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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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ワッツ辺境13〈3妖精たち〉

 ワッツ辺境伯爵家の領地の、古城の一室で僕は寛いでいた。


「主、明日の朝一で〈安らぎ亭〉に迎えを差し向けていただけるよう、家令殿に頼んで参りました」

「ありがとう、チャンクス」

 僕は風呂から上がった濡れ髪のまま、夜着にガウン姿でソファにひっくり返る。


 リリィたちの迎えに馬車を頼むよう、チャンクスにワッツ辺境伯爵家の家令の所に行ってもらったのだ。


「坊ちゃん、お待ちかねの第一侍従ギッシュのお手製お菓子〈夜のキケンなお供〉っす!食べた途端に、ぐっすり深い眠りに落ちること間違いなしっす!」

 ギッシュが僕のすぐ側までワゴンを押してくる。


「ーーギッシュ、その陳腐なネーミングだけでドン引きだよ」

 テーブルに並ぶ、新作デザートからはアルコールがぷんぷん匂う。

 この異世界では飲酒に年齢制限がない。


 幼少の頃から、秋冬には身体を温めるためにアルコールを飲む習慣があるのだ。


 だが、人によってアルコールを受けつけない体質の者がいる事も、前世同様分かっていて、強制されることはない。


 前世の知識で幼少期の飲酒は成長に害があるということを知る僕は、アルコールはまだ避けるようにしている。そもそも貴族の子供はジュースという選択肢があるしね。


「ま、いいや。お嬢さま方は、アルコールや紅茶がお好き、って言われてるし」


「お嬢さま方?」

 チャンスクスが僕の後ろで、髪をタオルで拭いて櫛で整えている。僕の言葉の些細な言い回しにも気づいてくれるとは、相変わらずの有能さだ。


「さあさあ!坊ちゃんが言われた〈ぷりん〉も〈ゼリオ〉も〈けーき〉も、新作っすよ〜」

 ギッシュがどんどんテーブルいっぱいに、お菓子を並べていく。


ーーコレを僕ひとりで食べろって拷問じゃん。

 

 にこにこ笑顔のギッシュを無言で眺めても、コヤツには伝わらない。


「今日だけにしてよね・・・」


 新作と言うギッシュのデザートは、僕が辛うじてざっくり覚えていたレシピ、プリンとゼリーとパウンドケーキをギッシュが再現して進化させているものだ。進化させ過ぎで、カスタードクリームと果物で豪華なマウンテンを形成している。人参色のフィナンシェや果物の串差しもあるが。


ーー盛り付けの才能なさすぎー。


 一つ一つは美味しくても、こんもり山盛った塊のインパクトは強すぎて、甘い物が得意ではない僕には恐ろしく感じる。


ーー感覚としては、鳥の丸焼きとか豚肉の塊をデコレーションする、取り分け文化なんだよねぇ。


 大皿文化を実感するたび、個包装の少量多種の日本人な自分の好みを自覚する。


「まあいいかーーじゃあお嬢さま方、話をはじめようよ。ここにいる二人は僕が信頼する側近だから、できるなら姿や声を二人にも分かるようにして欲しい」


『『『いいよぉ〜』』』

 可視化した3妖精たち。


「おわぁ〜!」

「ーー妖精のお嬢さま方ですか!?」

 僕の向かい側のソファーに座るのは、3妖精の美女たちだった。


 右の妖精は、肩までの緑の髪、緑の瞳、緑の膝上のスリムドレスを着ている。名前を「シル」と名乗った。


 真ん中の妖精は、床につくほど長い青い髪と、青い瞳、ロングドレスを着ている。名前を「ディーネ」と名乗った。


 左の妖精は、ショートの落ちつた黄色い髪、黄土色の瞳、クリーム色の袖なしワンピースを着ている。名前を「ノム」と名乗った。


 3妖精とも虹色の羽を背中から生やしている。身長は100cmにも満たないが、3妖精ともメリハリの効いた身体に、目鼻立ちのはっきりした顔、キラキラ光る美しい姿をしていた。


「ギッシュ、お菓子を取り分けてあげて」

「へっ?・・・かしこまりましたっ」

 驚いていたギッシュが、慌てて取皿をワゴンへ取りに行く。


 アルコールの効いたフルーツパウンドケーキを切り分け、プリンやゼリーに、小さな串差し果物と小さめのフィナンシェを盛り、カスタードクリームとブランデーソースをかけて、それぞれの美女の前に並べていく。結構な量だ。


 だけど3妖精は平気のようだ。


『きゃっ、美味しそう!』

『いい匂い〜』

『初めての、お菓子』


 香り高い紅茶とともに、妖精たちはギッシュのデザートを頬張り始める。


「質問いいかな?」

 嬉しそうな表情を眺めながら、僕もチャンクスに入れてもらった紅茶を飲む。


「君たちはなんで僕についてくるの?」

『?』

『主、おかしいこと聞くのね』

『私たち、ずっといる』


「ずっと?ーーえっと、遺跡のところからずっといるよね?」

『違うよ〜』

『うん。私たち主が生まれた時からずっといるいる』


「え・・・」

『主の・・・うーん、側近?』

『メイド?』

『乳母よ』

『変、もっと近い感じ?』

『母?』

『子供?』


『そうかも。だって私たち主の魔力で生まれて、主の魔力で繋がって、ようやく実体化できるようになったもんね〜』

『そう、主と私たち繋がってるわ』


「う・・・生まれた時、から!?」

 僕は呆然と呟く。


『そうよ』

『私たちが1番、主を識っているよ』

『しってる〜』


「・・・・・・・・・・・それって、エルバーラを好きになってベットの中で身悶えたり、エルバーラに近づく為に企みをアレコレ仮想したり、猫に時々「エルバーラ、スキだよ」とかつぶやいて鼻をくっけたり。。。。テドさんハナさんクリス母さまを思い出して、寂しくて泣いたり・・・えっえっええーーー!!あれ全部見てたってこと!?」


『うん、そう。エルバーラの事で悩んだり悶たり喜んだり、猫にキスをせがんだりしてることも、全部』

『もっといっぱいよ』


(アドバイス)が届かないのが不便だったよね〜』

『主、大きく育った』

『でも、主ウブすぎ』

『アルジ、変態すぎ』

『主、女の子の扱い、これからチャンクスに習った方がいい』


 ギッシュの目が、笑いを我慢するかまぼこ型になっている。

 チャンクスは変わらない表情だが、どことなく同情するような雰囲気をかもしだしている。。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 僕は、両手で顔を覆って、しばし膝の間に埋まった。


 全身が熱い、羞恥心で心臓が止まりそう。


ーー教訓、神様はいつも見ている!この場合、妖精だけどねっっ!


「な、なんで・・・僕が〈妖精王〉の血筋だから・・・?」


 しばらく羞恥をこらえていた僕は、膝に埋まったまま、ボソボソ声を出す。


『違うよ〜』

『主は〈妖精王〉だもん』

『そうそう。私たち、お側でお迎え』


「お迎え!?」

 僕は顔をあげる。すると3妖精が虹色の羽をキラキラ光らせ、机を飛び越えて僕を取り囲んだ。


『帰りましょ〜』

『一緒に』

『〈妖精界〉へ』


 そう言う3妖精の瞳が、恐ろしいほどギラギラして、僕に固定されていた。




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