第12話 文化祭3
「……」
「……」
2度目の沈黙がしばらく続いた。
それは、気まずい沈黙ではなかった。少なくともわたしはそう感じていた。
「先輩、この半年間色々ありましたね」わたしは少し昔話をはじめる。昔話といってもそんなに古い話ではない。
「ああ」先輩はしんみりした声で答えてくれた。
「最初は先輩がわたしを部活に誘ってくれました」なんとなくしかおぼえていないけど。
「お前がホイホイついてきてくれました」
「ハイ、ホイホイついていきました」ふたりで笑いだす。
「それでなんとなく仲良くなりましたね」
「ああ、そうだな」
「なんとなく、一緒に帰ったり、寄り道したり」これは、なんとなくだけではない。
「ああ、なんとなく」
「なんとなく、お祭りにいって、花火をみて」
「……」先輩は次に来ることばがわかっているのだろう。
「なんとなく、手をつなぎましたね」わたしはいままで封印してきたことに言及する。
「あれは……」先輩は答えにくそうにしている。
「それはいいんです。まだ、その言葉の続きを聞くつもりはありません」わたしは強がりでいう。
「まだ?」
「そう、まだです」わたしは力強く答えた。
「とりあえず、明日を楽しみましょうね」
「そうだな」
「そうですよ」ふたりで全力でごまかした。
「あしたは、お昼おごってくださいね」しんみりした雰囲気を変えようと冗談をいう。
「ヘイヘイ」先輩はいつもの口調にもどっていた。
「やきそばがいいです、わたし」
「わかったよ」少しだけその言葉にやさしさを感じてしまった。
いつの間にか先輩と話して1時間が経過していた。
「それじゃあ、そろそろ、終わりにしましょうか」
「そうだな」
「先輩、またあした」
「おう、またあした」
<ツーツー>
通話がきれたことを確認して、わたしはつぶやく。
「大好きです」
「……」部屋は沈黙に包まれた。
「幸せなんです」
「……」もちろん誰も返答してくれない。
「でも。だから。苦しいんですよ」




