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第三十九話 過保護な教師

「ねぇねぇ。灯花(とうか)ちゃんは可愛いよね。ホーント、マジ天使だと思わない?」


「そうですね」


「言葉が棒読みだぞ、始っ!嫁にしたいくらい可愛いでしょっ!でもお嫁にはあげないけどねっ!」


「はいはい、可愛い、可愛い。嫁にしたい、嫁にしたい」



俺はうんざりとしながらそう答える。

天御中(あめのみなか)学園に転入して以来、一週間に三回は昼食時にアカリ先生がやって来てこんな会話が交わされる。

ほんっと、めんどくせー親だな、おい。

桜花先生と同じくらいたちわりいぞ。

夫婦揃ってこんななのかよ。



「パパ。いい加減迷惑ですから、職員室に帰っててくれませんか」


「ブー……。パパは灯花ちゃんが心配で心配で仕事の合間を縫って会いに来てるのに―。つれないなぁ」


「別にそんなことしなくて良いですから。私は学園じゃ良い子にしています」


「むー……それなら良いんだけどさー」


「てか、桜花先生にしろアカリ先生にしろ過保護すぎやしないか?」


「そんなことないない。こんなの過保護なんかじゃないない」



いやいやいやいや……。

どう考えても過保護すぎやろ。

これが過保護じゃなくて何という?



「キミもせっかくの親子団らんなんだから、気を使ってくれないかな?」


「パパ。学園は親子団らんの場じゃなくて、友達と過ごすところです。だから、パパは職員室に帰ってください」


「むー……灯花ちゃんがそう言うならしょうがないか。今日の所は退散ーっ!!」


「……もう二度とくんじゃねーぞーー……」


「始はいつか絞めるーーー!!!」



やれやれ……灯花のやつも大変だな。

学園でこんなに過保護にされるなんて。

家じゃどれだけ過保護に育てられてるのやら。



「ほんと、過保護すぎて嫌になっちゃいます」


「まぁなぁ……」


「始君のうちは良いですよね。永久(とわ)さん殆ど干渉してこなそうですし」


「んー……うちの場合は干渉しないというよりも無関心とでもいうべきなんだが……」


「羨ましいです。あーーーーー。一度で良いからそんな環境で暮らしてみたいーーーーー」



灯花は叫びながら机に突っ伏す。



「それなら灯花ちゃん、私の家に泊まりに来ますか?」


「え!?いいの、刹奏ちゃん?じゃあ、今日からお願いできる?」


「うん。じゃあ今日は一緒にうちに行こうか?」


「おいおい、刹奏いいのかよ?」



刹那さんはともかくノノムー先生は困るんじゃないか?



「んー。奏さんから見返りは求められると思うけど、灯花ちゃんなら良いんじゃないかな?」



見返りって何だよ、見返りって。

ノノムー先生は子供に何を要求するって言うんだよ。

まさか、あんなことや、そんなこと……。

いやいや、まさかな。

ふとサクラの方をみると顔を真っ赤にして俺と目を合わせないようにしている。

……思考を読まれてしまったらしい。

気まずい……。

と、ともあれ。



「灯花はアカリ先生の説得をしないといけないんじゃないのか?」


「ん。そうですね。それじゃちょっと説得に行ってまいります」


「おう。がんばってこいよな」


「はい。ありがとうございます、始君」



灯花は立ち上がるとペコリとお辞儀をして職員室の方へ駆け出して行った。

結局、昼休み中に灯花は帰ってくることはなかった。

説得は難航中らしい。



「始君、いますか!」



放課後のチャイムが鳴り響くと共に灯花が教室へと駆けこんでくる。



「ん?どうした灯花?」


「今すぐ帰りましょう!!」


「はぁ?今日は刹奏と一緒に帰るんじゃなかったのか?」


「刹奏ちゃんには囮になってもらっています」


「ほう。それじゃ俺はお前を刹奏の家に送り届ければ良いんだな?」


「そういうことです」



過保護教師相手にどこまで誤魔化せるか分からんがやってやろうじゃないか。

大切な友達の為だからな。



「それじゃとっとと刹奏の家に向かうぞ」


「はいっ!!」



俺は手早く荷物を片付けると灯花と共に教室を後にする。

しかし学園を出たところで早速黒塗りの車が待ち構えていた。



「お嬢様。今日はこれからピアノのレッスンにございます」


「爺や。今日は私はお泊りなの。パパから聞いてなかったかしら」


「はて?そんな事は一言も。ですのでその予定は無効でございますよ」


「ブー……始君。爺やの事は良いからさっさと家に向かいましょ」


「お嬢様にも困ったものですね……」



言いながら老執事はカムイのカードを取り出し何か念じ始める。



「我が呼び声に応えよ、そして我が力と成せ、天地神明刀!!」



俺は呼び出した天地神明刀で老執事の発動しようとしたカムイの効果を強制的に解除する。



「なんと。そのようなことが……」


「へへーん。じゃ、今日は刹奏ちゃんの家にお泊りするから、パパとママによろしく言っといてね」


「ぐぬぬぬ……。お嬢様はだんだんアカリ様に似てきておられる……」



力なく呟く老執事をわき目に手を取り合って俺達は家路へと駆けだした。

そして無事に刹奏の部屋に灯花を送り届けると、せっかくですからと刹那さんにお茶を進められた。



「お疲れ様でした、始さん」


「いや、特に何もしてないですから」



ズズズズ。

うん、刹那さんの淹れたお茶は美味いな本当に。



「そういや灯花はどうしたんです」



部屋に着くなり奥の部屋に通されて一歩も出てこないんだけども。



「いやああああああああ!!!」



絹を裂くような悲鳴が響き渡る。

どうしたんだと思い慌てて奥の部屋を開けてみると、半裸姿の灯花がノノムー先生に押し倒されていた。



「……我が呼び声に応えよ、天地神明刀」



竹光の天地神明刀を呼び出しノノムー先生の頭をポコりと殴る。



「いったあああああっ、何すんのよ、始っ」


「何してんのは、あんただよ、ノノムー先生!!子供にそんなわいせつな事してんなよっ!!」


「……これがうちに泊めてあげる条件なんだけど」



はだけた衣服を胸元で押さえ震える灯花。

見ていてとても痛々しい。



「そんなんが条件だったらうちに引き取るわっ」


「むー……しょうがないにゃあ……。だったら、その恰好でスケッチさせてもらうだけで良いから、ねっ?」


「ほ、本当ですか?」


「マジマジ。刹奏もやってることだから安心して良いよ」



ノノムー先生の絵のモデルは刹奏かよ……。

どうりでどっかで見たような顔やスタイルだと思ったわ。



「ただいまー……はぁ……アカリ先生説得するの大変だったよ。あー奏さん、もう灯花ちゃんに手を出してる」


「ちょうど良かった。刹奏も一緒にモデルになってよ」


「しょうがないなー……ちょっと待っててね」



言いながら衣服をはだけ始める刹奏。

ちょっとまてやあああああ。

ここに一人男がいるんだがーーーーー!

俺は居心地が悪くなりさっさと部屋を飛び出した。

もう、ノノムー先生の同人誌をまともに正視することができないかもしれない。


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