったらしい。

歳は俺やサクラと同い年なのだそうだ。



「気持ちは分かりますけど……お姉様、落ち着いてください……」


「これが落ち着いてられますかってのよ。くそーーー。校内であんな広範囲高火力の呪言つかうとか。おかげで周りの生徒に被害が出ないように立ち回るしかなかったわよっ!!ほんと、むかつく!!復讐したいなら正面からぶつかってこいって話よっ!!!」



たぶん正面からぶつかっても負けると思うけどな……。

その言葉をあえて言わないようにして俺は陽依の言葉を聞き流す。



「なぁ陽依。刹化瞬永(せつかしゅんえい)とかいう呪言……知ってるか?」


「はぁ?何よその呪言。そんなのあるの?」



やっぱりか……。

テナは陽依が知らない呪言を知っているのは間違いなさそうだ。



「その呪言が完成したと同時に俺の腕は斬り飛ばされていた」


「何よそれ……」



陽依は俺の言葉に不安げな顔で呟く。

まぁそういう反応になるだろうな。

受けた俺自身何をされたのか全く分からなかったのだし。



「その呪言というか、カムイには心当たりがある」



カップ麺をズズズとすすりながら永久(とわ)が答える。



「カムイには時を操るカムイがあるそうだ。たぶんそれだろうな」


「そんなカムイ、お母さんもお父さんも教えてくれなかったんだけど……」


「さぁな。月依(つくよ)や陽花が教えなかった理由は私には分からん」


「むうー……」



永久の言葉に難しい顔をして陽依は黙り込んでしまう。

時を操るカムイか。

あの時、テナの呪言が完成すると共に俺の腕は斬り飛ばされていた。

おそらくその時を操るカムイというのは時を止めるカムイか何かなのだろう。

なるほど、それなら得心がいく。

……てか、納得はいったがどうしようもねえじゃねえか。

そんな呪言、どうやって防げば良いんだよ。



「あの……永久さん。刹奏ちゃんはその状態のテナ様の動きについていっていたみたいなんですが……」


「ああ……それは『刻の番人』の力だろうな」



『刻の番人』の力って言うとあれか……。

永久の『輪廻の守護者』の力と同じ力っていうやつか?



「てか、俺が気絶してた時に刹奏はあの刀を使ったのか……」


「ああ、見事に使いこなしていたぞ。私がいなければ、今頃テナはあの世行きだったな」


「あんな奴、死んじゃえばよかったのよ」



陽依は永久に向かって不愛想にそう言い放つ。

なんか昔に月依(つくよ)先生から同じ言葉を聞いた記憶があるぞ。

流石親子だな……。



「それじゃ、刹奏ちゃんが姫様殺しの大罪人になっちゃってました……」


「むう……それはそうなんだけどさー……」



妹の言に苦虫をかみ潰したような顔で呟く。



「しかし時を操るカムイかぁ……お母さんに習ってこようかなぁ」


「まぁ使いこなせるかは別として、習っておいた方が良いかもしれないな」



カップ麺を食べ終わった永久は箸をおきそう告げる。



「情報提供ありがとうございます、永久さん。じゃあ私は部屋に帰ってお母さんに聞いてみます」


「ああ……まぁ頑張ることだ」



駆け出していく陽依の背に永久は激励の言葉をかける。

陽依が出て行った後。



「さて……始よ。お前にも力が必要なのではないか?」


「そーだなぁ……。時を操る奴が相手だと今のままじゃ勝ち目はないしな」


「ならば決まりだな。お前に時を操る方法を教えてやろう」


「あの……それって始さんにリスクは無いんですか?」



俺達のやり取りを黙って聞いていたサクラが問いかける。



「無くはない。しかしそれがコイツの運命なのだろう」



リスクあるのかよ!

まぁいいけどよ。

陽依やサクラを守れるならそんなリスクなんてクソくらえだ。


ピンポーンピンポーン。

インターホンが鳴り響く。

こんな時間に誰だ?陽依が戻ってきたのかと思いドアを開けてみると焦燥しきった顔の刹那さんが立っていた。


「永久は。永久はいますか?」


「ああ、ここにいるよ」


「よかった。ちょっとうちまで来てください。刹奏が……刹奏が……」



今にも泣きだしそうな声で刹那さんは両手で顔を抑える。

刹奏がどうかしたんだろうか。

俺とサクラと永久は刹那さんに連れられて、刹奏の部屋へとやって来た。

刹奏の部屋には放心したような顔のノノムー先生と、ベッドの上に体を起こし虚ろな表情の刹奏の姿があった。


「刹奏、心配したぞ。一週間も寝たきりだったんだからな」



俺は刹奏に声をかける。

しかし反応が無い。

代わりに不気味に輝く金色の瞳を向け刹奏はボソリと呟いた。



「私は……刹奏……。『刻の番人』……刹奏……」



何を言ってるんだ、刹奏は。

いったい何を言ってやがるんだ、コイツは?



「フ……やはりこうなったか……」



静寂に包まれた部屋の中。

永久のその呟きだけが静かに木霊していた。

楽しんでいただけてれば幸いです。

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