第25話「恐怖と選択」
「……二十一階」
アクアが石板を見ながら呟く。
「念のため、回復置いとくか」
「慎重だねぇ」
ユウが笑う。
「二十階ボス直後だからな」
「まあ確かに」
回復の泉、設置。
「で、その先は?」
「……雰囲気変える」
「お?」
ユウが身を乗り出す。
「ホラーゾーンだ」
「え?」
その一言で、ユウの顔が固まる。
「スケルトン配置」
「うん……」
「あと、リアルなゾンビ」
「……リアル?」
「血まみれで、動きも不規則」
「……やめない?」
「却下」
「なんで!?」
「恐怖は中毒性ある」
「やだよそれ!!」
ユウが本気で嫌そうな顔をする。
「素材も絞る」
「え?」
「骨だけ」
「夢も希望もないじゃん!」
「その代わり――」
アクアが少し笑う。
「進む理由は“好奇心”と“恐怖”」
「……性格悪」
「褒め言葉だな」
さらに調整。
光るコケ。
それを減らす。
「暗っ……!」
ユウが後ずさる。
「見えないじゃん!」
「だからいい」
「絶対嫌だって!」
「お前行く側じゃねぇだろ」
「でも怖いもんは怖い!」
竜なのに震えている。
「……お前ほんとポンコツだな」
「ポンコツ言うな!」
「……来たぞ」
画面が切り替わる。
二十階。
Cランクパーティ。
扉が開く。
チョリキが、唸る。
「……行けチョリキ」
ユウが小さく応援する。
「お前どっちだよ」
「可愛いじゃん」
「敵だぞ」
「でも頑張ってほしい」
「複雑だな」
戦闘開始。
突進。
「うおっ!?」
一人が吹き飛ぶ。
HPが一気に削れる。
「……重いな」
「いいねぇ」
ユウが楽しそうに見る。
だが。
パーティも対応する。
「横に避けろ!」
突進を回避。
壁に激突。
「今だ!」
カウンター。
ダメージ。
だがまだ足りない。
再び突進。
今度は当たる。
「ぐっ……!」
HPが危険域。
「……まずいな」
アクアが呟く。
残り、わずか。
ほぼ壊滅。
「終わりか……?」
その瞬間。
「……いや」
一人が立つ。
タイミングを読む。
構える。
チョリキが突進。
一直線。
「……今だ!!」
完全なカウンター。
斬撃が入る。
撃破。
「……勝った……」
全員が崩れ落ちる。
「……ギリギリだな」
「最高だね」
ユウが満足そうに笑う。
「で、問題はここ」
宝箱。
目の前。
「開けるか?」
「開けるでしょ」
ユウが即答。
だがパーティは、動かない。
「……行くぞ」
一人が言う。
「え?」
「先に進む」
「……マジか」
二人が驚く。
そのまま二十一階へ。
「……無視した」
「すご」
ユウが目を丸くする。
二十一階。
回復の泉。
「助かった……!」
HPが回復していく。
「……で」
回復しきった後。
パーティが振り返る。
「戻るぞ」
「……あ」
ユウが声を漏らす。
二十階へ戻る。
宝箱の前。
「今なら、いける」
開ける。
杖を手に入れる。
そして転移。
「うわああああ!」
消える。
静寂。
「……賢いな」
アクアが呟く。
「うん」
ユウも頷く。
「全部取った」
「リスク回避して、報酬も回収」
「……想定以上だな」
少しだけ、嬉しそうに笑う。
「いいね」
ユウもにやりと笑う。
「攻略されるのって」
「……悪くないな」
アクアも、同意する。
「……でさ」
ユウが小さく言う。
「ホラーゾーン、やっぱやめない?」
「却下」
「絶対やだって!」
「お前は来ないだろ」
「でも怖い!」
「知らん」
ダンジョンは、さらに深くなる。
恐怖と、攻略。
その先へ――




