第13話 文化祭4
「お隣、いいですか?」
「おお、偶然」
「ハイ、偶然ですね」ふたりで小芝居をした。本当は約束していた。
3年B組の焼きそばの模擬店に1時半集合。時間きっちりだった。
「すごい偶然ですね。やきそばも2つ用意してあるし(笑)」
「おまえな~」
「ごめんなさい。いつもありがとうございます、センパイ」
「やっぱり、美味しいですね。やきそば!」
「誰が作っても、なかなか外れないだろ」
「そうなんですけどね」先輩と一緒に食べてるから、余計においしいんです。口にはだせなかった。
「これからどうするんだ?」やきそばを食べ終わった後、先輩は聞いてきた。
「2時15分からの演劇みませんか?体育館でやるらしいですよ」
「ふーん」
「演目はロミオとジュリエットらしいです」
「ブッ」水を吹き出す先輩。
「汚いな~。も~。やっぱり、おきまりですからね」
ふたりで体育館に移動する。少しだけ回りの目が気になった。ドキドキしている。体温も熱くなる。
ふたりでパイプ椅子に腰かける。もちろん、並んでだ。
「楽しみですね、先輩」わたしはウキウキだ。
「ロマンスなんておれのキャラじゃないのに」先輩はなんかしょんぼりしている。
「そういわないでくださいよー。先輩といっしょに見たかったんですよー」わたしはひたすら甘える。
「ハイハイ」
舞台が始まる。周りが暗くなる。
「先輩、夏祭りの時を思い出しますね」しんみりした雰囲気になった。
「そうだな」ふたりでヒソヒソ話す。
「実は相談があるんです」わたしは真剣な口調で話した。
「なんだ」すっとぼけた感じだった。
「わたしの友達の話なんですが、」
「ともだち?」
「そうあくまで友達です」わたしのことではない。断じてわたしのことではないのだ。
「で?」
「その子が、どうやらとある先輩に片思いしているらしいんですよ」
「おまえな」
「それで、相手にアプローチをかけても、あんまりいい反応がないらしくて……」
「……」
「その子は苦しくて報われたいといってるんです」
「うん」
「その子はどうしたらいいと思いますか、先輩?」
舞台は佳境に入っていた。