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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第1章「奈落の目覚め」 第1話「瓦礫の中で」


 目が覚めたとき、俺は息ができなかった。

 胸の上に、重い何かがのしかかっている。

いや、それだけじゃない。

顔にも腕にも、無数の硬いものが押し付けられていた。

 暗い。

 完全な闇だ。

 自分が目を開けているのか閉じているのかも分からない。

 ――ここは、どこだ?

 思考が鈍い。頭の中に霧がかかったようで、何も浮かばない。

 名前は?

 ……分からない。

 どうしてここに?

 ……分からない。

 記憶が、ない。

 心臓の鼓動だけがやけに大きく響いていた。

このままではまずい、という本能的な危機感だけは、はっきりしている。

 動け。

 とにかく動け。

 俺は腕に力を込めた。上にある何かを押し上げる。

 ガリ、と硬いものが擦れる音。

 少しだけ、隙間ができた。

 そこから、冷たい空気が流れ込んでくる。

「……っは」

 思わず息を吸い込む。肺が焼けるように痛い。

 だが、止まるわけにはいかなかった。

 俺は必死に手を動かした。

掴めるものを掴み、押しのける。石だ。瓦礫だ。崩れた何かの残骸。

 少しずつ、少しずつ。

 上へ。

 上へ。

 どれだけ時間が経ったのか分からない。ようやく、頭が外に出た。

 視界が開ける。

 ――だが、そこにあったのは光ではなかった。

「……なんだ、これ」

 思わず声が漏れる。

 上を見上げる。

 そこには、空があった。

 いや、違う。

 空ではない。

 果てしなく広がる、巨大な空洞だった。

 光はない。ただ、底知れぬ闇が広がっているだけだ。

 落ちてきた……のか?

 そんな考えが浮かぶ。

 だとすれば、ここは――

「ダンジョン……?」

 なぜその言葉を知っているのか、自分でも分からない。だが、その言葉は妙にしっくりきた。

 俺は残りの瓦礫をどかし、全身を引きずり出した。

 足元は、不安定な瓦礫の山。

 立ち上がると、軽くめまいがしたが、なんとか踏みとどまる。

 自分の身体を確かめる。

 背中に、何かがある。

 手を回すと、柄に触れた。

「……刀?」

 抜いてみる。

 暗闇の中でも、わずかに光を反射する刃。

 なぜ扱い方が分かるのかは不明だが、握ると不思議と落ち着いた。

 装備は、皮の鎧。

 動きやすいが、防御はそこまで高くなさそうだ。

 ズボンのポケットを探ると、大きな袋。

 中身は何もないが、軽い。

 さらに、干し肉が二切れ。

 そして肩には水筒。

 振ると、水の音がする。

 満杯だ。

 俺は栓を開け、一口飲んだ。

 冷たい水が、喉を通る。

 それだけで、生きている実感が戻ってくる。

「……さて」

 思わず呟く。

 だが、その先の言葉は続かなかった。

 どこに行けばいい?

 何をすればいい?

 何も、分からない。

 ただ一つ分かるのは――

 ここに留まるのは、危険だということ。

 俺は瓦礫の山から降りた。

 足元を確かめながら、一歩一歩。

 そして、歩き出す。

 闇の中へ。

 どこへ続くのかも分からない道を。

 ただ、生きるために。


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