98番から100番
夢かとぞなほたどらるるさ夜衣うらみなれたる袖を重ねて 従二位家隆(藤原家隆)
夢かと思ってなお探らずにはいられない、小夜衣の裏返し慣れた袖を重ねて
※小夜衣は寝る時の衣、つまりはパジャマの事です。衣を裏返して寝るのはよく歌で見られます。「うらみ」は「恨み」を思わせます。夢の中でさえ会えない恋人でも居たのでしょうか。
藤原定家(97番の作者)と並び称され、生涯で詠んだ歌は六万首あったと言われる多作振りです。
人もをし人も恨めしあぢきなく世を思ふ故にめの思ふ身は 後鳥羽院(後鳥羽天皇)
人を愛しく、人を恨めしく思う。味気無く世の中を思う故に思い悩んでしまう身には。
※源平戦の真っ只中に生まれ、退位後には隠岐に流されてしまった天皇の歌。流される前に詠んだものですが、貴族から武士の世に変わった事への憂いを感じます。
百人一首と同じ歌ですが、都を追われる事になる院の深い一首だと思ったので選びました。
佐保姫の染めゆく野べはみどり子の袖もあらはに若菜つむらし 順徳院(順徳天皇)
佐保姫が染めていく野辺では、少女が袖から腕を露にして若菜を摘んでいるらしい。
※佐保姫は春の女神なので、「染めゆく」は野辺の雪が溶けて草花が芽吹く様子を表しているのでしょう。「みどり子」は「嬰児」つまり幼児の事ですが、「袖もあらはに」とあるので「みどり(緑)」「若菜」等から年若い娘の事と思われます。
後鳥羽院(99番の作者)の第三皇子で、退位後に父と共に討幕しようとしましたが敗北し、佐渡に流されました。その最期は絶食の果ての自殺とされています。そんな彼の「春」の芽吹きを詠んだ歌を選びました。




