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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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ワッツ辺境14〈協力関係〉

お読みいただきありがとうございます。

更新、相変わらずの遅さですみません。

お付き合いいただけると嬉しいです。

『帰りましょ〜』

『一緒に』

『〈妖精界〉へ』

 そう言う3妖精の瞳が、恐ろしいほどギラギラして、僕に固定されていた。


ーー〈妖精界〉!?


 びっくりした隙に、抱きつかれるように三方から妖精たちの腕の中に閉じ込められる。


 実体化した妖精の胸に押し潰されそうになるという、夢のようなシュチュエーションとは反対に、なんとも言えない危機感が湧き上がる。


ーーあ、コレ・・・ヤバイやつ!


 本能的にそう悟った瞬間、何かの魔法が起動した気がした。だが、それより早く動いたのは。


 スパッ!


 僕の鼻先をチャンクスの魔法剣がかすめる。

 首を切り落とされる前に、3妖精たちは、元のソファーの上に戻っていた。


『こっわ〜』

『ディーネ、もう少しで首なし』

『私の次はノアだったわ』


『こっわ〜・・・』

 3妖精で固まって、背後のチャンクスに怯えている。

 遺跡でS級のゴールドリザードンを倒した妖精とはとても思えない、逃げっぷりだ。


「はぁ〜チャンクスありがとう、助かったよ」

「ーー片付けた方が良いのではないでしょうか?ご命令いただければすぐにでも」

「あははは」


「えっ、なに?消えた?なにがあったんすか?!坊ちゃん?チャンクス!?」

 ギッシュが遅れて騒ぎ出す。


「いいから、チャンスクスもギッシュも僕の後ろで控えていて」

 騒ぐギッシュがチャンスクスに摘まれて、共にソファー越しの僕の背後に控える。


 3対3の形になって、僕はようやく安心する。


「さて、さっきの魔法はどういうことかな?僕に危害を加えるつもりなら、話し合いはここまでだよ。二度と僕にまとわりつかないで」


『『『主、私たち許す!』』』

『ちょっとした試し』

『主の意志がないと転移できない』


『デキゴコロ』

『主が怒ると泣いちゃう』

『アルジ、〈妖精界〉帰ろう?』


 悪気はないと、泣き真似をしながらプリンやケーキを口に入れる3妖精に呆れるしかない。


ーー姿形は大人な見た目のお嬢さん方だけど、中身は前世の高校生みたいだ。つまり無敵な未成年ってヤツ。大人と子供の間だ。


 ちなみにこの異世界では、庇護される年齢かどうかの概念しかない。


 成人は(学院卒業後の)17歳だが、単に社交が単独でできるかどうかの違いだ。未成年だからと無条件で庇護され何かが免除されることはまずない。


 魔法が扱えるからと7歳で当主の儀式をさせられた僕や、5歳からすでに訪問公務をこなしている第二王子が良い例だ。


 できるかできないかのシビアな世界のはずーーそれに伴う責任は大きいはずなのに、妖精は違うの?


『ヒドイ〜タダ試しただけ』

『限度識る必要ある』

『私たち生み出したの、主の魔力』

『つまり主と同じ。だから主も未成年』


「そう言う話じゃないから。やっちゃった後にゴメンが通じると思ってる?ーーそもそも、僕、人間です。人間が行ったこともない〈妖精界〉とやらに勝手に転移させられて、喜ぶと思う?無事だと思う?」


『『『思う!』』』

『だって主は変態(メタモルフォーゼ)できる』

『人間やめよう!』

『〈妖精界〉良いとこ』

『帰れば、主もきっと気に入るわ』


 気軽なトンデモお誘いに、僕はきっぱりと告げることにする。


「行かないよ。そもそも僕、〈妖精王〉だとか血筋だとか言われるの、もうすっごくっ迷惑なんだよ。〈妖精王〉も〈妖精界〉も全く興味ないんだ。諦めて、君たちだけで〈妖精界〉とやらに帰って下さい」


 冷たく突き放したにもかかわらず、3妖精は内輪でうんうん頷いている。


『やっぱりかぁ・・・』

『だよねぇ』

『説得できてたら、私たちずっとここにいないよね〜』

『『『仕方な〜い・・・』』』

 3妖精は互いに顔を見合わせ、あっさりと納得してしまう。


「・・・で?どうして、いきなり魔法を起動するわけ?」

『だって、私たちの宿命は〈妖精王〉に帰還を促すこと』

『〈妖精王〉いないと〈妖精界〉悪くなる』


「悪くなる?」

『妖精の神さまいない、聖地ない』

『妖精の神さまここにいる、妖精こちらに来る』

『こちらが聖地になる』


「それってーー悪いこと?」

『ココ人間の聖地、妖精の聖地と違う。いずれ妖精いなくなる』


「ーーって言われても、僕はギーヴィスト=フィン=モーグっていう人間以外にはなれないよ。悪いけど、他に方策考えて」


『主、〈妖精王〉の記憶受け継いだ?』

「あの遺跡で暮らしていた〈幸せの記憶〉だけだよ」


『主〈記憶〉以外の能力も受け継いだ』

「以外の能力?」

『封印の能力』


「封印!?」

 僕は、神話の話を思い出した。


ーーいわく、〈妖精王は妖精に識る能力と封印の力を授けた〉ってアレの事?授けたんじゃなく、能力なの?


