第23話「20階の答え」
石板の前。
アクアは腕を組んでいた。
「……二十階」
節目だ。
ここで印象が決まる。
「弱すぎてもダメ」
「強すぎてもダメ」
「うんうん」
ユウが隣で頷く。
「で?」
「……迷ってる」
「任せて!」
ユウが、勢いよく手を挙げる。
「嫌な予感しかしねぇ」
「まずね!」
指を一本立てる。
「ボス部屋を真っ暗にする!」
「……まあ演出としてはアリ」
「で、床全部ツルツル!」
「却下」
「えー!?」
「戦いにならねぇだろ!」
「じゃあさ!」
めげない。
「ボスを100体にする!」
「却下」
「なんで!?」
「ボスじゃねぇだろそれは!!」
「じゃあじゃあ!」
さらに身を乗り出す。
「ボス倒したら天井落ちる!」
「クリアさせる気ねぇだろ!!」
「盛り上がるじゃん!」
「理不尽だわ!」
完全にポンコツだった。
「……お前ほんと極端だな」
「てへ」
「誤魔化すな」
ため息をつく。
だが――
ヒントは出ている。
「……単体で強い奴」
「で、動きが分かりやすい」
「対処できれば勝てる」
「いいね」
ユウも珍しく真面目に頷く。
「それでいて、油断したら一撃が重い」
「うんうん」
「……これだな」
アクアが石板を操作する。
出現したのは――
「猪?」
「猪だな」
だが、ただの猪じゃない。
筋肉が膨れ上がり、目が赤い。
「名前は?」
ユウが聞く。
「……チョリキ」
「ダサくない?」
「うるせぇ」
即配置。
「能力は?」
「猪突猛進」
「そのまんま!」
「分かりやすいだろ」
突進。
威力大。
だが直線的。
「避ければ隙ができる」
「いいね、それ」
ユウが笑う。
「初心者殺しにならない」
「でも油断すると死ぬ」
「ちょうどいい」
バランスは、悪くない。
「で、宝箱だな」
ボスの後。
恒例。
「中身どうする?」
「うーん」
ユウが考える。
「めっちゃ美味しいパン」
「却下」
「なんで!?」
「ここまで来てパンはない!」
「じゃあ……」
少し悩んで。
「強いけど地味なやつ」
「……お」
「魔力増幅の杖とか?」
「……いいな」
アクアが頷く。
「派手じゃないけど、確実に強い」
「でしょ?」
「それでいこう」
決定。
「で、帰還トラップは?」
「もちろん入れる」
「だよね」
ユウがニヤリと笑う。
「開けたら帰還」
「でも中身は当たり」
「悩むねぇ」
「それがいい」
設置完了。
「……これで二十階は完成だな」
「やっとだね」
二人で石板を見る。
1階から20階まで。
流れができている。
「現在最高到達は……」
「十五階」
「まだ来ないな」
「そのうち来るよ」
ユウが軽く言う。
「……だな」
焦る必要はない。
ダンジョンは、育っている。
「……腹減った」
アクアが呟く。
「また?」
「動いたら腹減るだろ」
「じゃあ作って」
「お前も手伝え」
「味見担当!」
「ただの食う係じゃねぇか!」
言いながらも、キッチンへ向かう。
箱を開ける。
「……お」
また、いい食材。
肉。
野菜。
謎の調味料。
「これ、ほんと何なんだろうね」
「うまけりゃいいだろ」
「それはそう」
鍋に入れる。
火にかける。
コトコト。
いい匂い。
「……平和だな」
アクアが呟く。
「うん」
ユウも、少しだけ穏やかに笑う。
ダンジョンの最深部。
普通じゃない場所。
だが――
悪くない。
「……来るかな」
「来るよ」
「二十階まで」
「絶対来る」
ユウが断言する。
「その時が楽しみだね」
「……ああ」
アクアも頷く。
次の挑戦者。
二十階の答えを試す者。
その時を――
二人は、待っていた。




