69番から72番
世の中を思ひすててし身なれど心弱しと花に見えぬる 能因法師
世の中を思って出家した身ですが、心が弱いと花に見られてしまいました。
※藤原頼通の邸宅にこっそりと花見に行った事が頼通の耳に入り、どんな歌を詠んだのかと聞かれて応えた歌です。
「心」は修行に対する心の事でしょう。花を見たいと思う風流な心の方が勝ってしまったのを花に見咎められたという、見事な詠いっ振りです。
板間より月のもるをも見つるかな宿は荒らしてすむべかりけり 良暹法師
板間から月の光が漏れるのを見ました。宿は荒らして住むべきなのでしょう。
※荒れた家の板の隙間から月光を見る「侘び錆び」の心を詠んでいます。当時としては珍しいかと思われます。
忘れずや挿頭の花の夕映えも赤紐かけし小忌の姿は 大納言経信(源経信)
忘れない、髪に挿した花の夕日に輝く様も。赤紐を掛けた小忌衣の姿は。
※「経信集」の流布本にのみ載る歌ですが、漂う艶やかさが好きで選ばせて頂きました。題には「寄物見恋」とあるので、恋の歌でしょうか。
源俊頼(74番の作者)は息子です。
朝まだき霞なこめそ山桜たづね行くまのよそめにも見む 祐子内親王家紀伊
霞よ、朝早くから立ち隠さないでおくれ・・・山桜を訪ね行く間にも遠目に見ていたいから。
※歌合での歌ですが、実際にこれから山の桜を見に行く様子が思い浮かぶ美しい歌ですね。ちなみに、この歌が勝です。
父親は定かではありませんが、母親は歌人として名高い小弁です。