 話を聞くといわゆる〈神の権能〉的なものらしい。封印できるものは、神をのぞくあらゆる事象でーー寿命や記憶、時なども可能らしい。あくまで人間やめて〈妖精王〉になったら、ということらしいが。


 それでも、簡単な〈封印〉は遺跡に行けば、人間の今でも使えるらしい。〈妖精王の血筋〉の恩恵だとか。


『主が番への未練、ちょこっと封印してくれれば、来世で説得』

『帰還できるかも』

『メタモルフォーゼできるかも』


「・・・なるほど。来世でいいの?」

『だって主、エルバーラ好き』

『主、変態的にエルバーラ好き』

『主、でも、ちょっと嫌われてるかも』


「・・・うっ!?」

 不意打ちで被弾した言葉の刃に、僕は負傷してうめき声をあげる。


『だから私たち協力する!』

『アルジの願い叶える協力』

『主の願い叶える!』


 さっきまで泣き真似していた3妖精が、フォーク片手に力説する。


ーーなんだろう、一気に話が軽くなった気がする。


ーー〈妖精王〉とか〈妖精界〉とか・・・あと、なんだっけ?・・・トータス山脈や樹海がなくなるとか、国境紛争が起こるとか、さんざん重い設定をのっけられてきたのに、最終的に、僕のプライベートなちっさい話に落ち着くこの感じ。


「・・・複雑」

 

 いつの間にか側にいて、いつの間にか色々見ていたという妖精の言葉と、〈妖精王〉という言葉だけの存在に、色々翻弄される僕。


ーーでもさ結局、僕は僕で、執着するのはエルバーラのことだけなんだから、どうしようもないよね。


 もう何度目か分からない結論。

 僕は僕のエルバーラを手に入れるために全力を尽くす。


ーーそうすれば、きっと遺跡の住処で暮らしていた時のような、最高の幸福の中で過ごせるはずだから。


ーーって、あれ?もしかして、遺跡の〈幸せの住処の記憶〉ってこの為?


ーー〈妖精界〉へ戻らないようにする為の、安全装置。


ーー結構、用心深かったんだ、2番目の僕。


「いいよ・・・すべては終わってから考えるねーーうん、協力して。僕はエルバーラを手に入れたいからね!妖精が協力してくれるなら心強いよ」


『『『オッケー』』』


 利用できるものは何でも利用しなくっちゃ!


 僕の脳裏に、白髪の女性と黒髪の騎士、そして妖精の姿が思い浮かぶ。

 人間ではない彼らから、エルバーラを必ず守ってみせる。


 その後、僕は妖精たちと協力関係&お願いを約束した。

 3妖精への報酬は、ギッシュのデザートだ。


 協力関係は、エルバーラについて教えてもらうこと。

 返事は、『分かった!王都の妖精に聞く』とのこと。


 そしてお願いの方は、僕の思考や感情を勝手に読まない、喋らない。ずっと側にに居ないよう、強く強くお願いした。


『でも主、私たち主の魔力いる』

『完全に離れるの無理』

『側で回復する』

 そこはお互い要相談ということになった。


ーーさっきみたいな、羞恥で瀕死状態は避けたい!


 話し合いが落ち着いたところで、僕は早速背後を振り返る。


「チャンクス、じゃあここで報告して。今週の僕のエルバーラについて」


 僕が辺境に家出して以後、スクナに陰からエルバーラを警護させて、エルバーラの行動や様子を報告書で送らせている。

 その報告書を、チャンクスはイカルガの外で受け取って来てくれるのだ。


ーーあと少しで、エルバーラ、君の元に帰るよ。


ーー絶対にあの黒騎士を懲らしめて、君をあらゆる危険から守るから!


「早く、会いたい・・・はぁ、僕のエヴァ」

 チャンクスの読み上げる報告書に、僕の胸は激しく騒ぐ。目を閉じ、エルバーラの姿を思い浮かべるだけで幸せだ。


『主、ヤバくない?』

『初代からずっとヤバいよ』

『やっぱり治らない』


『・・・ねぇ、また失敗したらどうするの?』

『しっ!』

『私たちはできるコトする』


『そうね、ソレが歴代の〈私たち〉がしてきた事』

『今回こそ、〈妖精界〉へ・・・』

『メタモルフォーゼしてもおう!』


 報告書に夢中な僕は、3妖精の思惑などどうでも良かった。



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